1 京都府総合計画を実現するための実効性ある方策について

2 新条例の制定と少子化対策の更なる推進について

3 多様化するニーズに対応した府立高校づくりと留学支援について

4 サイバー犯罪について

5 その他

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◯岡本和徳君 府民クラブ京都府議会議員団の岡本和徳です。会派を代表して質問をさせていただきますので、積極的な答弁をよろしくお願いいたします。
 まず、今回の補正予算は、長期化する物価高騰などにより深刻な影響を受けている府民生活や事業活動を守る施策を推進するとともに、コロナの第5類移行後も府民の安心・安全を守るために必要な対策を実施するものとなっております。
 また、14か月予算で計上した対策に加え、子どもたちの笑顔につながる取組への支援などの「あたたかい京都づくり」に向けた施策も盛り込むなど、現下の状況を踏まえた切れ目ない施策を実施する内容となっており、会派を代表して高く評価させていただきます。
 西脇府政による京都府の総合計画は、少子高齢化、人口減少時代における課題、自然災害の頻発化による安心・安全の確保、AI、IoTなどの先端技術を活用した社会の創造など、現代における社会課題を解決し、府民の生活の質を向上させることで2040年に「一人ひとりの夢や希望が全ての地域で実現できる京都府」を目指して、令和元年に策定されました。その後、新型コロナウイルス感染症の拡大で府民の生活、日常、そして社会そのものが大きく変化し、さらにはロシアがウクライナに侵攻したことなどによって世界的な経済システムにも大きな変化をもたらし、原油価格をはじめ食物などの物価が高騰しているほか、食物、半導体、そして多くの製品の供給もこれまでとは異なる形を見せており、日本を取り巻く国際環境、安全保障も不安定な状況となりました。
 こうした状況の中、府民が安心して豊かに暮らし夢を実現していくために、総合計画の計画期間満了を待たず、前倒しで総合計画を改定されました。この新総合計画では、福祉、子育て、産業、文化など「8つのビジョンと基盤整備」が示されております。この8つのビジョンの中には、それぞれの重点分野が示されており、到達目標が設定されています。
 到達目標として、例えば介護人材の確保数を2021年度は2,685人だったものを今年度中に7,500人にするという短期的な目標に加え、合計特殊出生率を2040年には全国平均並みとなることを目指すという長期的な目標もあります。さらには、人口減少が進む丹後、中丹、南丹及び相楽東部地域を含む京都府への移住者数を2022年から2026年度の5年間で7,000人とするという目標が示されるなど、一つ一つを語ることはできませんが、8つのビジョンの中で多くの具体的な到達目標が示されています。
 これら多くの到達目標と併せて分野別の基本施策と数値目標も示されており、今年度の当初予算をはじめ、本定例会においても、これらの目標を達成するための予算が提案されていることと思います。
 そして、これらの目標を達成していくためには多くの課題が存在しているものと考えます。その一つに、厳しい財政状況であることにより思い切った予算を編成することが困難であること、また本府は海・山・都市部を持ち、南北に長い地理的特性を持っていること、さらには政令指定都市である京都市をはじめとする多様な自治体が存在し、各自治体との調整・連携など克服すべき課題は山積しています。
 また、御承知のとおり、人口減少、少子高齢化は待ったなしの状況で、従来からの構造的な課題も深刻さを増しています。この総合計画の将来像を実現していただくことが、私たち府民の生活をより安心なものにし、より豊かにし、夢に向かって歩ませてくれるものであると信じております。だからこそ、多くの課題を克服し、それらの目標を達成していただかなければなりません。
 そこで知事にお伺いいたします。
 総合計画を実現し、府民の生活をよりよいものにするために、計画に掲げるこれらの目標達成に向け、どのように方策の実効性を持って進めていくのでしょうか。また、限られた財源での施策の展開、地理的課題、自治体との連携などについてはどのように克服していくのか、お聞かせください。
 次に、新条例の制定と少子化対策のさらなる推進についてお伺いいたします。
 この少子化問題は、我が国にとって国家的な課題となっております。本府におけます少子化も例外なく進んでおり、京都府の最新の合計特殊出生率は1.18であり、全国40位という数字が発表されました。また、出生数そのものも減少傾向が続いており、第2次ベビーブーム世代の私が生まれたころの昭和49年における京都府の出生数は、年間約4万人の子どもたちが誕生していました。一方で、令和4年に京都府で生まれた子どもの数は1万5,068人となっております。
 また、国立社会保障・人口問題研究所の資料によりますと、50歳まで一度も結婚をしたことがない人の割合は男性で約28%、女性で約18%となっております。これは、約30年前の1990年と比べて、男性で約5倍、女性で約4倍となっております。さらに、京都府における25歳から39歳の女性の未婚率は41%となっており、女性の平均初婚年齢は30歳となっております。一方で、夫婦の持つ平均の子どもの数は1.94と、未婚率と比べ30年前から大きくは変わっておりません。
 このような状況から、未婚率の上昇を抑え、初婚年齢も下がるような取組が必要かと考えます。すなわち、結婚をしやすい社会をつくっていくことが重要かと考えます。子どもを持たない主な理由の1位、2位である経済的不安と年齢的・身体的不安の解消のためにも、正規雇用を増やし、賃金を高くしていくことは重要です。また、仕事と私生活を両立させるためのタイムパフォーマンスを向上させることも重要です。女性だけではなく、男性が不妊治療を受けることを促進すること、さらには適切な量の喫煙や飲酒、健康維持に対する健康意識を強く持ってもらうための取組も必要で、それらの取組は20代などの若いときから始めることが望ましいと言われております。
 このような状況を背景に、本府ではこれまでに2007年に京都府子育て支援条例を制定し、2015年京都府少子化対策条例を制定してまいりました。これらは全て、少子化を改善させるためのものであり、この条例や令和元年に策定した「京都府子育て環境日本一推進戦略」を基に、多くの施策を展開していただいてまいりました。しかしながら、大きな成果が出てこず、少子化はますます深刻化する状況となっております。
 こうした中、本府では、先ほど述べました子育て支援条例と少子化対策条例を一本化する形で、仮称ではありますけれども、京都府子育て環境日本一推進条例の今年度の制定を目指していただいているとお伺いしておりますが、子育て環境日本一推進戦略も、本年の秋頃までに改定すると聞いております。
 新しい条例の論点として、出会い・結婚の希望実現、保育・教育の費用負担軽減、住宅費軽減、自由度の高い働き方などがあると伺っており、全国的にも深刻化が叫ばれる少子化の打開に向けた有効な手だてとなるものと期待しますが、一方で、現行の戦略の中にも目指す社会像が示され、重点戦略として、若者の結婚や子育てに対する意識・行動の変革、保育料の無償化、住宅取得にかかる費用助成、多様な働き方を応援する企業環境の整備などが記載されております。両者に同じような文言が見受けられるところです。
 そこでお伺いいたします。
 まず、戦略を改定することにどのような意義があるのでしょうか、お答えください。また、新しい条例と改定予定の戦略との違いについてお答えください。
 さらには、この戦略の改定に当たって、今後どのような過程で改定が進んでいくのか、タイムスケジュールも含めてお聞かせください。
 まずは、ここまでよろしくお願いします。

◯議長(石田宗久君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 岡本議員の御質問にお答えいたします。
 岡本議員におかれましては、ただいまは会派を代表されまして、今回の補正予算案に対して高い評価をいただき、厚く御礼を申し上げます。
 京都府総合計画に掲げた、将来像の実現に向けた実効性ある方策についてでございます。
 新たな総合計画のスタートとなる令和5年度においては、誰もが未来に夢や希望を持てる「あたかい京都づくり」を府民の皆様に実感していただく第一歩として、「安心」「温もり」「ゆめ実現」の3つの視点に基づく施策を力強く発進させるために必要となる予算を編成したところでございます。
 併せまして、政策立案部門の総合調整機能の強化を図るため、環境部門と大学部門を政策企画部に統合した総合政策環境部の創設、文化力を生かした府民生活の向上を図る観点での文化生活部の創設や、上下水道業務の一本化による建設交通部の強化など、組織体制の見直しを図ったところでございます。
 一方で、行政課題が複雑・多様化している中、総合計画を着実に進めるためには、行政だけでなく府民の皆様との信頼関係を土台に地域や企業、関係団体の皆様と一体となって取り組むことが重要であります。そのため、府民目線に立った具体的な目標を定め、その実現に向けた連携体制を構築すること、現場の当事者等との対話の積み重ねにより多角的な視点で施策を立案すること、施策実施後も目標の達成状況を不断に検証し、有識者等の意見も踏まえた施策の進化を図ることなどを通じて、総合計画の将来像の実現に向けた施策の実効性を高めてまいりたいと考えております。
 次に、財源や市町村との連携などの課題についてでございます。財源確保に当たっては、行財政改革プランに基づき、府民ニーズに即した事業の見直しなど業務の効率化を図りますとともに、新たな歳入確保策として、本定例会に提案しておりますふるさと納税について本年度から取り組むこととしております。
 また、京都府には、様々な特色のある市町村が存在しておりますが、少子高齢化や人口減少の進展などに伴い、個々の市町村だけで地域の魅力と活力の創造に取り組むことには限界があると考えております。そのため、府と市町村が相互に補完・連携し機動的に対応いたしますとともに、小規模市町村が単独で取り組むことが難しい課題につきましては、府が市町村を積極的に支援するほか、市町村単位を超えた広域連携に取り組むため、新たに「8つの広域連携プロジェクト」を推進するなど、市町村と連携した施策を展開してまいりたいと考えております。
 今後も、私を先頭に府職員自らがこれまで以上に府内各地に足を運び、地域ごとの最新の情勢や課題などを肌で感じ、施策の立案・実行につなげていくことで、府民や市町村の皆様とともに総合計画に掲げる将来像の実現に努めてまいりたいと考えております。
 次に、子育て環境日本一推進戦略についてでございます。
 京都府ではこれまで、「子育て環境日本一」を府政の最重要課題として位置づけ取組を進めており、令和元年には京都府子育て環境日本一推進戦略を策定いたしました。しかし、コロナ禍により子育て世代の孤立化が課題となるほか、昨年の出生数が初めて80万人を下回るなど、我が国の構造的課題である少子化はさらに加速化している状況にあり、今年に入り、国においても「次元の異なる少子化対策」を表明されました。
 こうした中、京都府総合計画においては、社会と子どもを育てる京都の実現に向け、「子育て環境日本一」の取組を進化させていくこととしております。これは、社会全体が子育ての主体として負担や苦労、喜びを分かち合うという、将来の到達点を掲げたものでございます。このような到達点を目指すためには、「子育て環境日本一」の取組を戦略的かつ計画的に進めていくとともに、より多様な主体を巻き込み、相互に連携する必要があることから、子育て環境日本一推進戦略を改定したいと考えております。
 子育て環境日本一推進条例、仮称でございますが、と戦略の関係についてでございます。
 改定する戦略には、出会い・結婚・妊娠・出産への対応といった少子化対策の視点などを踏まえた今後の取組を幅広く盛り込みたいと考えております。そして、条例につきましては、「子育て環境日本一」の理念を広く府民の皆様と共有いたしますとともに、社会を構成する各主体の役割や責務など、条例により定義しないと実行できないような規定などを盛り込むことによりまして、戦略を前に進めるためのエンジンとなるよう検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、戦略改定の進め方についてでございます。
 子育て環境をめぐる状況が急速に変化する中においては、最新の知見や子育て支援の当事者の声を踏まえた上で戦略を改定する必要があることを考えまして、現在、私自身が様々な分野の方々から直接御意見を伺っているところであり、「子育ては大変という機運を変えるべき」「少子化には、若者の所得の低下や女性の生き方の選択肢の制限など様々な要因がある」などの御意見をいただいております。
 引き続き、有識者や幅広い府民の方々の御意見を踏まえながら、私自身をトップとする子育て環境日本一推進本部におきまして、戦略に盛り込む取組の検討を進め、府議会での御議論を賜りながら、今年秋頃までに戦略を改定したいと考えております。

◯議長(石田宗久君) 岡本和徳議員。
   〔岡本和徳君登壇〕

◯岡本和徳君 御答弁どうもありがとうございます。
 まず、総合計画についてでありますけれども、総合計画については組織の見直し等で進めていただくということですけれども、この8つのビジョン、それと基盤整備、地域振興計画、これが計画の全てだというふうに思っておりますし、この計画を実現していただくことこそが京都の未来をつくっていくという、まさに設計図のようなものであるというふうに思っております。だからこそ、今お話をいただきましたように、しっかりと実現に向けて取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 知事が、一番初めに当選をされて初めて登庁されたときの3つのお話があったと思いますけれども、徹底的な現場主義ということ、それから先例にとらわれないということ、さらには連携にこだわるというお話がございました。これは私も非常に印象的に残っておりまして、先例にとらわれないというのは、付け加えますと果敢に挑戦をしてほしい、伸び伸びと大胆に仕事をしてほしいとこれは京都府の職員の皆さんに向かってお話をされたことですけれども、連携にこだわるという部分については、縦割り排除は当然だというふうにお話をされておられました。
 この後、条例のお話もしますけれども、少子化というのも待ったなしの状況であって、まさにもう一度、先例にとらわれない、果敢に挑戦する、伸び伸びと大胆に仕事をする、こういうような思いをぜひまた職員の皆さんに再徹底をしていただいて、今あるような大きな課題に対して必ず実効性を持って実現をしていただきたいというふうに思っております。
 それから、条例のほうにつきましては、これは私も以前からお話ししていますように、個人とか企業とか組織の意識改変というのが非常に重要だと思っております。それに関していいますと、車の運転免許の子育て優先レーンとか、ああいった、お金はかからなくて機運を醸成するような取組というのは非常に重要だと思っておりますし、例えば信号のないところでのお子さん連れの方への横断歩道の優先とか、こういったことを子育て環境を育てる中で充実させていくことが、意識改革の初めのスタートになるのではないかというふうに思いますので、この点も強く進めていただきたいというふうに思っております。
 それと、知事のお話にありました「子育ては大変だ、子育てはしんどい」というような思いが現代社会ではあるようですけれども、私の知る限り、例えば江戸時代から明治の初めの頃にアメリカやイギリスからやってこられたような方々の中では、世界中で日本ほど子どもが親切に扱われるところはない、そして、これほど子どもをかわいがる人々を見たことがないと。これはイギリスのイザベラ・バードという方、アメリカのエドワード・モースという方々がお話をされてますけども、当時は、世界的に見て日本というのは子どもを非常にかわいがっている国だというふうに見られていたということです。いつからか、そういった感じではなくて、子育てがしんどいというように思われている。この状況を変えていく必要があるかというふうに思いますので、意識改革、ぜひ進めていただきたいというふうに思います。
 次の質問に入ります。次に、教育長に質問をさせていただきます。
 多様化する子どもたち、社会のニーズに対応した府立高校づくりと留学支援について、お伺いします。
 私は、質問の機会をいただくごとにできるだけ教育に関する質問を取り上げさせていただいております。教育は国家百年の大計といいます。人材こそが宝であり、変革に10年、20年かかったとしても、今から手をつけて将来の京都、日本を担っていくような人材を確実に育てることが肝要だと考えています。
 最近は、府民の皆さんから教育に変革をもたらすことに対する期待を大きく感じるようになりました。中学校を卒業し普通科高校へ進学し、大学へ進学した後は会社に就職をする、ほとんどの子どもたちはこのようなルートを歩むという現状で、子どもたちのニーズに応える多様性のある教育を施すことが望まれています。
 また、今後の生徒数の推移に目を向けると、府内の中学校の卒業生数は、特に丹後や中丹、口丹地域では急激な減少が見込まれております。将来の公立中学校における3年生の数の推計値を見てみますと、令和4年度と比べて令和16年度では全体で78.1%まで減少し、京都市・乙訓で82.2%、山城で73.1%、中丹で73.3%、口丹で70.1%、丹後では74.7%となることが見込まれています。今後は少子化の影響により、30年前と同じ学校数の規模を維持していくことは困難となることが予想されます。
 そこでお伺いいたします。
 京都府の場合は、地理的条件等によっても少子化のスピードが随分異なるかと思いますが、人口減少やデジタル社会の進展、グローバル化などの児童生徒を取り巻く環境も刻々と変化する中、教育全般、そして公教育の意義や役割についてどのように捉えているのか、また、現代の京都における教育の課題について、教育長の御所見をお聞かせください。
 また、高校においても、中学校卒業者の生徒数の減少と進路状況の変化に伴って小規模化が一層進化する中において、不登校経験がある生徒や特別な教育支援を必要とする生徒が増加傾向にあり、病気療養中の生徒、ヤングケアラー、児童虐待、貧困の問題のほか、積極的に起業に取り組みたい生徒、海外留学を経験したい生徒、プログラミングなどIT技術を専門的に学びたい生徒など、子どもたちのニーズのほか、子どもたちを取り巻く環境・状況も多様化、複雑化し、それに対応する教育の多様性も一層求められる時代となっております。
 京都府教育委員会が策定した「府立高校の在り方ビジョン」では、府立高校の果たすべき役割として、公教育の場として教育の機会を保障するとともに、選択肢の多様性を確保すること、全ての生徒が夢や希望を持ち、未来に向かって生き生きと学ぶことができる高校を目指すことがうたわれています。多様性が尊重される社会になり、学校現場も、画一的な教育ではない、個々を尊重する教育へとシフトするべきだと感じております。
 そこでお伺いいたします。
 多様化する教育に柔軟に対応していくためにも、生徒のニーズや社会の変化に対応した学びを進め、「府立高校の在り方ビジョン」を早急に具現化していく必要があります。その具現化に向けて、昨年11月に設置された「魅力ある府立高校づくり懇話会」では、今年の3月まで6回にわたり外部有識者会議が開催されたと伺っておりますが、全体を通して委員からどのような意見や示唆があったのでしょうか。また、今後の魅力ある府立高校づくりにどのように反映させるおつもりなのか、教育長の御所見をお聞かせください。
 次に、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行後の留学支援について、お伺いいたします。
 まずは、新型コロナウイルス感染症の影響下にあっても児童生徒の学びを止めることなく、学習機会の確保・充実に御尽力いただいていることに対し、改めて感謝を申し上げます。本年5月8日以降、学校における教育活動に大きな影響を与えてきた新型コロナウイルス感染症が、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律上の5類感染症に移行されたことに伴い、今後は、コロナ禍を通じて再認識された学校の役割も踏まえ、これまで制限されてきた教育活動については積極的に実施していくことが求められるのではないでしょうか。
 一方で、コロナ禍においては、GIGAスクール構想によって1人1台端末の整備が一気に進むなど、児童生徒の教育環境におけるデジタル化が大きく進展する中で、デジタル技術のよさを生かした多様な教育活動が新たな取組として実践されてきたことにも目を向ける必要があります。
 例えば高校生の留学支援事業については、海外への留学が困難となっている状況を踏まえ、対面形式とオンライン形式のハイブリッドによる異文化理解と語学の研修が府内で実施されました。この府立高校ハイブリッド型英語研修は、令和4年度教育委員会の事務の点検・評価によると、令和3年度実績として22校から194名の生徒が参加しており、コロナ禍での英語力向上に向けた新しい留学支援の形であったと評価しております。
 私は本年3月の予算特別委員会総括質疑において、今後のグローバル人材の育成について質問させていただき、教育長からは、コロナ禍によりやむを得ず中止していた高校生の留学支援事業については、令和5年度は全て再開するとの答弁がありました。
 令和5年度までは、エディンバラ語学研修やオーストラリア語学研修など、多くの府立高校生が海外の語学研修に参加しておりましたので、留学支援事業の再開を待ちわびた生徒もたくさんいたことでしょう。今後も、国際社会で活躍しようとする生徒の意欲を高められるような取組を充実させ、そうした積極的な取組が10年後、20年後の未来に京都の発展につなげていけるように御尽力いただきたいと思っております。
 そこでお伺いいたします。
 留学支援事業再開についての学校の受け止めや生徒の反応はいかがでしょうか。さらには、今年度の事業再開を踏まえ、次年度以降どのように取組を充実させていく予定なのか、教育長の御所見をお聞かせください。
 また、指導する教員も世代交代が進む中、各校の英語教育を推進しつつ若手教員等の助言者となる人材の育成も急務となってまいります。令和5年度と6年度の2年間で、全府立高校を対象にした英語教育推進教員育成研修が新たに実施されると伺っておりますが、今後どのように取り組み、教員の資質向上を図っていくのか、教育長の御所見をお聞かせください。
 次に、府警本部長に質問させていただきます。
 御承知のように、近年の技術革新は第5次産業革命とも言われ、私たちの生活を一変するような技術が誕生してきております。このような技術革新は、私たちの生活を便利にさせる一方で、その技術を悪用し犯罪やテロなどに使われることとなっており、私たちの生活を大きく脅かす存在になっております。
 特にサイバー空間における脅威は極めて深刻な情勢となっており、私たちの見えないところで幼い子どもたち、若い人たち、高齢の人たちも容易に犯罪に巻き込まれ、様々な新たな手法による事件が発生し、国家的な犯罪やテロへと発展させる可能性も包含しています。
 昨年5月、京都市中京区の高級腕時計買取販売店から多数の腕時計が奪われた後、盗まれた腕時計を売却したとして、男女6人が逮捕されるという事件がありました。この犯人たちは、SNS上の闇バイトの募集に応じて、テレグラムと呼ばれる匿名性の高い通信アプリを使って指示を受け腕時計を売却しており、自分が売った腕時計を盗まれたものであるということを知らなかったと主張していたと聞いております。今年5月には、東京銀座の高級腕時計店に覆面をつけた男が押し入って、白昼堂々バールでショーケースを壊し約3億円相当の商品を奪った後、車で逃走し、近くのマンションなどに逃げ込んだところを取り押さえられるという事件が発生しました。この犯人たちの年齢は16歳から19歳であるとのことでした。
 これらの事件は無謀かつ稚拙としか言えないような事件ですが、このような事件の背景には、それぞれの人物が犯行に至る前、もしくは闇バイトに応募する際に、例えば家族構成や自宅の住所を知られてしまっていたり、学校に通報すると脅されたり、個人情報が握られてしまったり、脅されて断ることもできないような状態に持ち込まれてしまっている可能性もあるとお伺いしております。
 また、京都府内においても、幼稚園、保育園、学校などに対して爆破予告などのメールが送られ、地域に脅威をもたらす事案も頻発しております。メール送信など、単純に見え、今時すぐに犯人が見つかりそうなものでも、最先端の技術が使われており、犯人を特定することも困難であるとお伺いしております。
 さらには、インターネットバンキングを利用し、不正にアクセスすることで送金させるような犯罪、インターネット等を介して不正に入手したクレジットカード情報や口座情報をアプリのアカウント情報にひもづけることにより、カード払い、引き落としが容易となる中で、それらを可能にする技術や情報を悪用する形で金品を盗み取ろうとする事犯が増加傾向にあると聞いております。
 これらに関連して、昨今、サイバー空間における脅威が日々深刻化する中、これら事象に的確に対応していくため京都府警察では、今年の春、捜査解析能力の高度化やサイバー犯罪からの被害防止対策等を一元的に進めるために、サイバーセンターを新設されたとお伺いしております。
 そこでお伺いします。
 サイバー犯罪の京都における現状をまずお伝えください。また、犯罪者グループに個人情報等を握られ犯罪に手を染めてしまうことがないような防止対策も必要かと考えますので、その点についても、府警の取組をお聞かせください。
 さらには、サイバー犯罪の被害を受けないようにするための被害防止対策のほか、京都府警のサイバー事案への対処能力の向上のための人材育成、捜査力の強化についてどのように進めていくおつもりなのか、お聞かせください。
 ここまでよろしくお願いします。

◯議長(石田宗久君) 前川教育長。
   〔教育長前川明範君登壇〕

◯教育長(前川明範君) 岡本議員の御質問にお答えいたします。教育の意義、役割についてでございます。
 社会が大きく変化する中で、これからの社会を担う子どもたちに変化を前向きに捉えて主体的に行動し、豊かさや幸せとは何かをしっかり考え、進むべき道を切り開く力を育成していくことが教育の役割であると考えております。特に公教育においては、子どもたち一人一人を大切にし、誰一人取り残すことなく個性や能力を最大限に伸ばすことで、グローバルな視野を持ち、社会を牽引していく人材や地域で活躍する人材など、この国の未来をつくる大切な担い手として育んでいく必要があります。
 そのような中、本府では、少子化に伴う生徒数の減少、不登校児童生徒数の増加、子どもたちのニーズの多様化、複雑化などが課題だと考えております。とりわけ高校におきましては、少子化により学校規模が縮小する中、生徒が環境や従来の価値観に左右されることなく将来の夢と希望を持ち学ぶことができるよう、各高校の魅力を高めるとともに、生徒がそれぞれの目的に応じて学校や学科を選択し、学びを深めることができる環境づくりが喫緊の課題だと考えております。
 次に、魅力ある府立高校づくりについてでございます。
 議員御紹介の懇話会では、生徒のニーズに対応する教育環境や各課程・学科の役割、地域の実情等を踏まえた府立高校の在り方などの観点から、多くの子どもたちが入学する全日制普通科においてはさらなる特色化の推進やその内容を分かりやすく発信していくことの必要性について、地域に果たすべき社会的役割を踏まえた学校づくりや、教育の質を確保するためには一定の学校規模が必要であること、北部と南部とでは子どもたちを取り巻く環境が大きく異なることを踏まえる必要があることなど、非常に重要な観点から御意見等をいただきました。
 こうした御意見等に加え、府議会や府民の皆様の御意見をしっかりとお聞きしながら、学校や学科の配置など、新しい時代に応じた教育制度に関わる改革を実行していくことが必要だと考えております。
 府教育委員会といたしましては、今後進めていく改革の基本的な方針等を取りまとめる基本計画を今年度中に策定した上で、その計画を具体的に実行していくため、地域別の実施計画を段階的に策定してまいります。
 次に、高校生の留学支援事業についてでございます。
 本事業は、コロナ禍のときから再開を待ち望む声がたくさん届いておりましたが、今年度に短期や中期の全留学事業を再開したところ、全てで定員を超える応募があり、特にオーストラリア語学研修は過去最多となるなど、改めて本事業に対する期待の大きさを実感したところです。また、応募理由としては、単に語学力を伸ばすだけではなく、海外の文化や歴史を学び、異なる価値観に触れることで人間的な成長につなげたいというものが多く、本事業を将来を見据え主体的かつ意欲的に活用してくれていることがうかがえます。
 今後は、こうした状況も踏まえ、様々なニーズを持つ生徒一人一人の夢の実現を後押しするような新たな留学支援の枠組みについても検討するなど、グローバルな視点を持って地域や国際社会に貢献できる人材の育成に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、英語科教員の資質向上についてでございます。
 議員御紹介のとおり、今年度から全府立高校を対象に、生徒が自ら進んで英語でコミュニケーションを図りたいと思える授業づくりの理論と実践を系統的に学ぶ研修を実施いたします。具体的には、まず、2年間の研修を通じて各校の中核を担う英語科教員のリーダーを育成することとしており、既にこの研修に参加した教員からは「授業づくりに関する新たな視点を獲得できた」との声も聞いております。さらに、3年目以降は、リーダーを中心に各学校の優れた取組を他校でも取り入れるなど、グローバルな視点を養い、より魅力的で実践的な授業づくりができるさらなる教員の資質向上を進めてまいります。
 府教育委員会といたしましては、公教育が果たすべき役割を踏まえながら府立高校における魅力的な学びを推し進めるとともに、一人一人の子どもたちが未来に夢と希望を持って学び続けられるよう全力で取り組んでまいりたいと考えております。

◯議長(石田宗久君) 白井警察本部長。
   〔警察本部長白井利明君登壇〕

◯警察本部長(白井利明君) 岡本議員の御質問にお答えいたします。
 老若男女を問わず幅広い世代にスマートフォンが普及するなど、新しい生活様式の定着により、サイバー空間は府民の生活に必要不可欠な重要かつ公共性の高い場所となっております。そして、このような社会の実情を反映して、サイバー空間をはじめ新たな技術やサービスが犯罪に多用される現状が生じております。
 府内におけるサイバー犯罪の現状ですが、本年4月末現在、サイバー犯罪に係る相談受理件数は1,865件で、5年前から倍増し、詐欺やクレジットカード不正利用、不正アクセスに関するものが全体の約7割を占めております。府警察においては、こうした相談等を端緒に、昨年中、電子決済を悪用した詐欺や犯罪の温床となるSNSアカウントの不正取得事件などを検挙しているところであります。
 被害防止対策については、京都府警察ホームページやSNSなどを活用し、サイバー犯罪の手口や被害防止策を周知しているほか、大学や企業等の有識者からなるネット安心アドバイザーが中心となって、ネットトラブルの疑似体験講座を行うなど、情報モラル等の向上に取り組んでおります。また、企業の情報セキュリティー向上支援のために設立したネットワークを軸に、府内の中小企業や医療機関等を対象に情報発信やセミナーを開催するなどの支援を行っております。
 一方、人材育成につきましては、捜査員をIT企業等に派遣するなどして、高度かつ専門的な知識を有するサイバー人材の育成に努めるとともに、高度な解析資機材を活用し、専門捜査員が初動捜査の支援や現場解析、職員に対する助言や指導を行うなど、捜査力の強化を図っております。
 府警察では、今後とも、府民が安心してサイバー空間を利用できるよう、産学公連携による効果的な対策を推進するとともに、専門人材の育成等を通じて警察全体の対処能力強化に努めてまいりたいと考えております。

◯議長(石田宗久君) 岡本和徳議員。
   〔岡本和徳君登壇〕

◯岡本和徳君 御答弁どうもありがとうございました。
 まず教育に関しましてですけれども、京都の場合は私学助成を全国でもトップクラスにしていただいているおかげで、多くの子たちが私学にも進学をできるようになっておりますけれども、反対に府立高校には割合でいうと6対4、4割が府立高校、公立の学校に通っているという状況だったかというふうに思います。予算も限られる中で府立高校のハード整備、ソフト整備を進めていただいていることは本当にありがたく思っておりますけれども、教育長の答弁にも、公教育の役割として、変化を捉えて前向きに歩んでいく子どもたちを育て、そして個性や能力を最大限発揮していける、グローバルに活躍、地域で活躍できる子どもをしっかりと育てたいという言葉がありましたので、その言葉のとおりしっかりと前に進めていただきたいというふうに思っております。
 先ほどお伝えしたように、先例にとらわれず果敢に挑戦、伸び伸びと大胆に仕事をという言葉が知事からはありましたけれども、教育というのは挑戦なんだというふうに私は思っております。なかなか教育の現場というのは変わらないというのが私の実感ですけれども、ぜひ、そういった意味でも果敢に挑戦をしていただいて、教育委員会の皆さんにも伸び伸びと大胆に仕事をしていただいて、子どもたちの未来を切り開いていただきたいというふうに思っております。
 以前からお伝えしてます普通科の改革、職業学科の改革、さらには今日はお話ししませんでしたけれどもバカロレアの導入とかこういったことについても、前向きな答弁はいただいておりますので、確実に進めていただけるようにお願いさせていただきたいというふうに思っております。
 さらには、オーストラリアの留学の応募が過去最多だということでお伺いもしましたので、こうした希望についてもしっかりと対応できるように、その受入れの枠も増やしていくべきだというふうに思っております。
 時間がなくなりましたので、質問をここまでとさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)