1 子育て環境の充実に向けた取組について
2 コロナ禍の経験を成長につなげる中食分野の取組について
3 福祉施策におけるICTの活用について
4 その他

質疑全文を表示

◯議長(石田宗久君) 次に、田中美貴子議員に発言を許可します。田中美貴子議員。    〔田中美貴子君登壇〕(拍手)

◯田中美貴子君 府民クラブ京都府議会議員団の田中美貴子でございます。私は、会派を代表いたしまして、数点にわたり、知事に質問させていただきます。御答弁よろしくお願い申し上げます。
 質問に入ります前に、一言申し上げます。
 先月15日に最接近いたしました台風7号により、被災されました方々に心からお見舞いを申し上げます。我が会派も緊急要望をさせていただきましたが、本府におかれましても迅速な被災状況の把握や被災者支援に取り組んでおられるところであります。被災された方々が一日も早く日常生活を取り戻せますよう、引き続きの復旧作業に取り組んでいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 また、補正予算についてでありますが、今定例会に提案されております予算案は、原油価格や物価の高騰が長期化により依然として府民生活や事業活動等に重大な影響を及ぼす中、子どもの学びの充実や農林水産業者に対する省エネ機器導入等への支援などの物価高騰対策に加え、京都産業の活性化や「文化の都・京都」の実現などの「あたたかい京都づくり」に向けた施策も盛り込むなど、現下の状況を的確に捉え、切れ目のない対策を実施する内容となっており、会派を代表いたしまして高く評価するところであります。
 それでは、質問に入らせていただきます。
 子育て環境の充実に向けた取組について。
 本府では、2007年に子育て支援条例、2015年に少子化対策条例を制定。それらを統合する意味で、今、子育て環境日本一推進条例の制定・施行に向け、様々に検討が進められております。
 一方、国連が3月に発表した世界幸福度報告では、日本は47位。先進7か国の中、最下位。幸福度の指標である「人生の選択の自由度」が日本では低い。つまり、自分の人生を自由に選択して生きることが難しく、子育てを選択できるか否かは人生の選択の自由度の重要な要素であるにもかかわらず、困難となっているのが幸福度のランキングの低さに表れているということと思います。
 国立社会保障・人口問題研究所による50歳時未婚率は、2020年時点で男性約28%、女性約18%。30年間で男性約5倍、女性は約4倍。一方、夫婦の平均子ども数を表す完結出生児数は、2019年時点で1.90人と、30年前から大きく変わってはいない。つまり、少子化の要因の一つに未婚者の増加が考えられます。
 また、日本での女性の平均賃金は男性の約7割、非正規雇用も多い。非正規の場合、出産後の離婚率も高く、出産・離職後にシングルマザーになれば貧困に陥る可能性もあり、出産は、合理的に見れば、経済的リスクと言わざるを得ない。つまり、今の日本は、子どもを持つことは、仕事で活躍しにくく、損をする社会であるということです。
 社会で子育てをするということは、結婚や出産について自由に選択できる環境の整備をすること。つまり、明るい未来を展望した将来設計を描けるよう、これからの世代の生活支援をし、「子どもを持つことは幸せである」という多くのモデルを創出し、併せて社会規範を変えていく。このところ、授かり婚も増えており、20代前半の女性が産む第1子の5割以上は結婚前の妊娠によるものとなっており、婚外子の権利を制約せず、里子やステップファミリーを当たり前にしていく。本府では未婚のシングルマザーにも制度が拡充されており、このことは「婚外子でも京都府なら子育てが可能である」ということにもつながり、そういった制度の拡充に加えて様々な形態のパートナーが認められることで、私は本府における結婚・子育てがより選ばれやすいものになるものと思っており、多様な結婚観と相まって、京都が文化都市を目指し、世界中からたくさんの受入れを期待するなら、ぜひそうあるべきだとも考えております。
 以上のようなことを踏まえ、数点質問をさせていただきます。
 最初に、プレコンセプションケアについてお伺いいたします。
 国では、成育基本法及び成育医療等基本方針に基づき、成育過程等にある者に対し、必要な成育医療などを切れ目なく提供するための施策を総合的に推進することとされており、また、来年度には女性の健康に特化した国立高度専門医療研究センターを開設する方針を出されたと報道されたところです。
 特に、今年3月に改定された成育医療等基本方針においては、「男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うよう促すプレコンセプションケアを推進する」「男女を問わず、人間の身体的・精神的・遺伝学的多様性を尊重しつつ、妊娠、出産等についての希望を実現するため、妊娠・出産等に関する医学的・科学的に正しい知識の普及・啓発を学校教育段階から推進する」といった内容が盛り込まれ、プレコンセプションケアを推進する必要性が指摘をされております。
 本府においては、府民の妊娠の希望をかなえるため、これまで全国トップレベルの不妊治療支援を進めてこられましたが、医療機関においても、卵子凍結等、現段階で可能な医療提供を推進していただきたいと考えております。
 ただ、「いずれ子どもは欲しいが、20代は仕事に専念して、妊娠は仕事が落ち着いた30代」という漠然とした思いで20から30代を過ごし、気づけば妊娠が難しい年齢になっている方々も多いのではないでしょうか。これまでの不妊治療支援は30代後半から40代を中心とした「子どもが欲しいけど、できない」層への支援が中心ですが、支援のターゲットを10代や20代にも広げて、「いつか子どもが欲しい」層が希望をかなえられる社会を実現すべきではないでしょうか。少子化に歯止めがかからない中、先ほど申し上げた国の基本方針も踏まえ、「子どもが欲しいけど、できない」層への不妊治療支援だけでなく、「いつか子どもが欲しい」層への支援に新たに踏み出していく必要があると考えます。
 そこでお伺いいたします。
 妊娠を希望する全ての府民がその希望をかなえられるようにするため、学校や企業と連携し、学齢期から社会人に至るまで切れ目なくプレコンセプションケアを推進していく必要があると考えますが、知事の御見解をお聞かせください。
 次に、新生児の遺棄や虐待死を防ぐための取組についてお伺いいたします。
 新生児の遺棄や虐待死を防ぐために本府の取組を一層充実していただきたいと思っておりますが、妊娠した妊婦さんの無料検診、出産支援が他府県に先駆けて京都で行われることとなりました。
 私は、宇治市議会議員であった2006年にテレビで「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」のニュースを見て共感し、2007年5月に熊本県慈恵病院で設置をされた赤ちゃんポストを視察、12月議会で取り上げさせていただきました。幼いときに虐待された子がやがて対保護者・対教師暴力を行い、逮捕されたことをきっかけとして、様々に子どもや保護者の聞き取りをし、望まない妊娠や経済的困窮による要因が、母親のみならず、その子にまで影響することが分かり、度々訴えてまいりました。
 赤ちゃんが遺棄される事案は後を絶たず、令和2年4月から令和3年3月までの子どもの虐待死事例は49件に上りますが、そのうち、生後ゼロ日が約16%、生後ゼロ日以外のゼロ歳児が約49%、ゼロ歳児の占める割合が約65%となっております。その理由は、予期せぬ妊娠をはじめとする未成年・学生の妊娠、DV、妊婦健康診査未受診、貧困、社会的孤立等、様々ではあるものの、厳しい環境の中での選択であったことは否めません。尊い命を自らの手で遺棄してしまうことの苦しみはいかほどのことだったかと思うと、胸が締めつけられる思いがします。
 そのような中、妊婦の無料検診、出産支援が行われることとなり、私は京都という土壌が命を守るとりでとなっていることにとてもうれしく、頼もしく思っております。まずは、親子健康手帳取得を促進し、行政支援につなげること。市町村に委ねるだけではなく、本府として新生児の遺棄や虐待死を防ぐための取組を強化すべきと思いますが、いかがでしょうか。お考えをお聞かせください。
 次に、子どもの休業についてお伺いいたします。
 全国知事会の休み方改革プロジェクトチームでリーダーを務める愛知県の大村知事が、「ラーケーションの日」について、子どもが平日に柔軟に休むことができる環境整備などを求める提言をされ、全国知事会では「休み分散取得で経済の活性化を」との休み方改革の必要性を訴えられ、提言をまとめられたとのことです。提言は、週休日に一斉に休む現状では観光地が混雑し、国民が質の高い休暇を楽しめないと指摘。柔軟に休暇を取得できるようになれば生活の質や労働生産性が向上し、観光業など、サービス業は繁閑の波がなくなり、経済効果があるとも主張されたとのことです。愛知県が今年度から取組をされる学習(ラーニング)と休暇(バケーション)を組み合わせた新しい学び方・休み方であり、まだ試行段階とは思いますが、特に観光地である本府においては京都の文化を体験するよい機会ともなることから、取り組んでみるのも再発見につながるものと考えます。
 現在、京都府子育て環境日本一推進戦略の改定や京都府子育て環境日本一推進条例(仮称)の制定に向けた検討が進められており、こういった取組も子育て環境日本一の実現に向けた取組としては重要ではないかと考えます。単に学校の休みをいつ取るかということのみならず、仕事と子育ての両立支援の新しいモデルと考えますが、いかがでしょうか。お考えをお聞かせください。
 次に、子どものアピアランスケアについてお伺いいたします。
 病気や障害のある子どもや、その家族を支援する一般社団法人「チャーミングケア」の方から、その取組の御紹介を受けました。
 抗がん剤の副作用による脱毛や乳がん患者の乳房摘出など、がん治療によって見た目が大きく変わってしまうことがあり、医療用ウイッグや乳房補正下着などの補正具の購入費用を助成する自治体が増えています。
 がん治療に伴う見た目の変化への対処(アピアランスケア)について一般社団法人チャーミングケアが調査をされ、その結果、2021年度に自治体の助成を申請した約7,000人のうち、18歳以下の子どもはわずか11人。この数の少なさは、助成があることがほとんど知られていないのが現状だと言われており、アピアランスケアに関して、実施自治体によっては内容や制度に関するまとまった情報がなく、家族に知られていないことが多いとも言われております。本府では、このアピアランスケア自体の取組がなされていない現状があり、改めて再確認するとともに取上げをさせていただきました。
 本府では、小児がんに係る医療費の助成制度や就学に関する制度は充実していただいておりますが、アピアランスケアについてはなされておりません。対象割合が少ないとの御判断もあるかもしれませんが、きめ細やかな制度の充実が京都で子育てをすることのセーフティーネットになることから、まずはアピアランスケアについて情報提供を行っている窓口の周知徹底をしていただき、アピアランスケアが必要な子どもへの対応をお願いしたいと思っております。子ども用ウイッグに関しましては高価なものであり、成長過程を考慮すると、再三変更せねばならず、大変御苦労いただくこととなります。ぜひ本府としての支援をお願いしたいと思いますが、お考えをお聞かせください。
 子育て支援の最後に、薬剤耐性菌より子どもを守る取組についてお伺いいたします。
 薬剤耐性菌による死亡者数は年100万人を上回り、既にエイズウイルスやマラリアよりも多くの命を奪っているとのことです。その5人に1人が5歳未満の子どもや赤ちゃんだとするデータもあり、2050年には年間1,000万人が耐性菌による感染症で死ぬおそれがあるとも推計されております。これまでにも幾つもの抗菌薬が開発されましたが、それらに耐性を持つ細菌も出現してきており、抗菌薬の乱用などが耐性の獲得に拍車をかけたとされております。細菌の耐性が追いついて使える薬がなくなり、手術や高度な医療ができなくなるおそれがあるのは途上国だけの問題ではなく、世界全体の問題であるとの認識が広まっており、さきの6月議会でも意見書が採択され、これから国におかれても早急にお取り組みされることを願っておりますが、本府として、子どもの医療を考えたとき、あらゆる観点で障害を取り除く努力をしていかねばなりません。
 同時に、薬に頼らない健康な体をつくる取組につきましても、積極的に事業展開をお願いしたいと思っております。
 親子健康手帳に記載されている「医療にかかる前に」は、生まれたばかりの命を守るための親の心得であり、また幼い子どもを育てる上での大切な気づきに触れられております。耐性菌の脅威が幼い命を奪うことのないように、コロナ禍では一定幼い子どもの罹患率は低い傾向にありましたが、耐性菌は反対に幼い子どもが危険にさらされてしまいます。いま一度の啓発と周知をせねばならないときと思っておりますが、いかがでしょうか。お考えをお聞かせください。
 大きな2つ目といたしまして、コロナ禍の経験を成長につなげる取組について質問をさせていただきます。
 この3年半近くにわたるコロナ禍は、私たちの経済活動をはじめ、日常生活、働き方、教育から文化、医療・福祉、地域社会に至るまであらゆる分野に及び、府民生活や事業活動を大きく変貌させることとなりました。長い、そして苦しい闘いでもありましたが、これまでとは違った視点での対応を求められたり、新たなニーズも生まれ、チャレンジをするという点においては重要な期間であったとも思っております。
 本府では、早い段階から、それぞれの支援が単発に終わらない、POSTコロナ社会を見据えた対策も数多く講じられ、一つに、コロナ禍が始まって半年余りの令和2年8月には、コロナ社会に対応した新たなビジネスモデルの構築に向けた調査や、具体的な実践に対する支援を行う補助金を創設されました。本府がこのような対応をいち早く取られたのは、様々な危機を幾度も経験し、そのたびに長年培ってきた地域力と先人の知恵と工夫によって難関を克服し、京都らしさを失わず、新たな時代にふさわしい産業社会を築いてきた経験が生かされたものだと思っております。
 その中でも私が光を当てたいのは、コロナ禍の経験を生かした京都の成長につながる取組として、食関連産業における将来的な展望も見据え、取り組まれたであろう中食分野での取組についてであります。
 コロナ禍以前から、単身・夫婦のみの世帯や高齢者世帯、女性就業者の増加などにより、店頭で調理済食品を購入して手軽に食事を済ませることが多くなり、テークアウトを主とした中食が売上げを伸ばしている傾向にはありましたが、コロナ禍では外食が控えられ、それが一気に中食にシフトすることとなりました。
 こうした流れを受け、本府では、京のブランド産品等を使用した「京の食」プレミアムフードの製造・販売に係る取組に対する支援や乾燥・冷凍といった長期保存できる中食開発への支援などにより、この間、商品構成の再構築や販売方法の多角化などを促進してこられ、新型コロナウイルス感染症が5類感染症となった今では外食需要も戻りつつあるものの、コロナ禍で定着した多様な働き方や根強い消費者ニーズにより、POSTコロナ社会においても中食需要は高い状況が続くのではないかと思っております。
 また、本府では、本年3月に策定された京都フードテック基本構想でも、中食分野の取組について、食を取り巻く社会情勢の急激な変化を踏まえた「未来の中食」の研究開発を行っていくなど、新たな取組も展開されようとしております。
 そこでお伺いいたします。
 まず、コロナ禍で実施してきた中食開発等への支援について、将来性を見据え、どのような展望を持って取り組まれてきたのか。コロナ禍での支援が今、芽吹いているのかどうか。
 また、京都フードテック基本構想の実現に向けて、中食分野の取組を今後どのような展開をしていかれるのか、併せてお聞かせください。
 最後に、福祉施策におけるICTの活用についてお伺いいたします。
 目覚ましく発展するICTの技術は、様々な分野で人の介入をせずとも大きな役割を担うようになってきました。介護の現場でもロボットがその役割の一端を担い、人手が不足するような現場の一助となっているのは大きな成果ではないかと思っております。
 本府でも、地域医療介護総合確保基金を活用し、介護施設等に対する介護ロボット機器の導入支援を実施し、移乗、移動、排泄、入浴等の支援や、夜間の見守り等に伴う介護職員の負担軽減等を図っていただいております。また、見守りセンサー等の導入に伴う通信環境の整備を支援し、介護ロボット機器から得られる情報を介護ソフトに連動させるなど、情報連携のネットワーク構築にも力を入れていただいており、導入施設では、業務の効率化を通して利用者とコミュニケーションの時間が増えるなど、ケアの質の向上にもつながっております。
 しかしながら、介護分野全体に目を向けてみますと、まだまだ現場の労働環境は厳しい状況にあり、とりわけケアマネジャーの業務は相変わらず多忙で、様々なマッチングに時間が割かれているのが現状です。
 令和5年3月31日付で厚生労働省からお示しのあった「『ケアプランデータ連携システム』の本格運用について」という介護保険最新情報を見ておりますと、本システムを利用することで、居宅介護支援事業所や居宅サービス事業所が居宅サービス計画書等をやり取りする負担は大幅に削減されるため、本システムは介護現場における生産性向上に資する強力なツールとなっており、居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所間の情報を共有することにより、業務の効率化や負担軽減が図れるのではないかと思っております。もちろん多くの事業所にお取組をいただかねばなりませんが、本府としてその辺りの説明を早急にかつ十分になされ、次の一歩としてお取り組みいただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。
 以上、御答弁よろしくお願い申し上げます。

◯議長(石田宗久君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 田中美貴子議員の御質問にお答えいたします。
 田中美貴子議員におかれましては、ただいまは会派を代表されまして今回の補正予算案に対しまして高い評価をいただき、厚く御礼を申し上げます。
 プレコンセプションケアの推進についてでございます。
 議員御案内のプレコンセプションケアは、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うよう促す取組であり、妊娠・出産の希望をかなえるために非常に重要な取組だと考えております。
 京都府におきましては、これまでから、子どもを持ちたいと希望される府民の皆様の願いに応えるため、不妊治療費や通院交通費の助成など、全国トップレベルの独自支援を行ってまいりました。
 京都府で不妊治療費の助成を受けた方の内訳を分析いたしますと、不妊治療の開始年齢は35歳以上の方が7割程度と多く、いわゆる妊活を開始されたときには妊娠率が相当程度低下し、不妊症のリスク発見も遅れている状況にあることが課題だと考えております。この背景としては「妊娠率が年齢とともに低下するといった医学的な知識が乏しい」「若年期からそうした知識を知った上で自身のライフデザインを考える機会がない」といった問題があるため、若年期からのプレコンセプションケアに取り組むことが重要でございます。
 具体的には、今後、教育委員会や助産師会等と連携して、妊娠に関する医学的な知識とライフデザイン教育を一体的に提供する教育プログラムを開発し、学齢期から社会人に至るまで切れ目のない京都発プレコンセプションケア教育(仮称)を推進してまいりたいと考えております。また、いつか子どもが欲しいと望んでおられる方が、不妊治療も含め、妊娠に向けた必要な行動を早期に起こすことができるように、企業と連携して、将来の妊娠に備えた検査やカウンセリングを推進する取組も新たに始めてまいりたいと考えております。
 今後とも、妊娠・出産を希望される方がその希望をかなえることができる環境の実現に向けて、より一層取組を進めてまいりたいと考えております。
 次に、新生児の遺棄や虐待死を防ぐための取組についてでございます。
 京都府児童相談所における令和4年度のゼロ歳児に関する虐待相談件数は192件となっており、前年度の136件と比較して約40%増加しております。
 新生児の遺棄や虐待死を防ぐためには、若年者の妊娠、多胎出産、産後鬱など、虐待につながるリスクの高い妊産婦を早期に把握し、妊娠期から出産・子育て期に至るまで切れ目のない支援につなげることが重要だと考えております。そのため京都府では、保健師や助産師による家庭訪問を通じた見守り支援などに市町村と一体となって取り組んでまいりました。また、子育てや親子関係の悩みを抱えておられる方が気軽に相談できる相談窓口として、SNSによる「親子のための相談LINE」を本年2月から開始しております。
 今後は、市町村のこども家庭センター設置を積極的にサポートし、京都府児童相談所との協働による全ての妊産婦、子育て世帯、子どもへ一体的な支援を行うことにより、新生児の遺棄や虐待死を防ぐ取組を一層強化してまいりたいと考えております。
 また、議員御紹介の親子健康手帳につきましては、父親と母親が共に出産・子育てに向き合い、社会全体で子育てをするという思いから、京都府オリジナルの母子健康手帳として本年4月から16市町村で活用いただいております。この手帳には、子育ての不安や苦労を一人で抱え込まないように、子育てや家事・育児について家族で話し合う際のヒントや地域の相談先などの情報を収録しております。
 子育て家庭を適切に支援につなげるには、全ての市町村で親子健康手帳を活用いただきますとともに、親子健康手帳に込めた思いを御家庭に伝えていただくことが重要であり、市町村向けの説明会の開催やホームページ等での府民向けの周知啓発を実施するなど、さらなる普及に向けて働きかけてまいりたいと考えております。
 次に、仕事と子育ての両立支援の新しいモデルについてでございます。
 子育て世代へのアンケートによると、子育てをしていて楽しいと思うこととして「子どもの成長が感じられること」「子どもと遊ぶこと」が上位に位置するように、子育て環境日本一の実現に向けては、子どもと親が共に遊び、共に学び、共に成長する機会をつくることが重要だと認識しております。
 議員御紹介の愛知県で創設された「ラーケーションの日」についても、そのような趣旨で取り組まれているものと承知しておりますが、子どもが休んだ期間の学習の遅れなどについて懸念される方もおられます。京都府といたしましては、議員御指摘の「仕事と子育ての両立支援の新しいモデル」を京都から始められるよう、例えばテレワークなど柔軟な働き方の推進や、年代を超えて子どもが交流する拠点づくりや教育機関と連携した親子の居場所づくりなどの取組について、ラーケーションも含め、内外の事例も参考にしつつ、検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、子どものアピアランスケアについてでございます。
 小児がんについては、患者の多くが治療を受ける過程で脱毛などの外形的変化を経験すること、子どもは外見の変化が友達との人間関係などに影響を及ぼしやすいことなどから、大人だけでなく、子どもにおいてもこうした外形的変化による精神的負担を軽減するアピアランスケアは重要だと考えております。
 京都府におきましては、京都府がん総合相談支援センターや、がん拠点病院等に設置されているがん相談支援センターがアピアランスケアについての相談窓口となっており、脱毛などの外見に関する相談に対し、ウイッグや補整具の説明、レンタルを実施している団体の紹介などを行っております。これらの窓口につきましては、京都府のホームページや、がん拠点病院などで患者に配布している「京都府がん情報ガイド」の冊子などで紹介しているところでございますが、さらに、がん検診に係る啓発イベントでの周知など、相談窓口が広く周知されるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 また、子どもへの対応につきましては、子ども用のウイッグの無償提供やレンタルなどを実施している企業や団体の紹介などを行っているところでございます。こうした仕組みの活用に当たっては、子どもの保護者など周囲の大人への周知が欠かせないため、引き続きアピアランスケアが必要な子どもや保護者に対し、情報提供についてしっかりと対応してまいりたいと考えております。
 なお、企業による無償提供には、年齢制限や支援数の上限があるなどの課題がございます。子どものアピアランスケアに対する支援制度につきましては、国に対して要望いたしますとともに、他府県の支援制度も参考に、研究をしてまいりたいと考えております。
 次に、薬剤耐性菌から子どもの命を守る取組についてでございます。
 薬剤耐性菌とは抗菌薬に対する抵抗力を持ってしまった細菌のことであり、薬剤耐性菌に感染すると増殖を抑えられなくなるため、これまでの治療方法では回復が難しくなり、感染症によっては重症化する可能性が高まるとされております。
 薬剤耐性菌の発生につきましては、処方された抗菌薬を途中で飲むのをやめるなど、不適切な抗菌薬の使用が原因とされており、対策としては抗菌薬の適正使用等に関する啓発や周知が重要だと考えております。そのため、国際的には世界保健機関(WHO)を中心に行動計画が採択され、国内におきましても薬剤耐性対策アクションプランを国が策定し、普及啓発と教育などを目的として、毎年11月を薬剤耐性対策推進月間に設定しております。
 京都府といたしましても、国の推進月間に合わせ、医師に対しては抗菌薬の適切な処方を、府民に対しては医師に処方された抗菌薬は最後まで飲み切っていただくことを啓発するため、医療機関や薬局でのポスター掲示やリーフレット配布、診療の手引書の周知などに取り組んでおります。
 子どもの命を守る取組についてですが、感染症に対して抵抗力の低い子どもが薬剤耐性菌に感染し、重篤化する危険性があることを踏まえますと、子どもを薬剤耐性菌から守るために、より一層の抗菌薬の適正使用等に関する啓発と周知をすることが必要だと考えております。そのため、子どもや保護者に向けてのSNSを活用した情報発信など、府民への啓発を工夫して行いますとともに、関係団体とも連携し、ポスターやリーフレットなどにより、周知をさらに進めてまいりたいと考えております。
 次に、中食分野の取組についてでございます。
 京都の食関連産業は、これまで、高いブランド力を生かし、高級志向の消費者をターゲットに外食や観光需要を伸ばしてまいりましたが、コロナ禍で大きな影響を受け、幅広いマーケットの開拓が課題として明らかになりました。
 コロナ禍で厳しい環境にある食関連産業を支援するため、本格的な京料理を家庭で楽しむ新たな機会の創出を目指し、生産者や京料理店などが連携して「京の御膳」のEC販売を実施いたしましたところ、6万8,000食を売り上げ、全国で好評を博しました。改めて京の食文化が持つ魅力と価値の高さが証明されますとともに、新たなマーケットとして中食分野の成長の可能性を実感いたしましたことから、京都のブランド力を生かした付加価値の高い中食の開発を強化することといたしました。
 こうした中食の開発には異業種が連携することが必要であり、令和3年度には京都食ビジネスプラットフォームを設置し、これまでに400以上の事業者の参画を得て、30を超える新商品開発に向けたプロジェクトが進むまでに発展をしてきております。
 本年3月に策定した京都フードテック基本構想は、京都の食文化や高い栽培技術と最先端技術を融合させることで持続性の高い食関連産業の育成を目指すものでございます。構想の実現に向けましては、中食などの新商品開発を促進する仕組みづくりが重要となることから、先月、産学公民の研究ネットワークとして「京都フードテック研究連絡会議」を設置し、研究成果と食関連事業者のニーズのマッチングをスタートしたところでございます。
 また、食に関する研究の高度化を図るため、1次産業の試験研究を担う農林水産技術センターの機能強化を図りますとともに、中食分野の研究開発や国内外の最先端企業の集積などの拠点整備を進めてまいりたいと考えております。特に、中食分野につきましては、京都府南部市場内に「オープンイノベーションラボ(仮称)」の整備を進め、高機能加工食品などの開発・商品化に重点的に取り組みたいと考えており、ラボの周知と活用促進に向けた取組に必要な予算案を今定例会に提案しているところでございます。
 今後とも、京都の強みとフードテックを融合させた「京都なら」ではの中食商品を開発し、食関連産業の成長産業化を図ってまいりたいと考えております。
 次に、福祉施策におけるICTの活用についてでございます。
 要介護認定者数の増加等に伴い、居宅介護支援事業所の1事業所当たり利用者数は増加傾向にあり、ケアプランの作成等を担うケアマネジャーの業務負担の軽減が求められております。
 議員御紹介のケアプランデータ連携システムにつきましては、居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所間で情報を共有することにより事業者間での居宅サービス計画のやり取りが効率化されるもので、国や京都府において普及を促進しているところでございます。京都府内では、令和5年8月時点で269か所の事業所がシステムを導入しているところでございますが、導入率は8.1%となっており、全国の導入率も4.4%と低い状況になっております。
 導入が進まない理由として、事業所からは「導入のメリットが分からない」「他事業所が導入するのを待ってから検討する」などの御意見をいただいております。このため京都府では、事業者向け説明会等を通じてシステムの活用方法やメリット等を周知し、システムの導入をさらに進めてまいりたいと考えております。また、システムを導入する事業所に対して介護報酬等のインセンティブを付与することなどにつきまして、国に要望してまいりたいと考えております。

◯議長(石田宗久君) 田中美貴子議員。
   〔田中美貴子君登壇〕

◯田中美貴子君 たくさんの子育て支援の充実についての質問をさせていただきまして、一つ一つ丁寧にお答えいただきまして、ありがとうございます。
 プレコンセプションケアなんですけれども、今、知事から本当にうれしいお言葉を頂戴いたしました。このプレコンセプションケアをベースとして学齢期からの京都発の教育プログラムを実施いただくということでございまして、教育のほうでもぜひともお取組をしていただかなければならないと思っております。文科省では「生命(いのち)の安全教育」を推進されようとしておられまして、府としてもお取組をいただくことになろうかと思っておりますが、それにはやはり従来から申し上げております包括的性教育というものをしっかりとお取り組みいただきたいなと思っております。子どもが自分を大切に、他人も大切に思う、そういったしっかりとしたお取組をぜひともお願いしたいと思っております。
 そして、不妊治療なんですけれども、新たな一歩、本当に今大切な不妊治療ということをしっかりとお取り組みいただきたいなと思っております。少子化対策というのは非常に多岐からいろんなことをやらなければならない、複層的にやっていくというふうなことで、少しでも子どもを産んでよかったと思えるような人たち、そして子どもを産んでよかったと思える人たちがモデルとなって多くのこれからの子どもたちを支援していける、そのような取組になればいいなと、そのように思っておりますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 また、ケアプランデータ連携システムの取組ですけれども、国のほうにもいろいろと御進言いただきたいと思っております。こういった取組をしっかりと実施いただくことが本当に大きなつながりになっていくと思っておりますので、よろしくお願いしたいなと思っております。
 最後になりましたが、私たち府民クラブ京都府議会議員団は、京都府民の皆様が安心・安全を実感し、全ての人が生き生きと暮らせる共生社会の実現、京都の未来を担う子どもたちにすばらしい京都を引き継いでいけるよう、西脇知事とともに全力で邁進することをお誓い申し上げまして、私の代表質問とさせていただきます。
 御清聴賜りまして、ありがとうございました。(拍手)