1 子育て環境の充実と少子化対策について
2 災害対策について
 (1)原子力災害時における広域避難について
 (2)住民の災害への備えについて
3 地籍調査と森林整備について
4 その他

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◯小原舞君 府民クラブ京都府議会議員団の小原舞です。会派を代表して質問いたしますので、知事の御答弁よろしくお願いいたします。
 初めに、今定例会に提案されております補正予算について、一言申し上げます。
 今定例会に提案されております予算案は、国の経済対策に先立ち、農林水産業や和装産業、地域公共交通といった物価高騰の影響を特に受けている業種への支援に加え、人手不足への対応や府内観光に対する需要喚起など、様々な業種に寄り添いながら必要な対策を講じるための内容となっており、会派を代表して高く評価いたします。
 また、先月29日には国において、新たな経済対策の裏づけとなる今年度の補正予算が成立しました。国の総合経済対策を踏まえた施策につきましては、なるべく早期にその効果が府民や事業者の元に届くよう、引き続き府民生活や事業活動に寄り添ったきめ細やかな府政運営をお願いしておきたいと思います。
 それでは、子育て環境の充実と少子化対策についてお伺いいたします。
 京都府では、子育て環境日本一の実現に向けて、第一段階として子育て世代を応援するため「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」を実施し、例えば公共の場で赤ちゃんが泣くのに母親が泣きやませようと肩身が狭い思いをしているのに、「大丈夫だよ、赤ちゃんは泣くのが仕事だから」という社会の寛容さが求められているという風土づくりへのチャレンジでした。次の段階としては、社会全体で子育てをするという意識の醸成が必要かと思われます。
 2022年の出生数は77万人となり、統計開始以来初めて80万人を割り込み、少子化対策は1990年代生まれの若者が30歳前後を迎える、今後6から7年が勝負と言われています。なぜならば、2030年代に入ると若年人口が減っていくため、日本の少子化問題に残された時間には限りがあるということを社会全体で再認識していかなければなりません。
 第2次ベビーブーム期の団塊ジュニア、私もでございますけれども、昭和46年から49年生まれ世代が30歳前後を迎えていた90年代後半から2000年代前半は、不況と就職氷河期が重なり、非正規雇用の拡大など若者を取り巻く雇用情勢が激変しました。過去から学び、若者が元気にならないことには少子化は克服できない。高齢化と負担ばかりという将来が目に見えている中で、自分の子どもに苦労させたくない、産まない、そうなって当然かと思われます。今は大変だけれども、将来をよくするために努力する。若者、次世代につなげていくため、結婚・子育てしづらい社会、職場環境、経済的、精神的な負担等の課題に全力で取り組んでいかなければ、昨年に改定された京都府総合計画では、2040年までに合計特殊出生率を全国平均に引き上げる目標には到達できないどころか、少子化の加速により地域の活力も失われていくという危機感を府民の皆様とともに共有していくことが重要です。
 行政の現場を経験され、少子化・子育てを一貫して研究されてきた前田正子甲南大学教授は、出生率が下がり続ける要因として「景気後退と雇用の劣化に翻弄された団塊ジュニアの未婚化」を指摘され、「若者への就労支援と貧困対策こそ少子化対策である、包括的な支援が日本の未来をつくる」と述べられています。
 少子化は複雑な要因が絡み合っていますが、若者世代の積極的投資や子育て支援に係る全世代からの理解、意識改革等は、もう先延ばしできない状況になっていると考えます。
 京都には、有名な「かまど金」の精神があり、明治維新後には人口が約25%も減少しましたが、京都の復興のため人づくりが第一と番組小学校を半年間で64校も開校したと言われています。その建設資金は、寄付金はもとより、自治組織「番組」ごとに、各家庭に子どもがいるいないにかかわらず、かまどの数相当の金額を出し合うというものでした。社会全体で子育て、地域ぐるみで子どもたちを育てることを実際に行っていたというのは、誇らしい事実です。
 新条例では、府、学校、事業者等の各主体の責務・役割が規定されますが、大きく支えるのは府民の力であり、社会全体で子育てをするという意識の醸成に欠かせないものだと考えます。また、少子化対策を講じるには、30歳前後を迎える若者の数が比較的多い2030年までに集中し、今、行動するというスピード感が求められます。
 そこで、今議会では、子育て支援条例と少子化対策条例を統合して「子育て環境日本一・京都の実現に向けた取組の推進に関する条例」を上程されていますが、両条例を一つにする意義と京都ならではの今後の戦略についての御見解をお伺いいたします。
 条例制定に係るパブリックコメントでは、「責務・役割」において「父親の育児支援に当たっては、父母の意識や知識のギャップを埋め、育児のスタートラインを同時に切ることができるような取組を当事者だけでなく、勤務先の上司や同僚などにも実施することが有効だと考える」と御提案いただいています。
 私はこれまで、子育ての現場に伺う中で子育ての孤立化が問題だと考え、子育てのスタート期である産後ケアの充実が重要であると取り組んできましたが、母子保健法の法改正がなされてもまだ浸透していないというのが現状だと思っています。現在の子育ては、核家族化や地域のつながりの希薄化が進み、相談できる人が近くにおらず夫婦だけ、またワンオペ育児と呼ばれるように孤立化している人が多くなっています。
 「出産した全ての女性に産後ケアを」の実現に向けて、産後指導士として舞鶴市を中心に御活躍をされている方が、海上自衛隊舞鶴地方総監部にて「少子化対策を考える~産後ケアの重要性と男性の育児参画~」と題して、ワーク・ライフ・バランス啓発講演を行われました。参加者の方からは、「出産後の体は思っていたよりも大きなダメージを受けているということが理解できた」「夫も一緒に聴講しており、より一層家事に協力的になったので一緒に聞いてよかった」「今後、部下には積極的に産後ケアの重要性を説き、子育てに参加を促していきたい」などの御意見もあり、改めて産後ケアの重要性等の周知が求められ、このように子育ての孤立の現状について講師等を派遣して、職場、各事業所の研修に取り入れてもらえるように働きかけるなどの取組が重要かと思われます。まずは、知ることから理解が始まるのだと考えます。
 今年度から国は「産後ケアの強化」を掲げ、産後ケア事業が誰でも利用可能となったほか、利用料の減免対象も拡大されており、また「産後パパ育休(男性版産休)」が制度化されましたが、その実行には、家庭、職場、そして社会の理解が不可欠です。
 京都府においては、2021年度から産後ケア事業の利用料の補助を実施しておりましたが、利用者数は産婦全体の1割未満であったとのことです。産後ケア事業は市町村事業ではありますが、制度の利用を促進していくことが、子育て環境の充実につながっていくと思われます。
 そこで、産後ケアの重要性と男性の育児参画についての課題と今後の取組について、お伺いいたします。
 また、共働き世帯が約7割と増加する中、子育て世代の働く環境の整備は重要となっています。本府では、「子育て環境日本一に向けた職場づくり行動宣言」企業が約2,200社となり増加傾向にある一方で、宣言内容が実践できたと届け出のあった企業は約半数にとどまっていることにより、アンケート調査により必要な支援策を検討されていますが、新条例制定を踏まえ、子育てと仕事の両立に向けてどのように働く環境の整備を進められるのか、御見解をお伺いいたします。
 まずは、ここまでの御答弁をお願いいたします。

◯議長(石田宗久君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 小原議員の御質問にお答えいたします。
 小原議員におかれましては、ただいまは会派を代表されまして、今回の補正予算案に対しまして高い評価をいただき、厚く御礼を申し上げます。
 京都府子育て支援条例と京都府少子化対策条例を統合し、「子育て環境日本一・京都の実現に向けた取組の推進に関する条例案」を上程した意義についてでございます。
 ここ京都には、議員御紹介の番組小学校をはじめ、地蔵盆など、社会全体で子どもや子育て世帯を温かく見守り、支える文化が根づいております。しかしながら、近年は、核家族化や地域の絆の希薄化、子どもや子育て世帯の孤立化・孤独化が進んでいるほか、我が国の構造的課題である人口減少も深刻さを増しております。こうした状況において、子育て環境日本一の京都を実現するためには、子育て支援と少子化対策を一体的に展開することが重要だと考え、本条例案を上程した次第でございます。
 具体的には、子育て環境日本一の理念を府民の皆様と共有するとともに、社会を構成する各主体の責務や役割などを規定することとしております。そのほか、市町村によるまち全体で子どもを見守り支えるまちづくりを支援する「子育てにやさしいまちづくり推進計画制度」を創設しますとともに、子育て世代が住宅や土地を取得する際の不動産取得税の軽減措置の適用対象を「第3子以上」から「第1子以上」へと拡充するなどの規定を盛り込んだところでございます。
 次に、今後の戦略についてでございます。
 京都ならではの取組を先駆的に実施し全国へと波及させることで、我が国全体の子育て環境の充実や少子化対策にもつなげていきたいとの思いの下、子育て環境日本一推進戦略においても、笑顔の子どもが大人や若者の目に触れたり大人の世界に子どもが自然に入っていく「子ども“ええ顔”たくさんプロジェクト」、正規雇用者への転換や不合理な賃金格差の解消、柔軟かつ多様な働き方の導入を促進する「働く人の希望が実現できる」職場づくりプロジェクトなど、全国でも初めての視点に立った取組を盛り込んでおります。
 今後とも、子育て環境日本一の実現に向け、取組を進めてまいりたいと考えております。
 次に、産後ケアの重要性と男性の育児参画についてでございます。
 出産直後の女性はホルモンバランスが変化しやすいことに加え、核家族化の進行などにより周囲に相談できる人がおられないケースもあり、育児不安や悩みを抱えやすいことから、心身の不調が起こりやすい状況にあります。このため、産婦の心身のケアや授乳指導、育児サポートなどを行う産後ケア事業の利用促進や、男性が産婦の心身の疲労を理解し家事や育児を分担することが重要だと考えております。
 産後ケア事業につきましては、利用者が産婦全体の1割未満であり、産婦に対する周知のほか、パートナーの男性やその職場において産後ケア事業の重要性を理解していただき、必要とする全ての産婦が利用できる環境をつくることが課題だと考えております。
 また、男性の育児参画につきましては、男性の育休取得率は年々上昇しているものの、依然として女性の育休取得率との差は大きい状況であるため、男性が育休を取得しやすい職場環境の整備が課題だと考えております。
 このため、京都府が今年4月に作成した「親子健康手帳」には、両親が共に出産・子育てに向き合うという観点から、産後ケアの大切さや家事・育児の分担シートなどを独自に盛り込んだところでございます。今後、こうした手帳の趣旨を市町村と連携して妊産婦の方に確実に伝えますとともに、きょうと子育てピアサポートセンターのホームページ等でも手帳の普及・啓発に努めてまいりたいと考えております。
 また、職場への働きかけとしましては、若手社員や人事・総務担当社員などを対象に、育休制度に関する知識や男性の家事や育児の分担、意識改革を促進するセミナーを開催しているところでございます。今後は、このセミナーに併せて、新たに産婦の心身のサポートや産後ケアの重要性についての周知を図ることで、産後ケア事業の利用と男性の育児参画を推進してまいりたいと考えております。
 次に、子育てと仕事の両立についてでございます。
 厚生労働省の離職者調査によりますと、出産後に退職した女性の一番多い退職理由は「仕事と育児の両立の難しさ」となっております。人口減少社会において、子育てと仕事の両立を実現することは、社会の支え手を維持する上で大変重要であり、職場の環境整備を進めることが必要でございます。
 京都府でも、これまでから子育て企業サポートチームが企業を訪問し、子育て環境日本一に向けた職場づくり行動宣言を働きかけ、2,200社を超える企業に宣言をしていただきました。一方、宣言企業に対しては、時間単位の年休制度の導入や子連れ出勤スペースの整備など、宣言内容をスムーズに実践いただけるよう、社会保険労務士などとも連携し、補助金も活用した支援を行ってまいりましたが、議員御指摘のとおり、実践企業は宣言企業の半数にとどまっております。
 実践に至らなかった理由といたしまして、京都府が実施した企業に対するアンケートの結果によりますと、その約8割が「何から取り組めばよいのか分からなかった」「人員・時間の不足」の2つとなっております。
 そのため、子育て環境日本一・京都の実現に向けた取組の推進に関する条例では、事業者に対しても、子育てに対する関心と理解を深め必要な支援を行うことや、多様な働き方を実現するための環境整備などを求めることとし、事業者の役割を明確化したところでございます。
 今後は、この役割も踏まえ、行動宣言の実践に向けさらなる専門家派遣による助言や新たに立ち上げる京都企業人材確保・テレワーク推進センター(仮称)での支援を検討してまいりますが、企業の雇用構造を抜本的に改革し、京都全体で多様な働き方の実現に向けた取組を進めることが重要だと考えております。
 このため、経済団体等と連携をし、優良事例の共有・情報発信を行うなど、今後とも、オール京都一体となって子育て環境日本一・京都の実現に取り組んでまいりたいと考えております。

◯議長(石田宗久君) 小原舞議員。
   〔小原舞君登壇〕

◯小原舞君 御答弁ありがとうございます。
 御答弁いただきましたとおり、子育て支援と少子化対策を融合して全国を牽引するような、京都発の取組を一層進めて、温もりある京都づくりをお願いいたしたいと思っております。
 今、物価高騰や燃料高騰も含めて、やっぱり若者や子育て世代の方々も大変影響を受けております。統計の中では、子どもは欲しいと考える男女は8割いるということですので、希望がかなえられるような社会づくりが必要だと思っております。いつも西脇知事がおっしゃっておられるとおり、「子育てにやさしいまちは全ての世代にやさしいまちである」と述べられているとおりでございますので、これからもお取組を一層進めていただきますようよろしくお願い申し上げます。
 次に、災害対策についてお伺いいたします。
 まずは、原子力災害時における広域避難についてお伺いいたします。
 私の地元の舞鶴市は、高浜発電所のPAZ(5キロメートル圏内)に住民が居住し、全市がUPZ(30キロメートル圏内)に入り、全国で唯一、立地県以外で5キロ圏に入る自治体です。広域避難の場合は、例えば私の住む町内の場合は、西方面は神戸市長田区へ、南方面は京都市左京区で避難することになっています。
 問題意識としては、東日本大震災以降、住民の意識が薄れてきている、避難の手段や避難先がどこなのか知らない方が多いのではないか、住民への周知・浸透が必要である、避難先の市町村の受入体制がどのようになっているのか、平時から避難元、避難先市町村との連携、具体的な協議が必要でないか、受入施設周辺の住民の理解はどのようになっているのか、ということです。
 11月16日に関西広域連合議会で広域避難について質問をいたしましたが、県外への広域避難訓練も実施し広域避難ガイドラインの実効性向上を図っていく、福井県での原子力総合防災訓練では避難元市町と兵庫県内の避難先市町との間の意見交換会を実施し、訓練準備や避難者受入作業を通じて関係職員の顔の見える関係が構築されるなど、広域避難に携わる自治体間の連携促進や、福島第一原発事故の際の福島県飯舘村の全村避難の現地での大変さについて等も御答弁をいただきました。
 そこで、原子力災害時における広域避難において、避難元市町と府県外の避難先市町の平時からの交流や具体的な協議が必要かと思われますが、本府の御見解をお伺いいたします。
 広域避難に係る移動手段については、約7割がバス、3割が自家用車での移動を想定されていますが、バスの運転手の人手不足問題や車両の確保における実効性について、また被災時には統率が取れるのかなどの課題があります。
 原子力総合防災訓練では、バスなどのほか、例えば地震により道路が寸断された際を想定して、海上自衛隊のエアクッション艇や大型ヘリでの避難訓練も実施されています。避難経路は、地域ごとに設定されており、自然災害等により避難経路が使用できない場合は、他のルートなどの活用が京都府地域防災計画に定められていますが、訓練等を通して常に課題を検証し、実効性を高めていくことが必要かと思われます。
 広域避難における移動手段は、バスがメインで、タクシーなどの活用や原則乗り合わせで自家用車等による移動を想定していますが、国や各関係機関と連携し、道路の寸断や渋滞等の混乱を想定したヘリ等の空路、船舶等の海路、鉄道等の陸路における移動手段の確保が必要かと思われますが、課題と取組状況についてお伺いいたします。
 次に、住民の災害への備えについてお伺いいたします。
 今年は、関東大震災から100年の節目の年であり、また京都府北部の水害で戦後最大の死者数となった1953年の9月25日の「28水」、昭和28年水害から70年を迎える年となります。昨今の災害の激甚化を踏まえ、備えあれば憂いなし、大災害を風化させない地道な取組が非常に重要です。
 舞鶴市の多門院地域では、昭和28年の台風第13号による壊滅的な被害を受けた記録を住民の方が「よみがえる13号台風の恐怖」という冊子を作成し、次世代に伝えていく取組を熱心に行われています。これまでも、演劇や被害写真展、回想録の朗読等も行われ、「山がだんだん下がってくる、大木が立ったままで流れてくる、轟音とともに、山津波だ」、山津波に飲み込まれ、泥の中をはい出して九死に一生を得た男性は、「呼吸もできず、大変な土圧のため眼球が飛び出しそうである、岩石・木材・竹の根などあらゆるものが背中の上を揉み揉みして通過する」など、当時の体験をリアルな描写で子どもたちや若い世代に伝え、防災の意識を高めてほしいという思いで取り組まれています。また、南部のほうでは、市民団体のカッパ研究会が、南山城水害と台風第13号の記録をまとめた冊子を発行されています。
 このような災害の体験を知る機会を地域の子どもたちへ、そして学校現場等においても積極的に取り入れていただきたく思います。
 次に、避難行動についてお伺いします。
 平成30年7月豪雨においては、京都府内で約62万人に避難勧告が発令されたのに対して、実際に避難した住民は約4,000人であり、約0.6%でした。
 今年、京都北部の舞鶴市、綾部市、福知山市において甚大な被害を出した台風第7号の豪雨被害において、5年前の豪雨災害の際、避難対策が不十分で犠牲者を出した教訓から、綾部市物部町の下市自治会では、住民が自主避難するときの動きを事前に決めておく「避難行動タイムライン」を活用して、組長や自主防災組織のメンバーが高齢者宅を訪問、電話等で避難を呼びかけ、避難所や自宅や近所の2階建ての家屋に垂直避難をするなどの自主避難につなげました。
 今回のような台風接近前の深夜に想定外の記録的短時間大雨情報が発表され、市の避難指示が出る前の避難行動の判断は非常に難しく思われますが、住民が勉強会を開いてタイムラインを作成し、避難訓練によるタイムラインの習熟を図り、住民同士のふだんからの信頼関係が築かれていたこと、そして地域のリーダーの存在が、臨機応変な早めの対応につながったのだと思われます。災害対策として、道路・河川等のインフラ整備も重要ですが、地域住民による水害等避難行動タイムライン作成等のソフト対策の重要性を実感させられました。
 そこで、住民の防災意識の向上のためどのように取り組まれているのか、また避難行動タイムラインの普及状況と課題について、お伺いいたします。
 最後に、地籍調査と森林整備についてお伺いいたします。
 平成27年の京都府議会の初質問にて、森林の所有者不明問題と地籍調査についてお伺いしましたが、平成26年度末の地籍調査の実施状況は3万3,500ヘクタールで面積率8%、着手市町村数は12市町の46%で、とりわけ森林の調査については4,200ヘクタールで面積率1.2%という状況でした。課題として市町村からは、地籍調査への住民の関心が低いこと、相続人調査や境界立会いなどの業務に労力を要するが実務経験職員が少ないことなどが挙げられています。
 この問題が顕在化されたのは2011年の東日本大震災で、所有者が不明なため、迅速な復旧・復興工事の妨げとなったことによります。現在、登記所に備えてある地図は、明治時代の地租改正により作られた地図(公図)を基にしてあるものが多く、当時の測量技術の未熟さや不備等により、境界や形状などが必ずしも現地と整合していないため、土地紛争の原因にもなっています。地籍調査を経た精度の高い地図の備付けが進められていますが、令和4年4月時点で日本全体で約43%にとどまっています。
 公共事業の現地調査にて担当者に伺うと、用地の所有者が江戸時代の人であり、子、孫、ひ孫、やしゃご、来孫と相続人が100人以上に上り、連絡がつかない場合や本人に相続人であるとの認識がないケースがほとんどで、全員の同意を得るまでに3年ほどかかるなど、気が遠くなるような期間を要します。その結果、災害復旧や公共事業に支障が生じるほか、農地の集積・集約化、森林の適正な管理などにも悪影響を及ぼしています。
 国においては、このような事態を鑑み、令和6年4月から適用される改正法では、相続などにより不動産を取得した場合、引き継いだ相続人は相続登記の申請が義務化されます。正当な理由がなく申請をしなかった場合は10万円以下の過料が課せられる場合もあるなど、今後、どのように所有者不明土地の解消や地籍調査などが進捗していくかは、今後の経過を見ることになります。
 近年、新たな測量技術を取り入れることで地籍調査の効率化を図ることが期待されています。例えば、航空写真によるリモートセンシング技術─物を触らずに調べる技術、航空レーザ測量技術─有人航空機やドローン等の活用、衛星画像によるリモートセンシング技術、MMS(モービルマッピングシステム)─移動計測車両による計測技術、これは舞鶴市でも実証されております、などが導入され始めています。
 特に山村部では、高齢の土地所有者が立会いに現地に赴くことが困難なため、集会所等で測量のデータ、資料を基に境界案が確認できるようになっており、令和2年度から兵庫県の佐用町では、近畿地方では初となるスマート地籍調査に取り組んでいます。この事例から、従来の地籍調査では山の中に入って現地踏査観測が約90日間かかっていたところ、スマート地籍調査では現地での調査がなくなり、境界立会いでは地権者が滑落や熱中症等危険が伴う中で約80日間かけていたのが、公民館で図面を基に机上立会いで約8日間へ、約1割に短縮されます。費用は7割に、事業工期は5割に縮減可能となっています。
 そこで、本府における地籍調査の課題と進捗状況について、また新技術を導入した地籍調査の実施についての御見解と京都府として今後、地籍調査をどのように進めていかれるのか、お伺いいたします。
 また、航空レーザ測量等で得られるデータは、地籍測量の効率化にとどまらない大きな利用価値を秘めており、東京都や静岡県では測量データを公開し、民間事業者等がそれを生かして地域開発を進めておられると伺っております。こうした測量データを民間事業者等による開発など多方面に生かせるよう、オープンデータ化を進めていただきますよう要望いたします。
 最後に、森林整備についてお伺いいたします。
 今回の台風第7号災害では、山地災害危険地区に指定されていない箇所、小渓流においても山腹崩壊が起こり、上流から流れていた流木等が橋でせき止められ川の水位が急激に上昇し、道路の冠水や住宅の床上・床下浸水被害となりました。
 中山間地の被害を軽減させるためにも、森林管理の現状を把握し、流木、放置間伐材の減災対策に取り組む必要があります。京都府では、土砂災害警戒区域のうち、人家5戸以上もしくは公共施設等が存在する箇所が約5,500か所あり、そのうち整備済み箇所は約770か所程度となっており、今後ともハード整備のさらなる重点化を図る必要があります。
 流木災害につながる、放置されたままの所有者不明森林や適切な経営管理が行われていない人工林についても、市町村が主体となって森林所有者と林業事業者をつなぎ、整備を進める森林経営管理制度が平成31年4月にスタートし、その財源として2024年度から国民1人当たり年額1,000円の森林環境税が徴収されることになっています。
 そこで、京都府における流木対策の状況と今後の取組についてお伺いいたします。
 また、森林の整備について、全国初の取組として令和2年に京都森林経営管理サポートセンターが設立されましたが、京都府内の市町村の取組状況と課題について、また今後の展望についてお伺いいたします。
 よろしくお願いいたします。

◯議長(石田宗久君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 原子力災害時の広域避難についてでございます。
 原子力災害による万一の緊急事態に備えて、災害から府民の生命と財産を守るためには、平時から国や関係市町、関西広域連合などと連携し、避難体制に万全を期すことが大変重要でございます。
 京都府では、平成25年2月に広域避難計画を策定し、高浜発電所及び大飯発電所から30キロメートル圏内にお住まいの約11万人の広域避難先として、兵庫県と徳島県の22市町の学校や体育館など約400の避難施設を確保しているところでございます。
 また、平成25年6月には京都府広域避難調整会議を設置し、避難元の市町と避難先の市町との間で避難施設への受入手順や避難経路の確認などの情報交換を行いますとともに、コロナ禍前の平成30年には、避難元の市町の住民の方々に兵庫県内の避難先まで避難していただく訓練も実施したところでございます。
 引き続き、広域避難調整会議等を通じて、避難元の市町と避難先の市町の連携強化に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、広域避難の移動手段につきましては、基本的にはバスや自家用車を想定しており、安全で円滑な避難のためのインフラ整備が重要なことから、平成29年度から国の交付金を活用して、避難道路の2車線化や狭隘部分の拡幅、のり面保護などの整備を進めております。
 また、議員御指摘のとおり、地震により道路が寸断された場合の孤立対策も大変重要なことから、一時避難場所となる公民館などの放射線防護対策工事を進めますとともに、ヘリコプターや船舶による避難を広域避難計画に位置づけて、自衛隊や海上保安庁との実働訓練にも取り組んでいるところでございます。
 一方で、鉄道による避難につきましては、避難経路上のどこで放射線検査や除染を行うのか、また鉄道駅までの移動手段をどのように確保するのかなどの課題があることから、引き続き検討してまいりたいと考えております。
 今後とも、関係市町と連携して、避難道路などの整備や実働訓練に取り組み、広域避難に万全を期すよう取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、防災意識の向上とタイムラインについてでございます。
 近年、風水害が頻発化、激甚化していることから、住民自らが地域の危険度をあらかじめ把握し、災害発生のおそれがあるときには、地域ぐるみで命を守る行動を取ることが重要でございます。京都府では、これまでから府民の防災意識の向上と自発的な避難を促すため、地域の災害危険情報の提供やSNSを活用し、防災情報を発信するほか、防災士などの専門人材を地域へ派遣することで水害等避難行動タイムラインの策定を支援しております。
 タイムラインの策定状況でございますが、本年9月末時点では、水害時等に避難が必要となる約1,500地区のうち、策定済みは990地区となっております。タイムラインは、地域住民が一堂に会して検討し策定するものであり、その過程が防災意識の向上につながると考えております。本年8月の台風第7号の際には、タイムラインを策定されていたことで早期の自主避難につながった例があったことからも、残る約500地区も早期に策定していただく必要があると考えております。
 課題といたしましては、被災経験が少なく、タイムライン策定の機運が高まっていない地域があること、また地域で主導するリーダーが少ないことなどがございます。このほか、コロナ禍では住民が集まることが困難であったことも、策定が進まなかった要因の一つとして考えております。
 このため京都府におきましては、地域の防災リーダーの養成と防災意識の向上のため、市町村から受講者を推薦いただき、防災士養成研修を実施するとともに、消防団と地域企業の合同訓練の支援などにより、機運を盛り上げる取組を行っているところでございます。
 今後とも、市町村と連携し、地域防災力の向上により逃げ遅れゼロを目指してまいりたいと考えております。
 次に、地籍調査についてでございます。
 地籍調査は、市町村において土地の所有者や境界などを明確化するものでありますが、京都府の進捗率は、令和4年度末において8%であり、全国的に見て低い状況にございます。
 進捗を加速するため、市町村に対して課題などについてヒアリングを実施しておりますが、実務経験職員が少ない、土地の細分化に伴う権利関係の複雑化などにより、測量作業に時間を要し、現地立会いが進まないなどの課題が挙げられております。
 このため京都府といたしましては、従前より、市町村職員向けの手引の作成や国の地籍アドバイザー制度などを活用して、市町村に対する伴走支援を実施してきたところでございます。
 私は国土交通省、復興庁で東日本大震災の復興に取り組んだ際に、地籍調査の有無によって復旧期間に大きな差が生じることを目の当たりにし、その重要性を強く実感をいたしました。このような経験も踏まえ、伴走支援に加えまして、今年度、組織改編を行い、地籍調査の担当部局を農林水産部から建設交通部へと移管いたしました。これは、用地を取得して道路などのインフラ整備を行う、また、いざ災害が発生したときに用地を確保して復旧に当たる責務を担う建設交通部が担当することにより、課題解決に向けた工夫の可能性が高まることを意図してのことでございます。
 移管後の建設交通部におきましては、インフラ整備の打合せなどの際に市町村長に直接、地籍調査の推進への理解や協力を求めるなど、調査推進が指標の向上のみならず、まちづくりの加速化につながるよう工夫をしているところでございます。
 加えまして、議員御紹介のICT等を活用した新たな測量技術の導入につきましては、現地作業の効率化によって工期や費用が縮減されますことから、市町村による調査の推進を後押しするものと考えており、普及のための研修会を開催しております。
 今後とも、市町村との連携や府の現場の体制を強化するとともに、効率化に資する新技術も積極的に活用することにより、まちづくりや迅速な災害復旧に役立つよう、地籍調査の一層の進捗を図ってまいりたいと考えております。
 次に、森林整備についてでございます。
 山地災害から府民の暮らしを守るためには、防災施設の設置と適切な森林整備により森林の防災機能を高めることが重要だと考えております。これまで、山地災害危険地区を中心に治山ダムの設置などに加え、豊かな森を育てる府民税を活用した倒木等の危険木の除去など、きめ細やかな対策を進めてきたところでございます。
 一方で、この夏の台風第7号では、想定を上回る局所的な集中豪雨により、危険地区に指定されていない小規模渓流などにおいても、土砂とともに倒木などが流出をいたしました。被災箇所につきましては、9月定例会において御議決をいただいた補正予算により、既に12か所で危険木の除去等に着手したところですが、今回の災害の特徴を踏まえ、改めて対策を講ずべき箇所の洗い出しが必要だと考えております。
 そこで、航空レーザ解析で得られる地形情報を活用し、危険度の高い箇所から重点的に対策を講じるなど、森林の防災対策の強化に努めてまいりたいと考えております。
 また、京都府では、森林経営管理制度により、管理が十分にできていない人工林の整備を進めるため、市町村を支援する京都森林経営管理サポートセンターを設立しております。センターにおいて、所有者の意向調査が円滑に進むよう、ドローン撮影による動画で所有森林や荒廃状況を説明するなど工夫を行った結果、17市町村の約3,500ヘクタールで意向確認が完了し、そのうち7市町村の約100ヘクタールで森林整備が実施されるなど、着実に進捗してきたところでございます。
 一方で、府が管理する森林簿などの森林情報が古く、精度が低いことから、所有者の特定に時間を要しており、この状況を改善する必要がございます。このため、航空レーザ解析により精度向上を図るとともに、市町村や林業事業体など関係者が最新の情報を共有できるクラウドシステムの導入を進め、所有者の意向確認の迅速化につなげてまいりたいと考えております。
 今後とも、防災対策に全力で取り組むとともに、森林整備の一層の推進に努めてまいりたいと考えております。

◯議長(石田宗久君) 小原舞議員。
   〔小原舞君登壇〕

◯小原舞君 御答弁ありがとうございます。
 災害対策、そして新技術を活用した地籍調査も含めて、一層の御推進をよろしくお願いいたします。
 森林の再生についてコメントをしたいと思うんですけれども、本当に山に入ると大変山が荒れております。森林や山の思想というのは日本人にとって欠かせないものであって、豊かな森林を育てて次世代につなぐことが、残念ながら現在においてできなくなっております。今回取り上げた子育て環境や少子化対策とも通じるものがあるのかもしれません。森づくりは百年の計であり、私たちがいつしか忘れかけていた大切なものを思い出すヒントがあるとも考えております。
 この森林整備というのは、すぐに解決できる問題ではありませんけれども、やはり未来へつなげるために先送りをせずに、本当に取り戻せなくなる前に力を込めて取組を進めていただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。
 最後に、私たち府民クラブ京都府議会議員団は、京都府民の皆様が安心・安全を実感でき、全ての人が生き生きと暮らせる共生社会の実現、京都の未来を担う子どもたちにすばらしい京都をつないでいくために全力で邁進することをお誓い申し上げまして、質問の結びと代えさせていただきます。
 御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)