1 女性支援と子育て支援について

2 文化庁移転による京都府の成長について

3 ボランティアツーリズム(農業支援)について

4 高齢化社会におけるICTの活用について

5 不登校児童生徒への多様な学習支援の保障について

6 その他

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◯田中美貴子君 府民クラブ京都府議会議員団の田中美貴子でございます。私は、会派を代表いたしまして、数点にわたり知事並びに教育長に質問をさせていただきます。
 質問に入ります前に、新型コロナウイルス感染症で無念にもお亡くなりになられました方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、医療・福祉関係者の皆様をはじめ、この長きにわたり、昼夜分かたず御尽力いただいている全ての皆様に感謝を申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症につきましては、連日新たな陽性者の発生が続いているところであり、引き続き、感染防止対策を行いながら京都経済を温めるためにも、しっかりと経済活動も進めていく必要があります。
 初めに、令和5年度当初予算案と令和4年度2月補正予算案で構成された14か月予算では、「あたたかい京都づくり発進予算」と銘打たれ、全ての営みの土台となる「安心」、子どもたちを育み、絆を守る「温もり」、夢や希望、魅力や活力の源泉となる「ゆめ実現」の3つの視点に基づく施策を力強くスタートさせるためにも必要となる予算で編成されており、我が会派が進める、誰もが将来に希望の持てる、安心して暮らせる、真の共生社会の実現に向けて歩みを進める施策も含まれていることから、会派を代表いたしまして高く評価をするところであります。
 また、西脇知事におかれましては、コロナ感染症の感染拡大や国際情勢の大きな変化の中、この時期を逸することなく、歴史的な社会の転換点であることを踏まえ、京都府の羅針盤となる「京都府総合計画」の前倒し改定を議会に提出され、20年後の京都府の在り方も含め、西脇知事の府民を思う温かな思いを凝縮されたものと思っております。昨年は、お示しされた漢字に表されるように、私たちは「温もり」を実感させていただき、さらに、今年もその思いで府民に真摯に向き合っていただきたいと思っております。
 そこで、今回、会派を代表いたしましての私の質問は、「人とのふれあいや絆を感じながら、成長を遂げる京都府」を目指した観点で、数点に絞ってお伺いをさせていただきたいと思っております。
 私は、この社会情勢の中で、政治に対する不信感・不安感の解消をどのようにすればよいのか、常に日々の活動の中で自分に問い続けてまいりました。政治不信・不安・不満への解消は説明責任を果たすということに尽き、この是非の根幹は民主主義のありようではないかと改めて思いました。
 そんな中、京都大学名誉教授佐伯啓思氏の「民主主義がはらむ問題」という大見出しの新聞記事に目が止まり、その中にこういう一文がありました。戦後の英国を代表する保守派の政治哲学者マイケル・オークショットが、かつてこう言っていた。「現代の大衆は『幸福を追求する権利』などを求めていない。彼らが求めているのは『幸福を享受する権利』だけである。人々が政治に求めるのは、『幸福を追求する』ための条件ではなく、現実に『幸福を享受する』ことなのである。これは、福祉国家化や行政の肥大化を念頭に置いたものだろうが、政治や行政への依存を強める現代人の心理的性向を論じているともいえる。人々にとっては、おのれを頼みとして自分の幸福を自ら獲得するという『自己決定』などというものは重荷なのだ。だから、人々は政治に対して『安全と幸福』の提供を要求する。その結果、人々は『安全と幸福』を与えてくれるような強力な『護民官』的な指導者を求める。『安全と幸福』とは、言い換えれば『パンとサーカス』、つまり『生存と娯楽』とつなぎ、政治は『民意』の求めに応じて『パンとサーカス』の提供を約束する」。この記事を読んだとき、私たちはそのバランスを常に意識し、そして一人でも多くの人の幸福を目指して努力をせねばならないのだと強く思いました。
 今回、代表質問の骨子を考えたとき、府民の皆様が求めておられる京都府のありようと総合計画の中に盛り込まれた知事の思い、つまり、これからの京都府が進むべき道を、西脇知事がどのようにバランスを取りながら進もうと思っておられるのか、その答えを求めたいと思いました。
 そして、それは京都府の成長戦略として、今までなかなか光が当たらなかった分野へのアプローチとして、私なりに新たな視点での施策として取り組んでいただきたいとの思いを持ち、質問を考えさせていただきました。例えば、福祉の領域は「措置」という言葉で実施されてきた経過があり、社会保障制度の根幹として保障の域を出るものではありませんでした。そして、その中心的な役割を担ってきたのが女性であり、女性はお世話をする役割として、看護師、介護士、保育士の中心的存在でありました。
 以前の一般質問でも取り上げました「生理の貧困」は、タブー視されてきた女性の歴史を今ではフェムテック産業の未来として大きく展開されようとしております。女性が歴史上担ってきた福祉の考え方を再構築することによって、福祉という捉え方を成長戦略として考えることができるのではないか、互恵的相互依存は、それぞれの施策展開をするときに同一方向に進むメンバー相互がお互いのために最善の努力を尽くす、その関係性を築き、そうして行われた努力が双方に恩恵をもたらす。このような関係性を目指し、包摂社会を構築することが必要ではないかと考えます。
 また、経済学者吉川洋氏の「閉塞感の打破へ全世代型社会保障を議論し羅針盤に」という新聞インタビュー記事の中に、「未来の世界を考えれば、グリーン分野やシルバー産業の成長は必要。人間が行う全ての営みは、経済活動の形で成長を生み出すのです。ただし、公的分野の仕事というと、お金をつけるだけと考えがちな従来の日本的思考はやめるべきです。そこで問われたのは人材であり、うまくいった例がインバウンドで、ビザの緩和など時代遅れの規制が見直される一方で、おもてなしの工夫や努力が民間サイドで積み重ねられてきました。宿の仲居さんが、簡単ながらも中国語や韓国語の挨拶を勉強する、そうした一つ一つの取組が功を奏したのです」。公的な責任と、格差を解消したバランスのよい、京都府民が輝く施策の展開が求められています。
 それでは初めに、女性の支援と子育て支援についてお伺いさせていただきますので、御答弁よろしくお願いいたします。
 まず、早期からライフデザインを描けるようにするために、義務教育を受ける年代にキャリアデザイン教育を実施することについてです。
 私たちは、未来を予想できるものではありませんが、先人たちの歩んできた道をたどることによってリスクを回避できるようなこともありますし、再出発をすることもできます。このように、あらかじめ予測できることを教えられていれば、その時が来たときに立ち止まって思考することができるのではないかと思っております。人生ゲームというすごろくのようなゲームがありますが、これは、まさに節目節目で何が起こるのか、遊びの中で試行することができるものだと思います。人としてのライフデザインを描く。そのことを義務教育を受ける年代でしっかりと身につけていれば、漠然とした夢ではなく、自分の人生を組み立てられるのではないかと思っております。特に、女性の場合は、体の変化に伴う生きづらさが伴うものであり、心身ともに大きな変化に人生が左右されてしまいます。それは、働き方に顕著に現れることからキャリア教育と言われ、それを具現化するためにデザインするという観点で、キャリアデザイン教育と言われています。
 男性の働き方は、さほど変化が生じるものではありませんが、女性はホルモンバランスに左右されやすく、また妊娠・出産で大きく生活のリズムが変化します。幼い頃から女性であることを認識し、ライフデザインを描き、それがキャリアデザインと結びつくものだとの認識は、人生を豊かにするだけではなく、女性の就労形態に大きく影響を及ぼします。これからどのように働いていきたいのか、どのように生きていきたいのか。女性は、人生の節目節目で自身のキャリアを考えることが求められるものであり、社会で生きていくためには重要な教育であるということを女性自身がなるべく早く気づき、社会としても、その意味合いをしっかりと教育していかねばなりません。
 キャリアは、時間軸の長いものではありますが、例えば学生にとっては、学びの場は働く場を求める場でもあるわけです。
 京都府では、生涯現役クリエイティブセンターでリカレント研修を実施いただいております。京都産業を牽引する人材の育成として、女性限定の女性活躍応援コースがとても人気であると聞き及んでおります。まさに女性が改めて学び直しをすることの意義をしっかりと捉えていただき、実施いただいていることに感謝を申し上げます。
 ただ、もっと早くにライフデザインを描き、女性にとっての妊娠・出産がキャリアとなり、それらが次なるステップに生かせるのだともっと早くに気づき、妊娠・出産の時期を選択すれば、社会で活躍できる時期の選択幅が広がるものと確信いたしております。
 大学では、キャリアデザイン教育を実施されているところもあります。すばらしい講師の先生方が大学生に御教授いただいておりますが、大学に入学せずとも、もっと早い時期にキャリアデザイン教育を受けていれば、さらに女性が輝く場の提供ができるものと思っています。そのことが労働力の強化となり、学生の街である京都にとっても職住を提供できる仕組みづくりにつながるのではないでしょうか。
 私は、タブーと言われていた「女性の生理」について、この議場で取り上げをさせていただきました。フェムテック産業への取組強化を訴え、京都府でもフェムテック産業へアプローチする女性が活躍し、発信いただいております。こういった取組が諸外国から遅れていたのは、実はそういった事情を客観的に教えてもらっていないという現状があるからです。生理の貧困ということから発した私の違和感は、性教育の貧困へと結びつきました。
 予期せぬ妊娠や、赤ちゃんが置き去りにされる事件の背景、そこに何が問題としてあるのか。人権教育を基本とした「包括的性教育」の実施は喫緊の課題です。我が会派の田中健志議員も取り上げられましたが、学習指導要領における「はどめ規定」により、小学5年の理科で「人の受精に至る過程は取り扱わない」、中学校の保健体育で「(妊娠・出産が可能となる体の成熟は学ぶが)妊娠の経過は取り扱わない」とされており、ユネスコなどが提唱する人権教育「誰もが、大切な存在で、全ての性は尊重される」との前提で、人間関係やジェンダーの理解、暴力と安全確保などをキーコンセプトとする包括的性教育の重要性は諸外国から遅れを取る中で、今こそしっかりと教育の中に組み込まれねばなりません。
 性暴力には、人間関係構築への強い不安や歪んだ性のイメージが関係し、それを正すためにも、子どもの頃からの適切かつ体系的な性教育の実施が必要であると考えます。
 地元紙に取り上げられた大原野中学校での特別活動は、「性交を隠さずに教える」という大見出しで、指導要領にとらわれず、避妊・同意「命を守るため」と、チャレンジングに取組をされているのを拝見し、大変うれしく思いました。
 こういったことが特別ではなく、どの学校でも行われることが女性の社会進出にもつながっていくものであり、ライフデザインの一環でもあると思っております。
 そこでお伺いいたします。
 ライフデザインを描く意味でも、キャリアデザイン教育をジェンダーの視点、男女共同参画、女性の就労という観点で、ぜひとも実施いただきたいと思いますが、お考えをお聞かせください。
 それらの根幹は、包括的性教育にあると私は確信いたしておりますが、各教科指導における「はどめ規定」にとらわれず、学校教育の中で実施すべきと考えますが、いかがでしょうか、お考えをお聞かせください。
 次に、子育て支援についてです。
 岸田首相は、子ども予算倍増計画を6月の経済財政運営の指針である骨太方針策定までに、将来的な子ども予算倍増に向けた大枠をお示しされると明らかにされております。少子化問題が待ったなしとなる昨今、1)経済的支援、2)子育て家庭へのサービス拡充、3)働き方改革の推進と育児休業制度の強化を中心に、これから様々に踏み込んだ内容をお示しいただけるものと期待をいたしております。
 また、京都府においても、令和5年度当初予算において、京都子育て支援医療助成制度の拡充や子どもの教育のための総合交付金の創設をはじめ、京都府独自の「子育て環境日本一・京都」の実現に向け着実に歩みを進めておられます。
 特に、子育て支援医療助成制度の拡充につきましては、我が会派としても充実を求めていたものであり、子育て世代の経済的負担の軽減が図られ、子育てしやすい環境が整えられることは大変喜ばしいことと思っております。他方で、さきに申し述べましたように、女性の働き方、キャリアデザイン教育も推進いただき、しっかりとお取り組みいただきたいと思っております。
 その上で、行政と子どもを産もうとする家族の最初の出会いとなる「母子手帳」と「リトルベビーハンドブック」が、京都府において昨年から作成に向けてお取り組みいただいております。この4月から京都府独自の母子手帳が市町村で配布されることになりますが、京都府が市町村とともに作成されたことは大変意義深いことと思っており、楽しみにいたしております。
 検討会での様子を傍聴させていただきましたが、検討委員以外でも、その都度、専門的見地に立った方々を参考人に呼ばれ議論を深めていただきました。ただ、作成されて以降、ここからが重要と思っておりまして、この母子手帳を通して、京都府の思いをどのようにして妊婦さんにお伝えするのか。私は、この母子手帳は京都府及び市町村からの大切なプレゼントと捉えております。命が宿ったことへのその喜びを、妊婦さんや御家族とともに市町村も一緒に共有し、その命を一緒に守っていきますと、子どもを守るパートナーであることの宣言であるとも思っております。
 実は、私は母子手帳のその意味合いも意義も分からず、ただ大きくなるおなか周りの記録や子どもの成長記録程度のもので、どこに保管したのかも定かでないような扱いをしておりました。私自身へも子どもたちにも、とても残念なことをしてしまったと反省をしております。
 そこでお伺いいたします。
 今回、作成される京都府独自の母子手帳に込めた思いや、その独自性についてお聞かせください。また、市町村窓口の保健師さんにもその重要性をしっかり学んでいただき、この手帳を渡すときに最高のプレゼントとなるよう、そのよさを伝えていただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。
 次に、リトルベビーハンドブックについてです。
 静岡県が最初にリトルベビーハンドブックを作成され、その後、国際母子手帳委員会事務局長の板東あけみ先生が、国内のあらゆる都道府県を回られ、小さく生まれた赤ちゃんやその御家族に寄り添い、現段階で28都道府県が作成中と聞き及んでおります。
 昨年は、世界早産児デーである11月17日に合わせて全国で写真展が開催され、改めて私も送られてきた写真の一つ一つを見ながら、手のひらに包み込めるぐらいの小さな小さな命が精いっぱい生きようとたくさんの管につながれながらも、きらきら輝いている姿に、この子たちに幸多かれと願わずにはいられませんでした。
 世界最小の男児として生まれた長野県の赤ちゃんは、身長22センチ、体重は僅か258グラム。対面したお兄ちゃんは「小ささでも世界一だけど、輝きでも世界一」と、本当に家族の愛情と医療チームのすばらしさに感動いたしました。その子も昨年の10月で4歳に成長され、命のすごさとすばらしさを多くの方に知っていただき、また応援もしてまいりたいと思っております。
 そこでお伺いいたします。
 京都府も、母子手帳と同時にリトルベビーハンドブックも作成いただいております。その副読本が御家族にとって希望ある大切なものとなることを願っております。現段階での進捗状況をお聞かせください。
 次に、小さく生まれた子どもを育てる家族の育休制度についてです。
 1,500グラム未満で生まれた赤ちゃんが回復して退院する割合は近年向上し、2003年は89%だったものが、2019年は94%となったという報告もあります。新生児の死亡率は、1975年に出生1,000人当たり6.8人だったのが、2021年には0.8人まで下がり、先ほども申し述べさせていただいたとおり、手のひらの中に包み込まれるような命も、御家族の愛情と医療チームの御努力により健やかに育ってくれている現状がかいま見られます。
 ただ、予定日より早く生まれたため、同学年の子どもたちとの成長の違いが大きく、かなりのハンディの中、就学前教育や義務教育を受けねばなりません。修正月齢での集団健診や入園・入学時期を望まれる保護者の方の御意見もいただきましたが、やはり生を受けて誕生したという日は、その子にとりましても保護者の方にとりましても大切な日となりますことから、このことにつきましては見守っていきたいとは思っております。
 しかし、育休につきましては就労先との契約となるため、復帰先の企業や職場との話し合いで、復帰時期は修正月齢での復帰とすることは可能ではないかと考えます。子育てにやさしい企業を応援いただいている京都府といたしましても、子育て環境日本一の京都府ならではの施策として、子どもの成長に合わせて復帰時期を考慮いただけるよう、企業に向けて発信していただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。お考えをお聞かせください。
 ここまでの御答弁よろしくお願い申し上げます。

◯議長(菅谷寛志君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 田中美貴子議員の御質問にお答えいたします。
 田中美貴子議員におかれましては、ただいまは会派を代表されまして、今回の予算案に対しまして高い評価をいただき、厚く御礼を申し上げます。
 義務教育を受ける年代へのキャリアデザイン教育についてでございます。
 義務教育を受ける年代から性別にかかわらずキャリア教育を実施することは、将来、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現するための力を養うために重要でございます。
 キャリア教育の一環である体験活動につきましては、京都府内では小・中学校ともに9割以上が取り組んでおり、農業・漁業の現場や地域の商業施設、幼稚園などにおいて仕事を体験する取組が行われているところでございます。
 人生100年時代を迎え、長い人生の中で女性が経済的困窮に陥ることなく、また尊厳と誇りを持って人生を送る観点からも、女性のキャリア教育を早期から継続的に行っていく必要がございます。京都府におきましては、「小・中学生の新しい未来を切り開く力」や「社会を変える事業を起こす力」を育むプログラム「KYOTOアントレプレナーチャレンジ」を実施するNPO法人等を支援いたしますとともに、中学生や高校生が女性技術者や理系女子大学生等との交流を図る「京都STEAM女子応援事業」を実施し、学校教育以外の場でも進路選択の視野を広げ、職業観を養う取組を進めてまいりました。
 加えて、女性のキャリアを考えますと、結婚や出産などのターニングポイントで一旦離職しても、いつでも再就職し、退職時と同等の処遇を得るための一助として、女性の就業に直結するリスキリングやリカレント教育の機会を提供していくことが重要であることから、生涯現役クリエイティブセンターにおいて女性を対象とした研修も開始をしております。
 議員御指摘のとおり、義務教育を受ける年代から自らキャリアデザインを考える基礎的な力を養成することにより、女性特有のライフスタイルの変化を認識し、節目節目で自身のキャリアを構築することができるものと考えております。
 今後とも、様々なキャリア教育の取組を行うことにより、性別にかかわらず、それぞれの個性と能力に応じて、職業選択も含め自らが希望する生き方が実現できるよう努めてまいりたいと考えております。
 次に、京都版母子健康手帳についてでございます。
 母子健康手帳は、妊娠期から育児期までの母と子の健康に関する情報を一元的に管理する大切なツールでございます。核家族化や地域のつながりの希薄化が進む中、気軽に相談できる人が周囲におらず、出産・子育てに不安を抱える母親は多くおられるのではないかと思っております。
 このため京都版母子健康手帳の作成に当たりましては、母子の健康管理ツールとしての機能に加えまして、京都府独自の視点として「両親がともに出産・子育てに向き合う」という観点から内容を充実したいと考えております。
 具体的には、父親は母親を支える立場ではなく子育ての主体であるとの観点から、名称を「親子健康手帳」とする、両親が一緒になって子育てに取り組むよう家事・育児分担シートや育児休業のスケジュール表を盛り込むなどの工夫を行う予定でございます。
 また、子育ての主体は親だけではございません。改定した総合計画においては、「社会で子どもを育てる京都」の実現を掲げております。これは私自身、様々な方と対話を重ねる中で、「社会全体が子育ての主体として、負担や苦労、喜びを分かち合う」という将来の到達点として掲げたものでございます。このため、産前・産後の悩みや、独り親家庭の不安等に寄り添い、必要な支援につなげられるよう、地域の支援団体の連絡先や相談記録のページを追加する、赤ちゃんの体調異常を即座に察知し適切に医療につなげられるよう観察のポイントを提示し、相談窓口を案内するなどの工夫を行う予定としております。
 手帳の交付は、妊産婦と行政とがつながる最初の機会でございます。その際、子育ての責任や負担を母親だけに押しつけることなく、家族や社会全体で分かち合うという京都版母子健康手帳に込めた思いを、市町村と連携して妊産婦の方々に確実に伝えてまいりたいと考えております。そのために、今年度中に市町村の保健師等への説明会等を開催する予定としており、本年4月からの配布に向けて準備を進めているところでございます。
 次に、リトルベビーハンドブックについてでございます。
 リトルベビーハンドブックは、低出生体重児の成長の記録を記載できる独自の手帳で、京都版母子健康手帳とセットで作成を進めております。その特徴としては、成長や発達を実感できるよう、子どもの「できること」に着目した記録様式や、府内で低出生体重児の子育てをされている先輩保護者等からのメッセージなど、御家族の皆様の不安や孤立感等を軽減するための内容を盛り込む予定でございます。
 このハンドブックにつきましては、低出生体重児に限らず、ダウン症候群などの先天性の病気を持つ子どもも利用できる内容となっており、新生児へ専門的な医療を提供する医療機関等を通じて希望される御家族にお渡しできるよう、協力をお願いしているところでございます。
 京都版母子健康手帳と合わせて本年4月から配布できるよう、しっかり準備を進めてまいります。
 次に、小さく生まれた子どもを育てる家族の育休制度についてでございます。
 人口動態統計によると、出生児のうち2,500グラム未満の低出生体重児は、およそ10人に1人と、決して少なくありませんが、小さく生まれた子どもを育てる親が働く職場での理解やフォロー体制などにつきましては、まだまだ不十分であると感じているところでございます。まずは、状況に応じて親が必要な育児休業を柔軟に取得できるよう、子育てにやさしい職場づくりを進めてまいりたいと考えております。
 京都府といたしましては、ワークチェンジ塾の開催や、子育て企業サポートチームによる活動を通じて企業における子育てにやさしい職場づくりのための取組を支援しているところでございます。今後は、育児休業からの復帰時期などを子どもの成長に合わせて柔軟に決めることができるよう、社内制度の構築等を企業に対して働きかけてまいりたいと考えております。加えまして、実態に応じた育児休業の取得が可能となるよう、国に対しまして修正月齢を考慮した期間の延長など、制度の改正を要望してまいりたいと考えております。

◯議長(菅谷寛志君) 前川教育長。
   〔教育長前川明範君登壇〕

◯教育長(前川明範君) 田中美貴子議員の御質問にお答えいたします。
 包括的性教育についてでございます。
 インターネット等における性情報の氾濫など、子どもを取り巻く社会環境は大きく変化しており、児童生徒が性に関して適切に理解し行動できるように指導することが重要でございます。
 そのため、児童生徒には、体の発育・発達や心身の健康などの知識について、教科を中心に確実に身につけさせることはもとより、特別活動等において男女相互の理解と協力、思春期の不安や悩みの解決、性的な発達への対応等を重視し、指導を進めているところでございます。
 議員御指摘の中学校における「妊娠の経過は取り扱わないこと」という、いわゆる「はどめ規定」につきましては、生徒の発達段階に差異が大きいことや、生徒、保護者の性に対する価値観が多様であることなどから定められているものと承知しております。また、文部科学省の「『生きる力』を育む中学校保健教育の手引」では、生徒の発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、家庭、地域との連携を推進し保護者や地域の理解を得ること、集団指導と個別指導の連携を密にして効果的に行うこととの留意点が示されており、まずは現行の学習指導要領の考え方に基づいた上で、着実に指導していく必要があると考えております。
 加えて、個々の生徒や各学校の状況も多様であり、こうした現状を踏まえて対応する必要があるため、府内の学校においては保護者の理解の下、助産師会や産婦人科医会等から専門的な知識を持った講師をお招きし、妊娠・出産に関する授業を行う取組も進めているところでございます。
 さらに、府教育委員会で小・中・高校別に作成し配布いたしました人権学習に係る資料集に、例えば、やりたい仕事を性差にとらわれずやろうとする心情を養うこと、デートDVの事例を通して男女が互いに協力し尊重し合うこと、妊娠・出産等に関するハラスメントを防止することなどを取り上げ、多様な視点から性について考え、学べるよう取組を進めてきております。
 府教育委員会といたしましては、今後とも児童生徒が発達段階に応じて、性について正しく理解し行動できるよう、包括的な性について学ぶ取組を進めてまいります。

◯議長(菅谷寛志君) 田中美貴子議員。
   〔田中美貴子君登壇〕

◯田中美貴子君 御答弁ありがとうございました。京都府ならではの女性活躍と子育て支援についてお伺いいたしました。
 大学のまちであり、多くのベンチャーが生まれたこの京都において、女性がいかに輝き、そして、そのキャリアを磨き、諦めることのない、そんな土壌をこの京都で築き上げることができるのか、そして、そのことが子育て支援とリンクし少子化に歯止めをかける、京都府がモデルとなってお取組をいただきたいと思っております。
 母子手帳についてですけれども、名称が親子健康手帳ということでございまして、知事の思いも随分入っているなと思いましたのは、決して親子というのは両親だけではなく、また家族だけでもなく、社会全体で育てるのだというふうな思いを込めての母子手帳ということでございましたので、大変期待をいたしております。
 また、リトルベビーハンドブックのほうも、希望する御家族には必ず手渡せるような形を取っていくというふうにおっしゃっていただいたんですが、実は出産する場所と育てる場所が違う、都道府県がまたがるというふうなこともありますので、できましたら広域的にそのリトルベビーハンドブックも渡せるような仕組みを、また国のほうにも言っていただけたらありがたいなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 岸田首相の異次元の少子化対策との表現は、私も大いに期待をいたしました。ただ、予算委員会でのやりとりをお聞かせいただくと、どうもよく分かりません。少子化傾向が続き、社会経済への影響が深刻化しかねないと政府の少子化対策に盛り込まれたのは約30年前。以来、様々に名前を変えて取り組んでこられたわけですが、子育て家庭向けの国と地方の予算も10兆円規模になってきました。でも、少子化に歯止めがかからない、なので岸田首相も異次元という表現をお使いになられたものと思っております。
 今さらながらですが、子育て支援は子どもとその保護者や家族支援、一方で、少子化対策は子どもを産みたいと願う環境整備、社会構造の構築です。これは大変大きな取組であり、国家観、結婚観、家族観に結びつき、国の指導者が大きく旗を振らなければなりません。
 あるデータを見ますと、約40年間で家族関係支出を4倍に増やしているのに出生率は減少、一方で、完結出生児数は減少傾向にはあるものの、結婚した夫婦はおよそ2人の子どもを産んでいます。また、別のデータでは、この60年間、第1子、第2子、第3子が生まれる比率は変わっていません。つまり、結婚した女性はこれまでどおり子どもを産んでいるということです。
 じゃあ、なぜ少子化なのか。子どもを産む母親が減少しているんです。合計特殊出生率を見ますと、1.5人の子どもが生まれています。つまり、1.5人を2から3人に増やすよりも、子どもが0人の母親を1.5人にする方が出生数は上がるわけです。だからこそ結婚観、家族の在り方を基本的に、抜本的に変えなければならないのです。
 御承知のように、国立社会保障・人口問題研究所の調査で理想とする数の子どもを持たない夫婦に理由を聞くと、「子育てや教育にお金がかかり過ぎるから」との回答が2002年から2021年にあった5回の調査で、いずれも最も多かった。経済的に余裕が持ててからの結婚というと、晩婚化、晩産化となる。若者が若いうちに結婚してもよい、結婚したいと思える社会環境を整えることが重要であると考えています。そのためには、キャリアデザイン教育を実施し、包括的性教育で子どものときから命の大切さ、子育ての喜びをしっかりと根づかせていただきたいと切に思っています。
 そして、国におかれましては、家族の在り方、結婚の在り方をこの時代にそぐう、多様性を受け入れた共生社会の実現を今こそ目指していただきたいと思っているのです。
 昨日お通夜にお伺いさせていただきました。亡くなられた方は38歳。かわいい1歳と2歳の女の子のお父さんでした。その女の子たちのお母さんに、私は「頑張れ」とは言わずに、「大丈夫、安心して、私も一緒に子育てするから。社会で守っていく、社会でこの子たちを育てていくんだから、大丈夫、安心して」と声をかけつつ、私自身にも再度その思いを胸に刻ませていただきました。
 西脇知事が思っておられる社会全体で子育てをしていく、京都府がそのモデルとなっていただきますようよろしくお願い申し上げます。
 次に、文化庁移転による京都府の成長についてお伺いいたします。
 明治維新以降、省庁が首都圏を離れて初めて京都に拠点を移すことになります。京都の人にとっては「おかえりやす」ではありますが、多くのメディアで取り上げられ、あらゆる分野の方との対談は大変興味深く拝見させていただいており、特に地元紙では特集も組まれ、西脇知事のお顔とコメントがよく見受けられます。
 文化庁移転によるコンテンツの一つ一つは紹介するまでもありませんが、語られる皆さんの共通されていることは、京都は奥深く、千年の歴史がそのまま生活文化として残り、儀式とも取れる日常がすぐそこに息づいている。山下副知事の地元紙の記事にも、「京都は奥深いとよく言われるのは、一つの文化を探求すると次々に別の水脈が現れ、複雑に関係していることに要因がある」と書かれてありました。
 私も華道を長年学び、教えておりましたが、様々なところでの出会いに驚くことがしばしばありました。ある意味、京都の人脈の凝縮されたつながりと奥深さのゆえんかもしれません。
 都倉俊一文化庁長官と日本画家の千住博氏との対談では、「日本は文化芸術立国であると世界に証明する」との表題で記事になっており、「京都発というニュアンス」と小見出しにもあります。
 また、別の記事の同志社大学文学部教授の水ノ江和同氏は、「文化庁職員も京都移転で文化財保護は実に多くの人たちが支えていると実感できるでしょう。国会対応などに追われる激務の日々なので、京都に来られたら心と体のゆとりをつくる環境も必要でしょう」とも語られておられます。
 何より驚いたのが、タレント・キャスターの櫻井翔さんとの対談です。「京都の文化は有形無形を問わず、いずれも今の暮らしに息づいているもので、暮らしも文化です」という西脇知事のお言葉に、櫻井氏は「10代で初めて京都を訪れたときに感動したのも、歴史ある町並みが並ぶ景観と、そこで普通に暮らしている人々の姿です」と応酬されています。その対談の中では関西万博にも触れられ、「文化庁移転により、世界に向けて、その特性が最大限に生かされることが期待されますね」とも述べられています。
 知事は、「日本の皆さんから京都に文化庁が移転してよかったと思っていただけるように、国と地方が連携して新たな潮流を生み出せるよう全力で取り組んでまいりたい」とおっしゃっておられます。文化の継承・発展は担い手を育てることも大変重要ですが、伝統文化に触れる需要側を育てることも重要です。いかに子どもたちに供給できるか、それこそが底力につながるもので、京都の強みになるものと確信いたしております。
 一方で、「地域文化創生本部」が伝統文化を生かした「文化観光」や「食文化」の振興を担っていたにもかかわらず、文化庁の組織再編で文化観光と食文化を担当する部署は新たな組織として東京へ移されるということから、「全面移転というより部分移転と言ったほうが実態に近いのではないか」、また「移転にどんなメリットや意義があるのか、浸透しているとは言い難く、京都が誇る文化を地域活性化や経済発展に生かし、東京一極集中是正の成功例として示せるかも重要になる」とも書かれてありました。
 そして、来年放映のNHK大河ドラマ「光る君へ」のロケは、今年の夏頃を予定されているとのことです。紫式部が「源氏物語」を書いたのは滋賀県の石山寺と言われておりますが、文化庁移転の契機として京都府としても大いにアピールをいただきたいと思っております。特に、宇治十帖を書かれた背景は、石山寺から眺める、とうとうと流れる瀬田川に宇治川を望みながら、みやびとわび寂、大君・中の君の女性の切なさや悲しみ、喜びや怨念を情感込めて書かれており、「源氏物語のまち」を標榜する宇治市にとりましては、大いに盛り上げてもらいたいと思っております。亡き瀬戸内寂聴氏が名誉館長をお務めいただいた「源氏物語ミュージアム」も、また多くの観光客で盛り上がるものと推察いたしております。京都府の得意分野である映像コンテンツを大いに駆使していただき、しっかりと宣伝いただきたいと思っております。
 そこでお伺いいたします。
 文化庁移転プラットフォームに関しましては、中心となって移転へのお取組を推進いただいてまいりました。移転後こそが重要であると思っており、今後、国と地方がしっかりと連携して取り組んでいくことが必要であります。国と地方がウィン・ウィンの関係を構築されるに際し、既に京都府の職員が派遣されていると聞き及んでおりますが、先ほど申し述べました東京での業務となる文化観光担当・食文化担当部署などとの連携強化を今後どのように展開されていかれるのかお聞かせください。
 そして、まず隗より始めよで、文化庁職員の方に京都に住んでよかったと思ってもらえるよう、また他の部署の職員の方が京都の部署に異動したいと願うような地域行催事への参加など、住民と職員の方々との地域における交流の企画を実施するなど、イベントへの参加も踏まえて、どのように京都のよさを知っていただくのかをお聞かせください。
 また、文化庁移転を契機にNHK大河ドラマ「光る君へ」を活用した文化観光の取組を京都府としてどのように展開されようとなされているのかお聞かせください。
 次に、ボランティアツーリズム(農業支援)についてお伺いいたします。
 アグリツーリズム、グリーンツーリズムなど、農山漁村支援による農家民宿など、国を中心に様々な取組がなされたわけですが、アグリツーリズムは、主に農山村部など自然豊かな場所に滞在し、周囲の環境や文化、そこに住んでいる人々との交流を楽しむ余暇活動のことを示します。また、グリーンツーリズムは、農山村部に加えて漁村で体験する形式を含めた用語として使われております。
 アグリツーリズムは、もともとヨーロッパを中心として始まった休暇の過ごし方の一つであり、地域活性化に貢献する側面もあることから、近年では日本でも農水省を中心に積極的に推進されております。特に、日本の農山村部には、そこでしか体験できない伝統や文化が残っている場合も多く、日本国内はもちろん、海外からのニーズも高まっております。
 アグリツーリズムを利用する消費者の主な目的は、地域の特徴を体験することであり、地元に根差した文化や食べ物に興味を持つことが多く、そうした消費者をターゲットにして農家民宿やレストラン、体験農園などを開設すれば、作物の出荷以外での収益確保が目指せることとなります。
 ツーリズムと言う限り対象は旅人となりますが、改めて今の農業の現状を考えたとき、単なる体験ではなく、一定の役割を担っていただくということから、ボランティアツーリズムとしての取組を複合的に体系化し、人手不足の解消につなげることができないかと考えております。
 農業は、成長戦略の一つとして今後も取り組まねばなりませんが、食料自給率からも農業人材は決して足りているとは言えず、担い手不足は否めません。もちろん、最近、若手の実業家とも言える業績を伸ばしている農業人材もありますが、まだまだ一部でしかありません。
 私は、巨椋池の散歩にいそしんでおりますが、土を踏みしめる心地よさ、空気、風、全ての恵みが、その大地から湧き上がってくるようなエネルギーを感じております。しかし、人間がどんなに頑張っても、どんなにあらがっても心が萎えるような自然災害は、農業に携わらない私には例えようもありませんが、だからこそ農業の置かれている現状を少しでも安定的に行うよう、様々な視点と多角的な観点で取り組む必要があると考えております。
 農業の未来を今こそ新たな体系で構築することにより、そのすばらしさを多くの人に知っていただきたいと常々思っております。例えば、宇治茶の手摘みは高齢化とコロナ禍で、お茶摘みさんの確保が年々厳しくなっております。単に余暇を楽しむだけではなく、それらをなりわいとしている方々との出会いの中で農業のすばらしさを体感していただく、それもまた伝統文化の需要側を増やすことにつながるのではないでしょうか。
 手摘みのお茶摘みさんは、茶生産者の皆さんそれぞれで募集をかけておられますし、もちろんベテランのお茶摘みさんを確保する努力はこれからも続けていただかねばなりません。しかし、宇治茶のよさをさらに多くの方に知ってもらうという意味も含めて、宇治茶のボランティアツーリズムを実施し、海外の旅行者も含めて体験者を募る取組をされてはいかがかと考えております。
 そこでお伺いいたします。
 体験者の方に継続的にお茶摘みを実施いただくためには、一度間口を広げて、まず体験していただく、来ていただく、見ていただくという取組から始め、関係人口を増やす取組につなげるのも有効であり、生産者の方々の思いがしっかりと伝わる取組になると思っておりますが、いかがでしょうか。
 また、こういった取組の推進には、宇治茶の魅力を一層高めることも重要です。そこで、宇治茶のブランド化をさらにブラッシュアップすることを念頭に、例えばプランナーによる商品展開の取組を京都府として主体的に実施いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。お考えをお聞かせください。
 次に、高齢社会におけるICTの活用、地域におけるスマホ教室についてお伺いいたします。
 社会環境の大きな変化の中、高齢者の皆様の日常を今後どのようにサポートしていくのかを様々な角度から点検せねばなりません。先日、宇治市の「応援クーポン」の登録の仕方で、数人の方から御指摘をお受けいたしました。LINEで申込みをせねばならず、LINEて分からない。スマホは電話機で、時々調べものはするけれど、お金のやりとり等は怖くてできない。どうして高齢者は置き去りになるのかとのことでした。
 一方で、マイナンバーカードの作成につきましては、市役所職員が様々な場所に出向き、取得のサポートをしておられます。店舗の一角であったり、コミュニティーセンターであったりと、親切丁寧に取得ができるまでのサポートは大変ありがたいことと思えます。ポイント付与がついているとはいえ、2024年秋に今の健康保険証が原則廃止され、マイナンバーカードに一本化されることになった以上、高齢者の皆さんも何とか取得に向けて取組をしてもらわねばなりません。それゆえか、市役所のマイナンバーカード作成のフロアはいつも多くの人であふれております。
 これからの高齢化社会を考えたとき、スマートフォンが描き出す社会は、買物支援であったり、公共交通の利便性向上であったり、歩行が困難になるにつれて、それはとても重要な機器となってきます。移動手段としてのタクシー利用の際、駅前のタクシー乗り場にはタクシーが止まっていないことが多くなっております。問い合わせますと、個々の車体の連絡や予約はスマホで実施されており、待機するより流しが中心となっているとのことです。
 こういったこともスマホが中心となることを実感いただき、その重要性を今しっかりと広報せねば、結果、取り残される人が多くなり、ここにも格差は生じる結果となり、高齢者のみならず、障害のある人や貧困層などコミュニケーションが取りにくい人たちにとっては死活問題にもなりかねません。
 ICTの活用が進まないのは、プライバシー問題などをめぐる慎重論が根強く、それぞれの情報を一元化することへの不安が強いからに違いはないのですが、一方で、諸外国に比べ教育現場でのICT活用が遅れ、大きな損失が社会の課題として突きつけられることとなりました。
 コロナ禍の中、コミュニケーションが取りにくい社会の中で、私たちが次なる人と人とのつながりを模索するとき、もちろん顔の見える活動の重要性は身にしみて体験したわけではありますが、コミュニケーションのツールとしてスマートフォンがあらゆる行動につながっていくことを考慮すると、この機器をツールとして使いこなす必要が出てまいります。
 さきの12月議会におきましても、デジタルデバイド対策の御質問があり、誰もがデジタル化の恩恵を受けられる環境づくりを推進される旨の御答弁がありました。
 デジタルトランスフォーメーションという言葉は、スウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる」という概念が基になっているそうです。
 そこでお伺いいたします。
 それであれば、私たちの生活、特に高齢者の皆さんがICTの活用により生きがいを感じながら住み続けられるスマート社会を実現する上でも、みんなで助け合えるコミュニティーをつくり、情報格差を是正する意味でもマイナンバーカードの普及のみならず、ICTの利便性が実感できるような取組の推進や、市町村単位での身近なICT教室を開催する等の支援をする必要があると考えますが、いかがでしょうか。お考えをお聞かせください。
 最後に、不登校児童生徒への多様な学習支援の保障についてお伺いいたします。
 令和3年度の義務教育段階における不登校児童生徒数は、文部科学省の調査によりますと、全国で24万4,940人と9年連続で増加しており、京都府内の不登校児童生徒数は4,465人と全国と同様に年々増加しており、依然高水準で推移しているところであります。
 また、不登校の定義とされる欠席日数が年間30日以上の条件に当てはまらないが欠席する傾向があるなど、事実上の不登校状況にある児童生徒がいることを鑑みますと、文部科学省調査だけでは実態が把握し切れていない現状があるのではないかと推察され、潜在的な不登校児童生徒も多数存在しているのではないかと考えられます。また、不登校児童生徒の中には発達障害の児童生徒も一定数いると思われ、不登校の背景となる事情も多岐にわたり、多様な視点での支援が必要となってきていると考えられます。
 このような中、学校ではなくフリースクール等の民間施設を利用するケースも見受けられているところでありますが、平成27年の文部科学省の調査によりますと、その利用料は1か月につき全国平均で3万3,000円程度となっており、保護者への経済的負担が重い状況となっております。
 一方、多様な学習機会を提供する民間施設への需要が高まっているのに対し、民間施設への支援などの取組をはじめ、市町の設置する教育支援センターにスクールカウンセラーを配置するなど、その機能強化にも取り組んでいただいていることは承知をいたしております。しかし、身近にこうした施設がない場合は、通うために経済的、身体的、時間的、心理的負担がかかります。やはり、身近な場所で個々に応じた多様な支援を行うことが必要と考えております。
 そこでお伺いいたします。
 いわゆる教育機会確保法の基本理念に関する条文である第3条に明記される不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の状況に応じた必要な支援を子どもたちに身近な場所で提供するために体制の充実や学校内での教室以外の居場所の確保等、さらなる早急な具体的対策をどのように講じていただけるのか、教育長のお考えをお聞かせください。
 御答弁よろしくお願い申し上げます。

◯議長(菅谷寛志君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 文化庁移転による京都府の成長についてでございます。
 文化庁の移転に向け、京都府、京都市、京都商工会議所などの経済界、文化や観光等の関係団体、市町村など、オール京都による文化庁京都移転プラットフォームを立ち上げ、参画団体が連携しながら、これまで文化庁移転の機運醸成や文化財を活用した地域活性化の取組など、様々な事業に取り組んできたところでございます。
 文化庁の移転後におきましては、地域活性化や観光、産業等、様々な分野において文化の力を生かした新しい施策を生み出していくため、移転を機に文化庁連携プラットフォームに再編し、プラットフォームと文化庁が連携して多様な取組を推進してまいりたいと考えております。
 また、議員御案内のとおり、文化庁の機能強化の一環として新設された文化観光担当などの部署には、京都府から職員を派遣いたしますとともに、京都に先行移転された地域文化創生本部を窓口に意見交換や情報共有を進めるなど文化庁との連携を深め、昨年には京料理が国の登録無形文化財に登録されるなど、具体的な成果にもつながったところでございます。
 御指摘の文化観光や食文化の担当など、京都移転の決定後に新設された分野につきましても、京都が得意とする分野であることから、今後、一層連携を強化してまいりたいと考えております。そのために、オール京都のプラットフォームを核として、文化財を活用したメディアアート観光や地域の特産品を用いた料理フェアの開催等の取組を推進してまいりたいと考えております。
 次に、文化庁職員に京都のよさを知ってもらう取組についてでございます。
 文化庁職員とその御家族に対しては、京都での生活を安心して送れるよう、京都市とも連携し、住宅情報や子育て、教育、医療、買物などの生活関連や、お祭りなどの年中行事等の情報提供に加えまして、新たな生活への不安を解消するための相談に応じますとともに、実際に事前に京都に来ていただき、住居や学校を案内するなどの取組を実施しているところでございます。
 また、京都での生活を魅力多いものと実感していただけるよう、祇園祭の山鉾巡行等の行催事に京都府の職員と一緒に参加していただいたり、和食や和菓子、茶道、華道や着物の着つけなどの教室や地域サークル、清水焼の陶器市などの定期市のほか、府民の生活の場である地域の商店街に案内するなど、日頃から文化に接することを通じて京都のよさを知っていただける機会をつくっていきたいと考えております。
 今後とも、文化庁職員の要望も聞きながら、こうした取組をさらに充実させ、京都に来られた文化庁職員に京都に来てよかったと思っていただけるように、また多くの文化庁職員に京都での勤務を希望してもらえるよう、工夫をしながら取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、NHK大河ドラマ「光る君へ」を活用した文化観光の取組についてでございます。
 「源氏物語」は、日本の古典文学の代表作であり京都が誇る文化であることから、平成20年の「源氏物語千年紀」の取組以降、古典の日などを通じて古典の魅力を発信してきたところでございます。今回、その作者である紫式部を主人公とした「光る君へ」の放送が決定されました。大河ドラマは高い視聴率と根強い人気を誇ることから、これを契機として京都文化の魅力発信とともに、ゆかりの地を観光客の誘客に活用してまいりたいと考えております。
 これまでも「麒麟がくる」や「鎌倉殿の13人」など、京都が舞台のドラマ放送の際には、首都圏での歴史講座の開催や、交通事業者との連携によるスタンプラリー、トークショーなども実施したところでございます。この結果、NHKや交通事業者とのネットワークづくりが進んでおります。また、大河ドラマをテーマにした観光素材の掘り起こしにつきましては、地元自治体とも連携し、誘客につなげるためのノウハウを蓄積してまいりました。
 令和6年に放送予定の「光る君へ」においても、NHKなどのメディアや交通事業者とのネットワークを生かしますとともに、宇治十帖の舞台である宇治市や、紫式部の夫直筆の書を所蔵する石清水八幡宮がある八幡市など、ゆかりの自治体と連携しながら、「源氏物語」のほか、紫式部やその時代の文化などについて国内外に積極的に発信してまいりたいと考えております。
 文化庁移転を契機に、京都観光の強みである各地域の文化資源の活用をさらに進め、文化観光による京都への誘客を強化してまいりたいと考えております。
 次に、ボランティアツーリズムによる農業支援についてでございます。
 議員御紹介のとおり、ボランティアツーリズムは、地域外の方々から力をお借りして課題の解決が図られるとともに、関係人口の創出などにもつながるものでございます。京都府観光総合戦略につきましても、様々な交流による関係人口の創出を目的の一つとして、抜本的な見直しを進めているところであり、ボランティアツーリズムの考え方と軌を一にするものでございます。
 京都府の農業は、近年、少子高齢化による労働力不足や消費者ニーズの多様化への対応など、地域だけでは解決できない問題が顕在化しており、こうした問題に対してはボランティアをはじめ、多くの方々に農産物の消費だけでなく、生産や加工、販売などに関わり、農業の魅力を知っていただくとともに、商品やサービスに対する要望をお伺いし、反映させていくことが有効な対策になるものと考えております。
 特に宇治茶につきましては、800年の歴史の中で培われた文化や自然、人、技術などの地域資源を持つ強みがあり、そうした技術や文化的価値の体験を観光コンテンツとして提供することは、宇治茶の価値の発信とさらなるニーズの把握にも有効であると考えております。
 既に山城地域においては、移住者の方が「茶摘み体験」と「お茶の飲み比べ」などをセットにしたツアーを提供され、多くの観光客を引きつけるなど、大変魅力的な観光コンテンツとなっております。
 京都府といたしましては、宇治茶生産の体験やストーリーを味わうことができる観光コンテンツを組み込んだ旅行プランづくりを進め、地域の生産者と観光客をつなぐ役割を果たすことで、関係人口の増加、ひいては労働力不足の解消や需要拡大にもつなげてまいりたいと考えております。
 次に、宇治茶ブランドのブラッシュアップについてでございます。
 宇治茶は、長い歴史と伝統文化に培われたブランド力があり、毎年、全国茶品評会で最優秀の農林水産大臣賞を獲得するなど高級茶として高い評価をいただいております。しかしながら、近年、他県産の品質が向上するとともに、生活スタイルの変化に伴い茶の消費が減少する中、宇治茶の産地を維持していくためには、宇治茶のブランド価値を一層高めていく必要があると考えております。
 そこで、品質向上のための宇治種への改植や被覆棚などの生産基盤の整備支援、高品質茶の需要を創出するための歴史・景観などの文化的価値を体感いただく機会の提供などに取り組んでまいりたいと考えております。さらに、消費者の健康志向に対応するため、産学公連携の研究により、高級宇治茶に多く含まれ動脈硬化を抑制する効果が期待される機能性成分「ポリアミン」などの機能性表示に必要なエビデンスの構築と新商品開発に取り組みますとともに、プランナー等を活用し、「健康」をキーワードとしたブランディングを進めてまいりたいと考えております。
 今後とも、宇治茶の持つ高品質や健康への効果といった価値に加え、その背景にあります自然や歴史、技術などの魅力を消費者に伝えることで、さらなるブランド力の向上に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、高齢化社会におけるICTの活用についてでございます。
 テレワークやネットショッピング、キャッシュレス決済が広く浸透するなど、社会全体のデジタル化が急速に進展し、スマートフォン等のデジタル機器が生活必需品となりつつあります。このような社会情勢の中、誰もがスマートフォン等のデジタル機器を使いこなし、住み慣れた地域で生き生きとした生活を送っていただくためには、ICTの活用についての支援が大変重要だと考えております。
 このため京都府では、スマートフォンをお持ちでない方も含めて、インターネットやSNSの活用方法などを習得いただける教室を開催しているところでございます。また、交通事情などにより教室まで足を運んでいただくことが困難なケースもあることから、受講者の近くまで講師が出向く移動型スマホ教室の開催を支援しております。加えまして、買物など日常生活の中で困ったときに身近な方々に相談いただけるよう、ICTの活用を手助けするボランティアを養成するなど、地域の実情に応じた取組を行っているところでございます。
 これらの取組を進めている中で、高齢者の方々に継続してICTを活用いただくためには、自ら興味を持って使っていただき、利便性を直接体感するためのきっかけをつくることが重要であると感じております。このため、今年度もスマートウォッチやマイナポータルを活用して、住民の方々が日常的に健康チェックとサポートを受けられるサービスの提供や、災害情報や避難所の混雑情報と連携し、最適な避難経路を案内するアプリの避難訓練での活用を予定しております。
 今後とも、高齢者の方々が充実したスマートライフを送れるよう、地域の実情等に応じたきめ細かな支援を継続いたしますとともに、改定予定の京都府スマート社会推進計画においても、さらなる支援策を検討し、誰もが生きがいを感じながら活用できるスマート社会の実現を目指してまいりたいと考えております。

◯議長(菅谷寛志君) 前川教育長。
   〔教育長前川明範君登壇〕

◯教育長(前川明範君) 不登校児童生徒への支援についてでございます。
 これまで、市町の教育支援センターの機能強化やフリースクールへの支援などを行ってきたところでございますが、不登校児童生徒が急増していることから、教育機会確保法の基本理念を踏まえ、その要因や背景、状況に応じた支援が一層行われるよう対応を強化する必要があると認識しております。
 このため、不登校児童生徒に対する支援体制と学びの場の充実を図ることとし、その経費を今定例会に提案の予算案に盛り込んだところでございます。
 特に、支援体制につきましては、市町教育委員会や学校現場からも、悩みやストレスを抱える子どもへの対応として、スクールカウンセラーの派遣回数の拡充について要望いただいており、来年度からスクールカウンセラーの派遣が月1回であった小学校に対し月2回に拡充することとしております。これにより、身近な場所である学校での相談を充実するとともに、子どもの状況の変化に、よりきめ細かく対応できる体制の充実を図ってまいります。
 併せて、新たにオンラインでのカウンセリングを導入し、現在支援につながっていない子どもの相談機会を確保することとしております。また、今年度まで、教室に入れない児童が学ぶ場として、校内に別室を設け一人一人の状況に応じた支援を行うモデル事業を小学校1校で実施してまいりました。子どもが通いやすい場所で安心して学習支援や相談を受け、早期に学習や進学への意欲が回復でき、教室復帰につながったという成果も出てきております。
 このため来年度は、教員の加配措置等を拡充し実施校数を増やすとともに、小・中学校が連携し中学校への進学後も学びの保障に向けた支援が継続できるよう、内容を充実し実施したいと考えております。
 府教育委員会といたしましては、引き続き、学校復帰への支援はもとより、学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、学びの保障と社会的自立を目標に、誰一人取り残さず、児童生徒が安心して個々の状況に応じた教育を受けられる環境を整えられるよう取り組んでまいります。

◯議長(菅谷寛志君) 田中美貴子議員。
   〔田中美貴子君登壇〕

◯田中美貴子君 まず、文化庁移転についてですけれども、オール京都によるプラットフォームの取組ということでございますので、大いに期待をいたしております。まさに、この時期に「光る君へ」ということは非常にいいタイミングではあったのかなと思っておりまして、私は、今日は紫式部の着物を着てまいりまして、また帯も百人一首ということで、ちょっと私もまた「光る君へ」を宣伝しないといけないかなと思って今日は着物を着てまいりました。 本当に文化庁移転による京都というものは、需要側をどのように増やすかということも非常に大事なことだと思っておりますので、さらに様々にお取組をいただきたいと思っておりますし、観光素材を見つけ出していくというふうなことも、これからまだまだやっていただかなければならないのかなと思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。 農業を成長戦略にするというふうなことなんですけれども、まさに今、知事がおっしゃっていただきましたように、ボランティアツーリズム、これが私は新たな間口を広げる取組になっていくと思っておりますので、ぜひとも推進をいただきたいなと思っておりますし、よろしくお願い申し上げます。 スマホ教室についてなんですけれども、まさか携帯がこんな便利なものになるとは思ってもみなかったものですから、もっともっとこれからも使えるようになりたいなと思っていますし、実はもっと簡単に使えるようになるのではないかなと思っておりますので、そういったことも踏まえて京都府としても御支援をいただきたいと思っております。 最後に、不登校児童生徒への多様な学習支援の保障についてですけれども、本当に支援体制をしっかりとやっていただきたいと思っておりますし、学校内の別室モデル事業もしっかりとやっていただけるということですので、ありがたく思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。 最後になりましたけれども、私たち府民クラブ京都府議会議員団は、共生社会の実現に向けて今後も精進してまいりますことをお誓いし、私の代表質問を終了させていただきます。 御清聴ありがとうございました。(拍手)