1 今後の府政運営について
2 北山エリアの活性化について
3 その他

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◯田中健志君 府民クラブ議員団の田中健志でございます。私は、会派を代表し、府政の諸課題につきまして、西脇知事に質問いたします。
 質問に入ります前に、一言申し上げます。
 まず、新年早々発生した能登半島地震につきまして、お亡くなりになられた皆様に心からお悔やみを申し上げ、被害に遭われた全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。そして、一日も早い復興をお祈り申し上げます。また、京都府をはじめ各方面からの速やかな職員派遣や懸命な支援活動に感謝を申し上げます。
 次に、令和6年度当初予算案及び令和5年度2月補正予算案につきましては、京都府総合計画に基づき、将来構想に掲げた、誰もが未来に夢や希望が持てる「あたたかい京都づくり」加速化予算として編成されており、我が会派が昨年11月に知事に提出した令和6年度京都府予算に関する要望・提言に盛り込んだ6つの視点、1、子育て環境日本一、2、文化首都・京都からさらなる情報発信、3、京都産業の強み再構築、4、府民躍動・共生社会づくり、5、危機管理、安心・安全体制の確立、6、魅力ある地域づくり・基盤整備及び地域での具体的な要望項目が含まれる予算案となっています。
 特に「子育て環境日本一・京都」の中で、我が会派が力を入れているプレコンセプションケアプロジェクト推進事業費として、幼児期から社会人に至るまで切れ目のないプレコンセプションケアの推進が盛り込まれていること、産業創造リーディングゾーン推進事業が拡充されていること等から、会派を代表して、今回の予算案を高く評価するところでございます。
 それでは、質問に入ります。
 まず1つ目に、今後の府政運営についてお伺いいたします。
 地方の歳入には、地方税や寄附金、使用料・手数料、財産収入など地方自治体が自らの権限に基づいて自主的に徴収できる自主財源と、国庫支出金(補助金)や地方譲与税、地方交付税、地方債など国に依存する収入である依存財源がありますが、財政運営の基本的な考え方として、少子化、人口減少、超高齢化が進む中で、京都府が今後、府民サービスを確保しながら持続可能な財政運営を行うためには、自主財源をしっかりと確保していくことが必要と考えます。
 一方で、地方公共団体の歳入予算は、補助金や地方交付税などの依存財源が約6割を占めるなど、地方財政計画による制限を受けており、こうした中で各自治体は自主財源を確保するため、例えば滋賀県では交通税を検討されているほか、京都市では宿泊税を徴収し、いわゆる空き家・別荘税を導入するなどの独自の取組をされているものと存じます。安易な法定外税は、府民的な理解を得ることが難しいと思いますが、安定的な財政運営を行うためには歳入の確保が不可欠であることは言うまでもありません。
 また、我が国の財政は、国民が負担する租税収入の配分が国税と地方税で6対4の比率である一方で、国の歳出と地方の歳出の配分は4対6と、歳入と歳出における国と地方の比率が逆転しており、非対称になっているのが実態です。それだけ、私たちの日々の生活に必要な公共サービスの多くの部分を地方が担っているものと存じます。同時に、地方自治体自らが地域の課題解決に率先して取り組むためには、国から地方への権限移譲を進めるとともに、果たすべき役割と権限に見合った財源を確保することが求められています。
 そのような中で、まず法人二税の見通しに関してお伺いいたします。
 本年1月に本府企画統計課が発表された「京都府経済の動向」によりますと、「府内の景気は緩やかな持ち直しの動きが見られる。先行きについては、海外景気の動向等を注視する必要がある」と発表されており、また新聞報道によりますと、2024年度の自社業績の見通しは、42%が増収増益となっています。本年に入っても円安の影響から輸出が好調であり、日経平均株価が約34年ぶりの高値水準となるなど、好材料が並び、企業業績は好調に推移することが期待される一方で、物価高、燃料高等がどの程度業績に影響するのかが懸念されています。
 このような中で、令和6年度の法人二税をどのように見込んでおられるのか、お伺いいたします。
 次に、税目別収入額でいいますと、法人事業税の次に来る個人府民税については、府内人口が減少している中で、昨年、春闘での賃上げが全国ベースで3.58%プラスとなり、今後は賃上げの継続により、給与所得を伸ばすことでの増収効果も期待できると思われますが、個人府民税の見込みはいかがでしょうか。
 さらには、自主財源確保の観点からも、さらなる税源涵養や国と地方の税源配分の在り方などについてどのように考えておられるのか、併せてお伺いいたします。
 次に、基金についてお伺いいたします。
 まず、財政調整基金についてですが、財政調整基金は年度間の財源の不均衡を調整するための積立金であり、災害時などに自由に使える財源として、地方公共団体が毎年の余剰金などから積立てを行っているもので、府議会においてもこれまでから議論がなされてきたところです。
 直近の令和5年9月定例会において西脇知事は、「財政調整基金は安定的、計画的な財政運営のために一定額を積み立てておくことができれば望ましいが、本府では、私立高等学校あんしん修学支援や第3子以降の保育料無償化等の子育て支援の充実といった京都の未来づくりへの対応などに力点を置き、財政調整基金への積立てを行うのか、府民サービスの確保に充当するのかについては、引き続き、その時々の社会・経済情勢等を踏まえて判断している」と答弁されています。
 また、財政調整基金条例では、基金として積み立てる額は一般会計歳入歳出予算で定めるとなっていますので、現時点の社会・経済情勢等を踏まえて、令和6年度はどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
 次に、府債管理基金についてですが、京都府における府債管理基金とはいわゆる減債基金であり、府債の償還に必要な財源を確保し、将来にわたり財政の健全な運営に資するために積み立てられているものであり、令和4年度末の基金残高は約2,974億円となっております。こちらも、条例で、基金として積み立てる額は予算で定めるとありますが、令和6年度も同レベルを継続する方針なのでしょうか。
 また、積立てや取崩しの基本的な考え方や、府債の償還以外の取崩しは行われているのかについても、併せてお伺いいたします。
 次に、昨日も議論がありましたが、私からも府市協調についてお伺いいたします。
 先日、京都市長選挙が実施され、これまでの門川市長から松井市長に16年ぶりに交代することとなりました。本府は、府内の市町村との協調・連携を府政の基本姿勢に据えて様々な施策を展開していますが、とりわけ京都府の人口の57%を占める京都市との緊密な連携は、府政の推進上、極めて重要であり、これまで知事と京都市長との懇談会を定期的に開催するなど、府市協調を推進してこられました。
 また、こうした府市の連携をベースとしたオール京都体制の取組としては、京都経済センターや京都ウィメンズベースの開設、そして昨年は文化庁の本格的な移転が実現いたしました。さらには、労働者団体や消費者団体の代表者が一堂に会し、緊密な連携により地域の経済・雇用情勢に応じたきめ細やかな雇用対策を推進するため、京都市長も入られて、京都労働経済活力会議も開催してこられました。
 松井市長になっても、これら府市協調の方針に変わりはないか、私からもまずはいま一度、確認しておきたいと考えますが、いかがでしょうか。
 さらに、我が会派も求める文化首都・京都からのさらなる情報発信に向け、新市長との連携強化を期待いたしますが、どのようにお考えでしょうか。
 まずはここまで、お伺いいたします。

◯議長(石田宗久君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 田中健志議員の御質問にお答えいたします。
 田中健志議員におかれましては、ただいまは会派を代表されまして、今回の当初予算案に対しまして高い評価をいただき、厚く御礼を申し上げます。
 府税収入の見込みについてでございます。
 令和6年度の府税収入は、前年度当初予算と同額の2,840億円を見込んでいるところでございます。うち法人二税につきましては、府内の主要な企業へのアンケート調査により把握した企業の業績見込みや国の地方財政計画の伸び率などを参考に見積もったところ、堅調な企業業績や円安の影響もあり、前年度当初比で23億円増の1,047億円を見込んでおります。
 また、個人府民税の均等割、所得割につきましては、賃上げによる給与の伸びなどの影響もある一方、国のデフレ完全脱却のための総合経済対策として令和6年度に実施される定額減税分48億円など、国の制度改正の影響に伴う減があるため、結果として33億円減の659億円を見込んでいるところでございます。
 府内景気の緩やかな持ち直しもあって、令和6年度の府税収入も、定額減税の影響を除けば実質的には前年度当初比でプラスの伸びとなっており、増収基調が続いているものと考えております。ただし、長引く物価の高騰に加え、世界経済の減速懸念といった景気の下振れリスク、さらには為替の動向など、税収を大きく左右する事象も多く、その先行きは不透明な状況でございます。
 こうした中で、持続可能な財政運営を行っていくためには、自主財源の根幹をなす税収の確保が非常に重要であり、企業立地や雇用の促進などによる税源の涵養、納期内納付の促進、京都地方税機構との連携による徴収率の向上などにより、その確保に努めてまいりたいと考えております。
 また、議員御紹介のとおり、国と地方の歳出割合が4対6であるのに対し、税源配分割合が6対4と乖離があることにつきましては、住民に身近な行政サービスを提供する地方が自由に使える財源を拡充し、その役割に見合った税源配分とする必要があると考えております。
 このため、国に対しまして、これまでから全国知事会を通じて、税源配分をまずは5対5とすることを目標として、地方の自主財源比率を高めていくことを要望してきたところであり、引き続き適正な税源配分を求めてまいりたいと考えております。
 次に、財政調整基金についてでございます。
 財政調整基金は、年度間の財源調整を図ることなどを目的に積み立てるものと認識しております。京都府では、府民の皆様からお預かりした税金を最大限に活用するため、コロナ禍や物価高騰などへの対策、府民サービスへの還元を優先して財政運営に取り組んできたところでございます。
 令和6年度当初予算におきましては、精神障害者を対象とする医療費助成制度の創設をはじめ、木造住宅等の耐震化や私立高等学校の修学への支援拡充など、防災・減災対策や府民サービスの維持・向上に力点を置いた予算編成を行っており、財政調整基金への積立ては行っておりません。
 なお、毎年度の決算時に発生した剰余金の2分の1を地方財政法の規定により、次年度の2月補正時に積み立てておりますが、府民サービスとして還元するため積み立てた全額を取り崩してきており、基金残高は2,000万円台で推移しております。
 今後も、人口減少、少子高齢化の進行などにより厳しい財政状況が続くと見込まれる中、財政調整基金へ積み立てるのか、また府民サービスの確保に充当するのかにつきましては、その時々の税収等の動向や社会経済情勢を踏まえますとともに、年度間の財源調整を行う必要性も鑑みながら判断をしてまいりたいと考えております。
 次に、府債管理基金についてでございます。
 京都府では、市場公募地方債の将来の償還に備え、返済資金を計画的に確保するため府債管理基金を設置し、毎年度、国が定める基準を踏まえて一定額を積み立てる一方、満期を迎えた地方債の償還財源として基金を取り崩しております。その結果、令和6年度末の基金残高は約3,300億円に増加する見込みでございます。
 なお、令和6年度当初予算では、府債償還以外の取崩しとして府債管理基金を130億円取り崩すこととしております。この取崩しは、令和3年度に国税の増収を受け、国から地方交付税が前倒しで交付されたため、2月補正予算において基金に積み立てたものであり、制度上、翌年度以降の3か年にわたり財源調整される仕組みとなっていることを踏まえ、令和4年度以降、計画的に取崩しを行っているものでございます。
 今後とも、誰もが未来に夢や希望を持てる「あたたかい京都づくり」を実現するため、国の示す基準を守りながら、持続可能な財政運営に努めてまいりたいと考えております。
 次に、府市協調の方針についてでございます。
 これまで林田府政以降約40年にわたり、トップ同士の懇談会を毎年開催し、二重行政の解消や行政の効率化、府民・市民の目線に立った住民サービスの向上につなげてまいりました。また、府と市の連携を核として、経済界や文化関係など様々な関係団体の皆様との力を結集するオール京都の取組に発展させることで、京都経済センターの開設や文化庁京都移転の実現などの大きな成果を上げてきたところでございます。
 私は、府市協調の取組は京都府のさらなる発展に欠かすことのできないものだと確信しており、松井次期京都市長が掲げられた「府市協調をさらに前進させ、周辺地域と連携したオール京都の活性化に努める」という公約とも軌を一にするものであることから、京都市との連携をさらに強固なものとしてまいりたいと考えております。
 次に、文化首都・京都からのさらなる情報発信に向けた府市の連携強化についてでございます。
 京都は、千年を超えて日本の首都であった歴史を背景として、日本の伝統や文化を育んできた中心地であり、人々の生活の中に文化が息づき、まち全体で歴史や文化・産業を育んでまいりました。そうした暮らしに根づいた文化の継承や多彩な交流による新たな文化の創造を図ることが、府の総合計画に掲げる「文化の都・京都」の実現につながるものと考えております。
 そのため、昨年3月に京都移転が実現した文化庁との連携の下、文化芸術のグローバルな展開、文化財の観光での活用など、新たな文化施策を京都から推進し、その成果を全国に波及させることにより、我が国全体の文化施策の新たな潮流を生み出し、地方創生につなげてまいりたいと考えております。
 こうした私の思いと松井次期京都市長の「突き抜ける『世界都市京都』をつくる」「文化首都・京都を目指す」という思いは通じるものがあり、これまで以上に、府と市の連携を一層深め、より高いレベルの府市協調を実現することで、京都府の目指す「文化の都・京都」をつくり上げてまいりたいと考えております。
 今後とも、府と市の連携を核としたオール京都体制の下、文化庁とも連携し、多種多様な文化施策を展開するとともに、関西圏全体として文化の存在を高めながら、「文化の都・京都」の魅力を発信してまいりたいと考えております。

◯議長(石田宗久君) 田中健志議員。
   〔田中健志君登壇〕

◯田中健志君 今回の当初予算の編成というのは、コロナが5類になって、コロナ前のいわば平常時の当初予算の編成ということになったと思います。国においても、予算編成は平常時に戻していくというコメントをされていますが、それでも110兆を超える本当に大きな規模の予算編成となっていて、本府も、2月補正と合わせると1兆円を超えるという規模になっています。
 どうしても、コロナ対策とかまた災害対策でそういう大きな事象が起こりますと、その対応で国や自治体の予算というのは大きく膨らまざるを得ない。それを平常時に戻していくというのはなかなか大変なことで一度には戻らないとは思いますし、その一方で、物価高対策とか賃上げの環境整備などの状況に対応していくということで、さらに加えて、今、知事御答弁いただきましたとおり、国と地方との構造的な財政状況の事情もありますので、そういった厳しい財政状況の中で限られた財源の中でのほんとに難しい予算編成作業になったのではないかなと推察いたします。
 そういった中で法人二税については、今の状況を調査していただき、プラス23億円ぐらいの状況かということだと思います。こういうお話を聞いていると、ほんとに京都の企業というのは日本の市場は当然ですけれども、日本だけじゃなくて海外に向けて事業を展開していただいている。つまり、海外の市場とか海外の状況が京都の企業や京都府の経済に随分大きな影響を与えているんだということを改めて認識いたします。円安に振れて輸出関係は好調ということでございますが、一方で輸入のほうで原材料とか燃料高という影響もあると思いますし、先行きの不安定感もあるかと思いますので、そこはしっかりとこれからも留意しておく必要があると思います。
 個人府民税につきましては、定額減税分というのは国の制度でもありますし、特例交付金ということで国が補填するということになっているかと思います。だから、そこは除いた分で何とかプラスかなという御答弁だったと思いますが、今後、人口が減少していく中で2050年には京都府の人口も約50万人の減少が見込まれるというような推計も出ているところでございますので、これをいかに補っていくのかということは大きな課題、重たい課題であろうと思います。
 一つには、御答弁いただきましたとおり、やはりお給料を上げて賃上げをしていく。個人府民税、住民税の所得割の部分を上げていくということも一つの大きな課題であり、取り組むべき課題であろうかと思います。法人税が好調ということで、比較的大きな会社は賃上げを今年も昨年以上のものを期待したいと思いますが、それとともに、本府の場合は特に中小・個人企業が事業所数の99%以上を占めておりますので、中小・個人企業の賃上げもできるような環境整備というものが何よりも大事だということを、今も御答弁をお伺いして痛感いたしたところでございます。
 基金についてでございますが、特に府債管理基金については、これまでも議会の中でももちろん議論されてきましたが、制度にのっとってやりくりをしていただき、これは借金に対して将来それを返済していくための積立金でございますので、これをしっかりと制度にのっとって積み立てていただいているということが確認できたと思います。
 様々な議論がありますけれども、こうした予算編成の段階、あるいは決算の段階でそれぞれの基金についてしっかりとチェックをしておくということが、議会の取組の大事な役割の一つだと思いますので、引き続きこの点については私も注目をさせていただきたいと思っております。
 府市協調でございます。今回の知事の施政方針の中でも、「もう一段高いレベルでの府市協調に取り組む」という表現があり、大変期待しているところでありますし、今後新たに京都市長も代わられたということで、より高いレベルでの府市協調を期待するところであります。
 また、府市連携を核としたオール京都体制の取組も、もう成果も上げているところでありますのでもちろんこれは期待するところでありますが、加えて申し上げますと、私のような京都市内選出の府会議員はこの議場にもたくさんいらっしゃいますが、京都市内選出の府会議員というのは、日々京都市で生活し活動しているわけで、京都市の様々な課題というものを実感しているわけでございます。
 市長選挙でも争点になっていた、例えば京都市の財政の問題とか人口流出とか、観光の問題とか、地域コミュニティーの問題については、これはなかなか政令指定都市ということもあって京都府が直接という部分は難しいのかもしれませんが、しかし京都市のそういった課題というのは、京都市だけの問題ではないということをぜひ府市協調の中でもできる限りの取組、お力添えをいただきたいと思いますし、私も微力ながら取組をさらに進めさせていただきたいと思っております。
 それでは、次の質問に移りたいと思います。
 次に、北山エリアの活性化についてお伺いいたします。
 北山エリアは、豊かな自然環境の中、多くの府立施設が集積し、また京都コンサートホールや地下鉄烏丸線北山駅に隣接しているという利便性もあり、府民の憩いの空間であるとともに、「文化と環境が共生する京都」を内外に発信する魅力ある拠点地域として、大きな可能性を秘めているものと存じます。改めて申し上げますと、地理的には西は加茂川、北は北山通り、東は下鴨中通り、南は府立大学の南側境界に囲まれ、約38ヘクタールの面積となっています。
 そんな北山エリアの中で、まず開園100周年を迎えた京都府立植物園のさらなる活性化についてお伺いいたします。
 京都府立植物園は、1924年(大正13年)に日本で最初の公立植物園として開園以来、植物を保存・栽培・展示し、広く府民の憩いの場とするとともに、植物の鑑賞を通じて教育・学習・植物学の研究に寄与するための施設「生きた植物の博物館」を理念として公開・運営されてまいりました。総面積は約24ヘクタールで甲子園球場の6個分、保有植物は約1万2,000種類であり、入園者はコロナ禍の影響を受けたものの、2022年度にはコロナ前の規模である86万人以上の方々に入園していただけました。
 また、昨年は、植物園内に設置された「きのこ文庫」から、ビル・ゲイツ氏が世界100か所の小さな図書館に寄贈した「人生で読んだ最高の本5冊」が、日本で唯一、ここだけで発見され、話題となりました。
 私は先日、開催された開園100周年記念のオープニングイベントに出席させていただきました。イベントでは、知事や職員の皆さんが開園当時を再現するおそろいの復刻はっぴを着用され、またシンガポール植物園から譲り受けたランが展示され、リニューアルされたラン室を拝見させていただきました。
 また、文化生活・教育常任委員会の管内調査としても植物園を訪問し、ラン室の視察に加え、次の100年に向けたビジョンや取組などをお聞きし、希少種などを栽培するバックヤードもじっくり拝見させていただきました。
 改めて、開園100周年を迎えるに当たっての今年の取組、そして次の100年に向けたソフト・ハード両面の取組、さらにはそれぞれどのように府民の皆さんに発信して、府民の皆さんをどのように巻き込んでいくのかについてお伺いしたいと存じます。
 次に、京都府立大学のブランド力向上についてお伺いいたします。
 京都府立大学は、創立120年を超える歴史を重ね、府民に支えられ地域とともに歩む知の拠点として、文化、福祉、環境、農林など府民生活に直結した分野を軸に府民生活や地域社会の発展に貢献してこられました。また、本年4月には、時代が求める要請を踏まえ、これまでの文学部、公共政策学部、生命環境学部の3学部体制から、文学部、公共政策学部、農学食科学部、生命理工情報学部、環境科学部の5学部12学科に発展させる学部・学科再編を行う予定となっています。さらに、農林業系の学科がある府立高校を附属化する方針を示されているものと承知しております。
 これら学部・学科の再編と附属高校化の狙いと具体的な取組内容を改めて伺いたいと存じます。
 これらの取組はいずれも、大学のブランド力向上につながる取組であると私は理解しています。大学のブランド力というものを、府立大学における他にない強みや特徴、知名度やイメージ、学生を含む府民の皆さんからの評価、あるいは人気と定義することができると私は考えます。この点、府立大学のブランド力をどのように高めていくのかという観点でも、知事の御認識を伺いたいと存じます。
 昨年9月に府民クラブ議員団の管内調査として府立大学を訪問し、塚本学長と京都地域未来創造センター長である川勝教授から、活動内容や課題等を伺いました。その中でも、京都地域未来創造センターが地域と協働して、例えば与謝野町の持続可能な行財政マネジメントシステムに関する研究や、久御山町の自治会活性化ビジョンを活用した自治会の分析調査及びICT化を含む実施施策の検討などの調査・研究等を行い、また各地の拠点を生かして「京都府全域をキャンパスに」として宮津や舞鶴にサテライトオフィスを開設され、府内の様々な地域課題の解決に向け取り組んでおられる様子には、深く感銘を受けました。
 加えて、老朽化や耐震の問題を抱える体育館や校舎の状況も拝見し、新生京都府立大学にふさわしい学内環境や京都府における知の拠点として、地域に開かれた魅力的な大学にするため、そして大学のブランド力を高めるためには、ハード面の整備も必要不可欠であると強く認識いたしました。
 改めて、ハード面の整備の見通しもお伺いいたします。
 加えて、北山エリア全体、特に北山通り周辺のにぎわいづくりについてお伺いいたします。
 開園100周年を迎える植物園や創立120年を超えた新生京都府立大学、そして旧総合資料館跡地の活用等、それらを北山通り周辺をはじめ北山エリア全体の活性化につなげていかなければならないと考えます。
 北山エリア整備基本計画の中には、北山エリアの5つの将来像が設定されており、それらは、豊かな自然に包まれた環境、オープンにつながる空間、多様な人々が集まり交流するまち、新たな文化・芸術の創造・発信の拠点、文化・芸術・学術・スポーツに触れられる魅力的な空間というものであり、この中で特に「多様な人々が集まり交流する」という観点での取組の必要性を私は強調したいと考えます。
 その点、基本計画の中でも、北山エリアの課題として「にぎわい・交流機能が少なく、訪れた人がエリア内を周遊、滞在しにくい」という課題が挙げられております。確かに、植物園やコンサートホール等を訪れる方々、府立大学の学生は多数いらっしゃるものの、それぞれの施設単発での訪問が多く、北山エリア内の周遊、そしてにぎわいの創造には至っていないように感じています。
 一方で、例えばこんなことがありました。府立大学構内の教養教育共同化施設「稲盛記念会館」の1階に「たまご」というカフェレストランがあります。私がここで昼食を取っていると、たまたま知人とばったり出会うことがありました。その知人は北山周辺にお住まいで、植物園を散策後、植物園と府立大学をつなぐ北泉門から構内に入り、このレストランでコーヒーを飲むなど休憩をして、隣接する京都学・歴彩館の2階にある府立大学附属図書館や京都資料総合閲覧室で読書等を楽しむことを日課としているとのことでした。
 このレストラン「たまご」は、学生や教職員だけではなく一般のお客さんも御利用いただけますとしており、グループで植物園を見学された皆さんや小さなお子さん連れのファミリー層の方々、幼稚園や保育所の子どもたちの姿を見かけることもあります。そういった方々も含め、植物園やコンサートホール等に来られた方々が北山通りにもっと流れ、お買い物などを楽しんでいただくことも、北山エリアの活性化につながるのではないでしょうか。例えばということで御紹介させていただきましたが、そういった楽しみ方も含め、府民の皆さんに広く発信して、様々な方法で楽しんでいただくことが必要だと私は思います。
 さらに、地元の皆さんのお声として、先日、北山街協同組合の役員の方から現地のお話を伺う機会をいただきました。同組合は、北山通り周辺の飲食店やブティックなど50店舗以上が加盟し、過去には北山ハロウィンや街路樹イルミネーション、陶板名画の庭での音楽コンサートなどのイベントも活発に実施されていましたが、コロナ禍で中断されておりました。その役員の方は、これからいよいよイベントも再開して盛り上げていきたい、植物園開園100周年などを契機に北山通りらしいおしゃれなにぎわいをつくっていきたい、それには北山エリアの人の流れを新たにつくりたいと強くおっしゃっていたことが印象に残りました。
 このように、地元商店街の皆さんとも連携を強化して、にぎわいをつくっていくことも大切ではないかと思いますが、いかがでしょうか。御答弁をお願いいたします。

◯議長(石田宗久君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 府立植物園についてでございます。
 本年1月1日に開園100周年を迎えました府立植物園は、年間85万人を超える方々が来園される、府立施設の中でも中核と言える施設でございます。その植物園が今後目指すべき姿について、植物園整備検討に係る有識者懇話会委員をはじめ、地元の自治会や商店街、学校・福祉関係など多くの皆様から御意見を伺ってまいりました。
 これまでの御意見などを踏まえまして、次の100年に向けた将来ビジョンとして、「京都から世界の生物多様性に貢献する」ことを掲げ、博物館機能や栽培技術の向上策として、大学、NPOなど多様な主体との連携強化による植物展示の充実、標本庫・学習施設の整備やバックヤードの充実、次代を担う子どもたちや若い世代向けの魅力拡大策として、デジタル技術を活用した情報発信、快適性向上のための施設整備など、ソフト・ハード両面の取組を進めていくこととしたところでございます。
 こうした考えの下、100周年記念事業として、まず1月にはオープニングイベントを開催し、開園当時の制服であるはっぴを復刻して来園者をお出迎えしたほか、連携協定を結ぶシンガポール植物園の御協力によるラン室の壁面展示やフォトスポットの設置、100年の歴史を振り返るパネル展示などを実施いたしました。
 また、現在開催中の「早春の草花展」などの季節に応じたテーマによる展示会の開催や、3月には、植物園で初となる婚活イベントの実施など、植物園の新たな魅力を発信する取組を展開することとしております。
 さらに、10月には記念式典などを行う「100周年記念祭」、アートと生物多様性の融合をコンセプトとした「メディアアートプロジェクト」を開催するほか、子どもたちが楽しく学べるエリアの整備や、京都植物誌作成プロジェクトの始動など各種取組を実施することとし、今定例会に関連予算案を提案しております。
 情報発信につきましては、100周年特設ホームページ、「府民だより」のほか、100周年を機に制度化した「植物園サポーター制度」におきまして、SNSによる植物園情報の拡散のお申し出をいただくなど、新たな発信手法が生まれてきたところでございます。
 今後とも、府民や事業者の皆様が植物園をより身近に感じ、支えていただくことで、植物園がこれまで以上に魅力ある施設となり、皆様とともに次の100年をつくり上げてまいりたいと考えております。
 次に、府立大学の学部・学科再編と附属高校化についてでございます。
 府立大学は、農学校として開設され、その後、社会の変化に応じて、文化、福祉、環境などの分野に研究と教育の幅を広げ、総合大学として府民生活や地域社会の発展に貢献してまいりました。18歳人口の減少に加え、DXやグローバル化が急速に進展するなど社会が大きく変化する中で、府立大学の果たすべき役割につきまして、予測不可能な時代に対応できる文理の壁を越えた普遍的な知識・能力を備えた人材や、環境・情報・農業などの成長分野を牽引する高度専門人材の育成に重点を置くこととし、学部・学科の再編が行われるところでございます。
 具体的な特色としては、まず文理の壁を越えた人材の育成を目指して、文学部にあった和食文化学科を理系の農学食科学部に移管することが挙げられます。食の歴史・文化だけでなく、農業の生産や食品の機能性、栄養などの理系のノウハウと併せて、食の生産から機能分析、食品加工、流通、栄養、健康、文化に至るまでの一連の課程を学び、食や農に関する多彩な分野で活躍できる人材を育成することを目標としております。
 さらに、農学から栄養学、理工学、情報科学、森林・環境学といった幅広い分野で構成されていました生命環境学部を、農学、情報、環境といった3学部に再編し、専門領域を高めた高度人材を育成することとしております。
 引き続き、社会課題の解決に貢献する人材の育成と研究が展開されるよう期待しているところでございます。
 また、府立高校の附属高校化につきましては、附属高校で府立大学の教員が講義を行ったり附属高校生が府立大学で授業を受けたりするなど、相互に交流することで高校の魅力向上につながり、進路選択の幅が広がること、長期スパンの教育により専門的な知識を習得できることから、農林水産業を牽引する人材の育成が可能となります。
 京都府といたしましても、府内で就業していただけるように、農林水産業の魅力向上にも併せて取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、府立大学のブランド力の向上についてでございます。
 府立大学のブランド力を向上させていくためには、社会が求める質の高い人材をいかに育成できるか、研究成果をいかに社会貢献につなげていくかが重要となってまいります。こうした考えの下、まずは中学生・高校生やその保護者に対し学科再編や附属高校化の取組をアピールすることで、多様な学生を確保し、また教育・研究の質を高め、社会が求める人材の育成につなげてまいりたいと考えております。
 併せまして、府立大学の産学公連携リエゾンオフィスの活動を強化し、府内各地でのフィールドワークなど地域課題の解決に向けた取組を積極的に進めることで、研究成果を地域に還元してまいります。
 新しくスタートを切る府立大学が、これまでにない特徴を発揮し、知名度の向上とイメージアップを図ることにより、ブランド力に磨きをかけ、京都の産業や文化の発展に一層貢献できる大学として大きな役割を果たしていけるよう支援してまいりたいと考えております。
 次に、府立大学のブランド力向上のためのハード整備についてでございます。
 府立大学学舎整備につきましては、先ほど申し上げました学部・学科の再編が行われることから、議員御指摘の老朽化や耐震性といった問題の解決だけではなく、次世代通信ネットワークや新興感染症も含めた危機管理のための環境づくり、産業界や地域との連携を進める地域貢献の拠点化などに対応した教育・研究環境を整え、社会のニーズに応える専門人材育成の場となるよう検討しております。
 現在は、府立大学から提出されました整備基本計画の内容に関しまして、精華キャンパスの活用なども含めまして、公立大学法人とともに精華町などと調整を行っているところでございます。
 引き続き、府立大学における学舎の耐震性能の向上や魅力あふれるキャンパスの整備を実施できるように努め、府立大学のブランド力向上に向け支援をしてまいりたいと考えております。
 次に、北山エリアにおける地元商店街との連携によるにぎわいづくりについてでございます。
 府立施設が集積する北山エリアにおいて、地域との連携により取組を進めていくことは重要であり、これまで、京都府や地元商店街をはじめ35団体から成る北山エリア交流連携会議(北山ぱーとなーず)を組織し、フェイスブックなどSNSによる周辺店舗の紹介、施設の周遊を促進するスタンプラリーの実施などに取り組んできたところでございます。
 植物園開園100周年を迎える今年、一層のにぎわい創出を図るためには、議員御指摘のとおり、特に地元商店街との連携強化を進めることが大切だと考え、例えば北大路商店街での植物園バナーフラッグの掲示やリーフレットの配架、北山街協同組合の各店舗と植物園内とのデジタルスタンプラリーの実施など、新たな取組にも協力をいただいているところでございます。さらに、北山街協同組合とは、旧総合資料館敷地における暫定活用事業での連携の検討を進めているところでございます。
 今後とも、北山エリアが、地元商店街をはじめとした周辺地域と連携・調和し、今まで以上に府民の皆様に親しまれる魅力的なエリアとなるよう、さらに取組を進めてまいりたいと考えております。

◯議長(石田宗久君) 田中健志議員。
   〔田中健志君登壇〕

◯田中健志君 それぞれ御答弁ありがとうございました。
 植物園はほんとにいろんな楽しみ方があると思いますし、まずは100周年を迎えるということを府民の皆さんに広く認識していただけるような取組、10月の記念式典も含めて情報発信をお願いしておきたいと思います。
 先日の京都マラソンでも、職員の方がはっぴを着ておられた様子も拝見させていただきました。そういったことも含めて、いろんな場面で府民の皆さんに、植物園の魅力であったり、歴史であったり、次の100年に向けたビジョンであったり、こういったことをぜひアピールしていただきたいと思います。
 府立大学でございますが、京都府立大学は、学長の塚本先生がダチョウの研究で非常に有名で、加えて先ほど私が御紹介した京都地域未来創造センターの京都府内全域の取組もありますが、それだけではなくて、知事御答弁のとおり、今後の人材育成や研究成果を地域や社会に還元していくという中でも、府立大学のホームページでも紹介されているんですが、紹介の動画がありましてこれを拝見していると、例えば生命理工情報学部の研究者の方が、CAP(キャプ)ペプチドという世界で初めての物質を発見して著名な賞を受けるのも時間の問題と言われているということであったり、スポーツ栄養科学の研究者の方が多くのアスリートの方々をサポートされているということも紹介されています。こういったこともぜひ府民の皆さんに広くお伝えし、ぜひそういった動画も御覧いただければ大変ありがたいと思います。
 そして、北山通り、北山周辺全体の活性化というのはほんとに今年、大きなチャンスだと思います。植物園が100周年、府立大学が生まれ変わるというこの機会を絶好のチャンスと捉えて、京都府を挙げて北山エリアの活性化に取り組んでいただきたいと思います。いろんなお声、いろんな御意見があることは承知しておりますが、もちろんそれもしっかりと受け止めて丁寧に説明をしていただく中での北山エリアの活性化に期待させていただきたいと思います。
 では、結びに、私たち府民クラブ京都府議会議員団は、府民の皆様の声をしっかりとお聞きして府政に届ける二元代表制の一翼を担うとともに、西脇知事と連携する責任ある会派として、子育て環境日本一の京都、そして「あたたかい京都づくり」の加速化に向け、全力で取り組むことを改めてお誓い申し上げまして、代表質問の結びとさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)