1 コロナ禍を踏まえた今後の観光振興について
2 精神障がい者及びその家族に対する支援強化について
3 その他

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◯平井委員 府民クラブ府議会議員団の平井斉己でございます。
 討論に入ります前に一言申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症により無念にもお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、医療・福祉関係者の皆様をはじめ、この長きにわたり、昼夜分かたず御尽力いただいている全ての皆様に心から感謝申し上げます。
 それでは、質問に入ります。
 最初に、京都の観光振興について質問いたします。
 新型コロナウイルス感染症は、2020年1月に日本国内で初めての感染が確認されて以降、これまで約3年弱にわたり、医療提供体制の強化やワクチン接種の促進、飲食店などへの営業時間短縮要請など、様々な対策が講じられてきましたが、この間、あらゆる産業が大きな影響を受けました。コロナ対策は主に人と人の接触や移動の制限を伴うことから、観光や飲食業といった京都府が特徴とする経済分野での影響が大きく、特に観光は移動を伴うものであり、度重なる緊急事態宣言やまん延防止措置などで移動の自粛が求められる中、最も深刻な影響を受けてきた産業分野と言っても過言ではないと思います。
 例えば全国の状況を見ると、2020年は、延べ宿泊客数が前年度比44%減、訪日外国人数が前年度比87%減と、大変厳しい数字となっており、京都府の状況を見ても、2020年は延べ宿泊客数が前年度比55%減であり、外国人宿泊者数は88%減となりました。京都は世界有数の観光都市を有し、観光は主要産業とも言えることから、その影響はひときわ大きかったのではないかとも思います。
 また、こういった統計的な数字の落ち込みに加えて、コロナ禍ではいわゆる近隣観光やアウトドアの観光が好まれるなど、経営者にとってはコロナ前と異なるビジネスモデルが求められる状況とも伺っています。
 さらには、観光産業の従事者はもともと非正規雇用の方の割合が高いと言われており、度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の適用により離職した非正規の従業員が観光が再開されてもなかなか戻らず、深刻な人材不足になっているともお聞きしております。
 そこでまずお伺いをいたします。
 観光事業者にとっては非常に厳しい3年間であったのではないかと考えますが、京都府ではコロナ禍で観光産業が受けた3年間の影響をどのように認識し、人材不足対策を含め、どのような支援を行ってきたのか、お伺いをいたします。
 最近になってようやく明るい兆しが見え始めています。今月11日以降、全国旅行支援が開始されました。京都府でも府民割、隣県割から引き続き「きょうと魅力再発見旅プロジェクト」の名称で開始され、これまでに比べて対象が広がったことから、一層の需要喚起が期待されていると思います。また、訪日外国人の水際対策も緩和され、入国者総数の上限の撤廃、ビザの免除の再開、個人旅行の解禁がなされ、インバウンド観光も戻ってくることが期待されています。こうしたことで徐々に観光産業がかつての姿を取り戻しつつあると期待しているところです。
 一方で、今後の観光施策の推進を考えたとき、コロナ禍で観光産業がほとんど止まったからこそ見えてきた課題や人々の価値観の変化を踏まえ、コロナ前とは違った施策の展開が求められるのではないかとも考えます。
 京都府では、2018年6月に西脇知事自らを本部長とした観光戦略総合推進本部を設置し、新しい時代の京都府の観光の在り方について、エビデンスを基に総合的な検討を行い、京都府観光総合戦略を策定されています。京都府観光総合戦略は、観光を単に観光客を呼び込むためだけの施策として捉えるのではなく、京都府の産業の土台を支える総合政策として進めるべく、観光産業の関係を中心としつつも、あらゆる産業が観光の視点を持って成長するとともに、京都府全体が未来に向かって発展していくための指針とされていますが、コロナ禍がもたらした変化にも対応していく必要があります。
 そのような中、本議会で2019年3月に策定された京都府観光総合戦略の見直しが報告されました。
 そこでお伺いをいたします。
 今議会に改定する京都府総合計画の中間案が提出されていますが、改定する京都府総合計画を踏まえて京都府観光総合戦略の抜本的な見直しをするとのことですが、この観光総合戦略の見直しの方向性について知事の御所見をお伺いしたいと思います。
 まずお答えをお願いいたします。

◯田中健志委員長 西脇知事。

◯西脇知事 平井委員の御質問にお答えいたします。
 コロナ禍における観光支援についてでございます。
 新型コロナウイルス感染症によりインバウンド観光が皆無になったほか、緊急事態宣言による移動制限などもあり、観光産業がいち早く、他の業種と比較して、大きな影響を受けることとなりました。こうした状況において、事業継続や雇用維持のベースとなる支援は国が担い、京都府は実情に応じたきめ細やかな支援を行っております。
 具体的には、コロナ禍における観光振興策としては、安心・安全の確保が最重要であることから、宿泊施設の感染防止対策への支援や、修学旅行中に感染の疑いが生じた場合の24時間電話相談窓口の設置などを行いました。
 また、感染状況を見ながらの需要喚起対策として、府民の皆様に京都の魅力を再発見していただく取組など、身近な観光から回復を図ってまいりました。10月11日からは国において、水際対策の大幅緩和など、社会経済活動の一層の回復を図ることとされたことを受け、旅行割引の支援を全国に拡大したところでございます。
 一方、雇用面では、観光産業で働く非正規雇用の方々が非常に大きな影響を受けたことから、就職に関する巡回相談や、収入を得ながら訓練を通じて就職を目指す「京都未来塾事業」を実施いたしました。現在は、観光需要の回復に伴い、人手不足が顕著となっている状況であり、非正規雇用から正規就労を目指して必要なスキルを習得するための研修の実施等により、価値の高いサービスなどを提供できる人材の確保を図ることとしております。
 次に、観光総合戦略の改定についてでございます。
 コロナ禍においては、少子化の進行やリモート化などの社会情勢の変化や、個人の価値観の多様化により、観光に求められるニーズも大きく変化しております。具体的には、自然志向や個人旅行へのシフトが進むなど、旅行ニーズが多様化しております。また、ビジネス利用が宿泊需要を支えた地域もあり、旅館・ホテルにおけるビジネス需要の重要性が認識されますとともに、ワーケーションへの注目から、関係人口等の確保に向けた観光の新たな役割に期待が寄せられております。
 このような実態を踏まえ、観光総合戦略についても次の2点を基本理念に掲げ、抜本的な見直しを図りたいと考えております。1つ目は、コロナ禍で重要性が再認識された人と人との触れ合い、「交流」を観光によって活性化することでございます。2つ目は、関係人口の拡大のため、地域と観光との関係を強め、コロナ禍のような危機的な状況でも地域の人や魅力に支えられるとともに、住民の満足度も高まる持続性の高い観光の実現でございます。
 既に「交流」については、京都の文化を生かした工夫ある展示が行われている国際写真祭「KYOTOGRAPHIE(キョウトグラフィー)」のように、規模の小さな団体であっても参加者を多数集める魅力的な交流イベントを実施している例がございます。また、地域との関係の強化に関しては、京都で学んだ学生が卒業後も京都と関われる仕掛けづくりや、メタバースなど新たな技術の活用により関係人口の裾野を広げる取組など、実際に現地で活躍していただくことを誘導する新たなアイデアも出てきております。さらに、交流の核となって新しい価値を生み出せる人材を育成していく必要があることや、昨年度の夕日ヶ浦での実証実験から、観光DXの推進が新たな観光資源の発掘につながることも実感をしております。
 観光戦略の改定に当たっては、大阪・関西万博を見据えますとともに、こうした内容を盛り込みたいと考えており、10月31日に初回の観光戦略会議を開催し、文化、スポーツなど、幅広い分野から有識者に参加いただくこととしております。今後、基本理念も含めて議論を深めますとともに、府議会をはじめ、府民の皆様から幅広い御意見を伺い、充実した内容にしてまいりたいと考えております。

◯田中健志委員長 平井委員。

◯平井委員 御回答いただきました。
 まず、2点にわたって大きく改定をされるということで、「交流」を大きな柱にしていくと。これは大切なことだと思います。コロナ禍前は割と個人旅行が中心という形で、この「交流」というのは非常に大切なことです。団体という区切られたのが少し緩和されていくということなのでこの「交流」というのは大切ですけれども、今回、人と人との接触を非常に気にしながらしてきた。まだまだこれは続くと思うので、この辺りは感染対策もしっかり取りながら、やはり交流というのは大切な柱としていただきたいと思います。
 もう一つ、地域との関係ということも大切な柱だと思います。見ていただいて、そのまま施設だけを見て帰るのではなく、地域の人と触れ合うことが京都のよさなんですよと。「おもてなし」とかという言葉もたくさんあるんですけれども、どの地域であっても──北部でもそうです。南部も中部も様々に人のよさというのをしっかり出していただきたいと思いますので、この2点はさらに進めていただきたいと思います。
 それでは、次の質問に入らせていただきたいと思います。
 次に、精神障害者及びその家族に対する支援強化について質問をいたします。
 我が国の精神科医療の現状については、精神科病床数は2002年から2017年の15年間で約35.6万病床から約32.2万病床と、2万病床近く減少していますが、国際的には日本の病床数は非常に多く、また平均在院日数も短縮していく傾向にありますが、2019年では265.8日と、国際的には日本の平均在院日数は非常に長くなっています。我が国の精神科医療が、長い間、入院治療を中心としたことに起因しているとも考えられます。
 この間、国においては2004年9月に「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を策定し、「入院医療中心から地域生活中心へ」という理念が明確にされました。この理念を基に、その後も地域精神保健医療福祉の様々な施策が進められてきたところであり、京都府においても、入院患者の地域生活への移行に向けて、地域で相談支援を行う人材の育成や措置入院、長期入院患者の退院後の支援をはじめ、様々な施策に取り組んできたところです。
 精神障害者の地域生活の移行・定着を進めていくためには、精神科救急、在宅医療など、必要な保健医療サービスや相談支援、ケアマネジメント機能の充実、さらには住まいの場の確保、就労支援など、福祉サービスの提供が受けられるよう、保健・医療・福祉などの関係者が連携して支援体制の強化をしていく必要があります。
 また、本人の支援に加え、その家族への衣食住のケア、通院への同行、服薬管理、症状に合った日常的なケアも重要で、御家族は近隣への気遣いや将来への不安、様々な負担感や無力感があったり、誰にも相談したりしにくいという孤立感を抱えながら本人に寄り添っておられます。そのことを認識し、家族支援にも取り組むことが重要だと考えています。
 一方で、精神障害者とその家族が周囲の方たちの理解を得ながら地域の一員として安心して生活していくためには、支援体制の強化だけではなく、精神疾患や精神障害について広く府民の理解促進を図っていくことも重要です。
 精神疾患の患者数、精神保健福祉手帳保持者数はともに増加傾向にあり、府の保健医療計画によれば、精神病床に入院している患者には地域の支援体制が整えば退院可能な人が相当数存在しているのではないかとも考えられます。
 そこでお伺いをいたします。
 退院可能な入院患者数の地域移行を一層進めていくためには、精神障害の当事者はもちろん、その家族の方々にも様々な困難があることを踏まえてその支援を強化するとともに、普及啓発を進め、精神疾患などに対する正しい知識と理解をさらに進めていく必要があると考えていますが、現状と今後の取組について知事の御所見をお聞かせください。
 さらに、最後になりますが、精神障害者への医療助成について要望いたします。
 京都府では、医療費助成により経済的な負担を軽減する福祉医療制度がありますが、障害者に対する助成制度は身体障害者と知的障害者だけになっており、精神障害者の方たちは対象となっておりません。
 こうした状況の中、8月30日に開催されました知事と京都市長の懇談会において、福祉医療制度の助成対象に精神障害者を加えることについて、市町村とワーキンググループを設置し、検討を開始することが合意されたとお聞きしております。精神障害者の家族の方たちからは、家族が経済的な負担をして生活している方も多いため、精神障害以外の医療費の負担が大きくなっており、一般診療の受診を控えるような場面もあるともお聞きしております。福祉医療制度の対象に精神障害者を加えることが重要であると考えておりますので、ぜひ実現に向けて検討していただくことも要望させていただきます。
 知事の御答弁をお願いいたします。

◯田中健志委員長 西脇知事。

◯西脇知事 精神障害のある方と、その家族に対する支援についてでございます。
 精神障害のため入院されている方については、病状が改善しても、精神症状だけではなく、年齢や身体の機能、社会生活への適応能力など、本人の状態に応じた住まいの確保や生活支援に不安を抱えられ、退院に踏み出せないケースが少なくありません。そのため、京都府におきましては、入院されている方が円滑に地域生活に移行できるよう、生活の場となるグループホームの計画的な整備、退院後の環境に合わせた生活訓練や退院後の訪問など、病院と連携した生活支援などを実施してきたところでございます。
 今後も、精神障害のある方が希望される地域で安心して生活していただけるよう、グループホームのさらなる整備、訪問支援などの取組を進めますとともに、障害のある方同士が体験や有益な情報を共有し支え合うピアサポートの活用促進に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、委員御指摘のとおり、本人のみならず、家族にとりましても退院後に生じる負担などに不安を抱えるケースも多いことから、保健所を中心とした家族への訪問支援や、家族会と連携した家族支援のための研修なども実施しているところでございます。今後は、家族に寄り添う相談員の養成にも取り組んでまいりたいと考えております。
 また、精神障害のある方に地域で安心して生活していただくためには、障害の特性などに関する周囲の方の理解が非常に重要だと考えております。そのため、精神障害をはじめとする障害の特性についての解説と具体のケースにおける相談内容や対応を掲載した事例集を昨年12月に作成し、京都府のホームページに掲載いたしますとともに、市町村や経済団体を通じて地域の住民や企業等へ配布し、普及啓発に努めているところでございます。事例集を読まれた方からは「精神疾患への理解が深まり、どのように接すればよいのか具体的に分かった」などの声もいただいております。今後さらに学校教育や社員研修などで活用いただけるよう周知に努め、地域の方々の障害に対する理解をより一層深めていきたいと考えております。
 引き続き、精神障害のある方とその家族が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、市町村や家族会、保健・医療・福祉・教育など、関係の皆様とともに取組を進めてまいりたいと考えております。

◯田中健志委員長 平井委員。

◯平井委員 御答弁をいただきました。
 特に今のいろんな福祉施策が地域移行になっていくという方針。これは一概に悪いとは言えないんですけれども、ただ、サポートする体制がまだまだ醸成していないという現状があるかと思います。特に精神障害の皆さんについては、例えば何となく分かっていても実際我々はどういうことができるのか、あるいは家族の方が抱えている課題というのは見えてこないということで、昨年の12月に事例集を作っていただいて、それを配布したことによって一定理解の促進が図れたのではないかという御答弁を知事からいただきました。さらに進んでいただいて、今後、学校教育と社員研修なんかに利用しましょうという提案は非常に大切だと思います。地域の回覧板でそういうものを回したからといって皆さんに手に取って見ていただくという率はやっぱり低いと思うので、学校教育の中でもしっかりそれを取り入れていくことも大切だと思います。教育委員会をはじめとするところと連携していただいて、理解の促進を図っていただきたいと思います。
 同時に、社員研修という視点は大切だと思います。どの企業であっても、特に中小企業の皆さん、小規模・零細企業の皆さんはちょっと難しい課題があるかもわからないんですけれども、まずは社員研修に生かしていただくということを京都府のほうがしっかり発信していただいて、様々な研修──もちろん仕事のスキルを高める研修も重要だと思うんですけれども、こういう地域に還元するということも大切だと思います。これはやっぱり行政のほうがしっかり発信することが大切だと思いますので、進めていただきたいと思います。
 それと、今回、医療費助成については要望にとどめさせていただきました。これからワーキングチームでしっかり議論をして進められるということで一つの光が見えたかなと私も思っているんですけれども、医療費の負担が大分のしかかっていて他の医療にかかれないというような声も実際聞いております。ここは何とか進めていただきたいと思いますので、京都府と市町村の皆さんのさらなるお取組をしっかり要望させていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。