1 これまでの西脇府政の検証と今後への期待について
2 教育と移住政策、子育て環境日本一との融合について
3 経済活動・府内の名目GDP指標を踏まえた政策について
4 環境政策について
5 漁業・水産業の現状と課題について
6 集中豪雨対策について
7 その他

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◯議長(菅谷寛志君) 日程に入ります。日程第1、代表質問を行います。
 通告により、順次発言を許可します。
 まず、酒井常雄議員に発言を許可します。酒井常雄議員。
   〔酒井常雄君登壇〕(拍手)

◯酒井常雄君 府民クラブ京都府議会議員団の酒井常雄です。会派を代表して、通告した数点について質問させていただきます。
 まず、西脇知事は、さきの京都府知事選挙において再選を果たされ、第52代京都府知事に就任されました。京都府知事再選に全力で取り組んだ会派として、ダブルスコアであった結果に府民の期待の大きさを感じ、二元代表制の一翼として緊張感をさらに強くしたところです。
 結果は、府民の不安事象であるコロナ、経済、生活、国際情勢の影響などへの対策に対する期待が投票行動を促し、実績のある西脇知事への投票につながったのだろうと思います。これは選挙期間中の新聞社による調査において、半数以上が「府のコロナ対策を評価する」と回答していることからもうかがえます。
 また、知事選挙投票日に新聞社が実施した出口調査の質問項目「知事選で重視した争点」への回答では、最も多いのが「景気・雇用対策」で24%、次に「コロナ対策」13.4%、そして「子育て・教育政策」11.4%、「環境対策」3.1%と続きます。これら課題への対応にも多くの府民が期待しています。
 さて、今回の6月補正予算案は、西脇府政2期目をスタートさせる肉づけ補正として、誰もが未来に夢や希望を持てる「あたたかい京都づくり」の実現に向け、「府民の命と健康を守り抜く安心の京都の構築」「子育てにやさしく誰もが温もりを感じられる京都の実現」「夢や希望にあふれる魅力と活力の京都の創造」の3つの柱で構成され、あたたかい京都づくりを始動させ、先ほどの府民期待にも対応し、様々な課題の解決と京都の未来づくりに向けた意欲的な予算となっていることについて、会派を代表して評価するものです。
 そこで、これまでの西脇府政の検証とこれからの西脇府政への期待から要望・質問いたします。
 まず、コロナ対策についてですが、新型コロナウイルス感染症は科学的根拠や過去の事例がない、もしくは僅かである状況下で、困難さを抱えながら試行錯誤の中、医療関係団体、経済界、労働界などオール京都の体制で取り組み、その施策には一定の効果が見られました。
 一方、これまで見えにくかった課題が浮き彫りになったことから、今後は新たな変異株感染への備えや長期化への対策など、これまでの取組の早期検証を踏まえた対応策、そして近隣府県との協力体制の一層の強化などを求めます。
 加えて、コロナにより大きな影響を受けた府内事業者の現状とPOSTコロナ時代を見据えて、昨年6月に策定された「新しい産業戦略」の効果にも期待します。
 また、過日、我が会派から知事へ緊急要望いたしましたロシアによるウクライナ侵攻等から「原油価格・物価高騰等」の影響を受けた企業活動や府民生活への支援について、早速今回の6月補正予算案で緊急対策として多岐にわたる緊急支援を計上していただいております。他県でも、原油価格・物価高騰等による不安を抱える事業者や県民に向けた相談窓口及び支援体制の情報発信とともに実態調査を行っているとのことで、改めて現状の厳しさが指摘されています。京都府においても、個別訪問などを含めて、早期かつ効果的、継続的対応をお願いいたします。
 次に、生活への緊急支援やコロナ禍の孤立対策についてですが、コロナ禍で孤独、孤立、生きづらさを感じる人が増えており、自死を選択する人の増加傾向、特に女性の増加傾向がうかがえました。厚労省の有識者会議が本年4月、5年ごとの自殺総合対策大綱の見直しに向けてまとめた報告書によると、依然として日本の自殺死亡率は先進国の中で高い水準にあり、自殺者は昨年1年間で2万1,007人となっております。
 2020年に過去最多、499人だった小・中・高生の自殺は、昨年も473人と深刻な状況が続いており、コロナで学校行事が減る中、子どもたちの孤独や孤立、SOSを見逃さない環境づくりも課題だと考えます。
 厚労省の統計によると、昨年の京都府における自殺者数は376人で、前年比プラス21人、5.9%増と2年連続で増加となった一方、人口10万人当たりの自殺者数・自殺死亡率は全都道府県で3番目の低さとなっております。
 お尋ねします。
 京都府は、電話相談体制の拡充やオンライン相談の実施、相談者に継続的なアプローチで寄り添う伴走支援の実施などに取り組むと同時に、これまで我が会派から指摘してきた次の2項目への対策強化には、3月の時点で、1つ目の「独り親家庭のダブルケアに関する実態把握と対策」については、令和3年度母子父子世帯実態調査に介護の状況に係る調査項目を加えて調査を実施し、現在集計・分析中であるとされており、2つ目の「ヤングケアラーへの具体的対策」については、令和3年度、介護支援専門員やスクールソーシャルワーカー等に対し、ヤングケアラー発見のための着眼点や発見時の対応方針などについて研修を実施。令和4年度に向けて、ヤングケアラーを早期に発見し、関係機関が連携して支援につなげる仕組みづくりを検討中であるとされていましたが、現状はいかがでしょうか。今後の見通しを含めて答弁願います。
 次は、少子化対策についてです。
 京都府の合計特殊出生率は、長期間にわたり全国平均以下の低い水準で推移しています。出生率の低迷は、若者や子育て世代にとって結婚や子どもを持つことに対する希望が実現し切れていないことの表れです。この間、少子化が要因の一つとなって、人口減少、高齢化も急速に進展しました。少子化は、要因が多岐にわたること、対策・取組効果が現れるまで期間がかかることなどから、その対策には取組の継続だけではなく、常に事業を検証し続けることが重要だと考えます。
 知事が表現された「少子化対策に特効薬はない」を踏まえた打開策の策定が求められます。
 そこで、少子化対策と行政の役割について、過去にも議論された「少子化対策を行政が行うべきか」について、改めてお尋ねします。
 まず、「行政が少子化対策をすべきではない」との意見ですが、この意見は、結婚・出産は個人的なものだから行政は介入すべきではないとの考え方を基にするものです。もう一つは、「個人のために税金をかけるべきではない」との考え方です。現実に「結婚したい、子どもを産み育てたい」という若者は圧倒的に多く、彼らの希望をかなえることが同時に「未来」「持続可能な社会」へつながるものであれば、それを行政が税を使って後押しする、支援することは必要だと考えますが、少子化対策についての行政の役割、対応について知事の御所見をお伺いします。
 続いて、京都府の合計特殊出生率について尋ねます。
 合計特殊出生率について、京都府は2018年1.29であった数値を、全国平均、当時は1.42でしたが、これ並みにとの目標を掲げておられますが、2021年は、京都府は1.22で、全国平均は1.30でした。数値の変化は「出生率は減少しているが、全国平均には近づいている」との現状を示しています。ただ、この数値が1.6を下回った状態が30年続くと、人口は減少し、高齢化も上昇するとされています。知事は、合計特殊出生率の現状をどう評価されていますか、お答えください。ちなみに我が国の合計特殊出生率は、6年連続の低下となっています。
 次に、少子化の要因と対策についてです。
 日本で人口減少が始まったのは、移民や長寿化の影響もあるので実際には2008年頃と言われており、合計特殊出生率については、1990年の「1.57ショック」を契機として、政府は少子化を問題として認識し、対策を開始して、1994年のエンゼルプランなど四半世紀にわたって様々な取組がなされてきました。
 ただ、1990年代の少子化対策は、戦前の「産めよ、殖やせよ」という人口政策への反省や、女性の社会進出への足かせになりかねないとの懸念などから、明確に出生促進を目標としたものではなく、保育サービスの拡充と育児休業制度の充実など、仕事と家庭の両立支援が中心でした。この1990年に生まれた子どもが30歳になったのが、2020年となります。要するに出生数が少ない、人口が少なくなっている世代が、既に出産から子育て期に入っているのが現在です。
 我が国の出生数は、2018年は約92万人、19年は87万人、20年は約84万人、2021年は81万1,604人と、回復の兆しは見えず、2021年は明治32年に統計を取り始めて以降、最も少なくなっています。京都府も2021年は1万5,818人と過去最少でした。このまま行けば2019年に生まれた子どもたちが出産適齢期になる30年後、2050年前後には、出生数は年60万人程度まで低下すると言われています。ただ、過去には一見不思議なデータがあり、合計特殊出生率は、1990年の1.54から2000年には1.36まで低下しているのですが、その間の出生数は1990年の122万人から2000年の119万人と、ほとんど減っていません。これは団塊ジュニア世代の人口規模が大きかったために、女性1人当たりの子どもの数は減っても、全体としてはあまり減らなかったからで、それが政策担当者の危機感を薄めたのではないかと指摘されています。
 京都府の直近3年間の出生数は、年平均減少率が4%を超え、出生数減少は拡大が続いており、さきに示したとおり、出生率も同じく減少傾向で推移しています。このような出生数減少の大きな要因には未婚化があり、従来の少子化対策では比較的支援の少なかった未婚の若者を対象とする施策が必要であると考えます。
 未婚の背景には、若者の経済的な不安定さがあることから、非正規雇用の待遇改善や正社員化の促進、職業訓練の充実等により、若者の雇用を改善し、将来の生活不安を解消して結婚に踏み切れるようにする「思い切った、かつ若者に対してインパクトのある」政策が必要です。また、結婚や出産でキャリアを中断・復帰した女性の待遇改善等により、結婚・出産と就業の二者択一関係を解消し、結婚の機会費用を下げることも有効ではないでしょうか。少子化対策が結果を得ていない状況には、未婚者の心に寄り添った調査、分析、政策提言ができていなかったからだとの指摘があります。つまり、少子化の主たる原因は「未婚化」、すなわち結婚する人の減少にあるということです。
 実は、そのことは人口学者によってかなり昔から指摘されていました。女性1人当たりが産む子どもの数といえば、通常、夫婦が持つ子どもの数と思う人が多いと思いますが、実際は違います。日本では、結婚している女性は2005年ぐらいまでは大体平均2人以上の子どもを産んでいました。全ての若者が「結婚したら平均2人以上産む」に当てはめれば、日本の合計特殊出生率は2を上回っていたのです。しかし、日本では未婚者はほとんど子どもを持たない、ゆえに結婚しない人が増える、すなわち未婚率が上昇すれば合計特殊出生率は下がることになります。
 実際、夫婦の子どもの平均人数は、1992年2.21人、2005年2.09人、2015年1.94人と、大きな差は見られません。早い段階から未婚化・晩婚化が少子化の原因と指摘されていましたが、政府は2010年代まで結婚対策を打たなかったのです。なぜか。実は人口学者でも1990年代の主流は、「若者は独身を楽しみたいから結婚を遅らせているだけで、いずれ皆結婚するはず」と判断する人が多かったそうで、そもそも結婚対策という事業が必要であり、可能だと考えられていなかったのではないかと考えます。
 そこで、京都府の婚活支援について尋ねます。
 日本では1974年以降、半世紀近く合計特殊出生率が国の人口規模を維持できる水準である約2.1を下回る状態が続いており、少子化は進展し続けています。少子化による現役世代の減少は、社会保障制度や経済活動、政治、社会関係資本に様々な負の影響を及ぼすとされており、これまで様々な議論、対策が行われてきましたが、回復傾向は見られていません。
 ここで4つのデータを紹介します。
 1つ目は、京都府民の希望出生率の試算です。2015年の京都府少子化要因実態調査のデータを利用し、国の希望出生率の算出方法に従って府民の希望出生率を試算すると1.97です。
 2つ目、京都府の18歳から34歳の女性の有配偶者の割合は27.6%、独身者の割合は72.4%。
 3つ目、京都府の20歳から34歳の女性独身者のうち、結婚を希望する者の割合は91.6%。
 4つ目、京都府の20歳から34歳の女性独身者の希望子ども数は2.21人。
 まとめると、京都府の18歳から34歳の女性の独身割合は72.4%で、そのうち20歳から34歳の結婚希望者は91.6%、そして、この結婚希望者の希望子ども数は2.21人。すなわち人口規模を維持できる水準である合計特殊出生率約2.1を超えています。
 昨年10月に作成された「地域子育て環境見える化ツール」には、20の評価分野が合計特殊出生率に影響を及ぼす道筋を表した「子育て環境フロー」が示され、その「因果フロー」からは、出生率に影響を及ぼす要因数が多く、様々な分野にわたっていることが確認できます。
 さらに、府内市町村の多くでは、合計特殊出生率が全国平均に追いつき・追い越すため、結婚要因を高める子育て環境に取り組むことが必要と指摘しています。
 2015年10月10日、京都府は少子化対策が課題となる中、結婚を希望する独身者の婚活を支援するとともに、府民が婚活に前向きに取り組める社会的機運を醸成するため、婚活支援団体や婚活マスターと連携し、結婚の希望を持ちながら一歩踏み出せないでいる独身の方々を寄り添い支援する拠点として「きょうと婚活応援センター」をオープンしました。
 当初は、先ほどの「行政が行うべき事業か」について、いろいろな議論があったと伺っていますが、これまでを振り返り、きょうと婚活応援センターの取組効果について、少子化対策が課題となる中でのスタートでしたので、少子化対策効果についての2点をお尋ねします。
 本年5月からは、休日における婚活相談等に対応するため、毎週日曜日に開所するとともに、6月からは、より一層出会いの機会を増やす目的でのイベント「きょう婚マッチ」を開催されていますが、活動をバージョンアップした背景と、今議会に提案されている「きょうと婚活応援センター強化事業」の具体的取組内容と成果目標をお示しください。
 また、少子化対策について、「これまで少子化対策が未婚化を問題にしてこなかった」との指摘に対しての知事の御所見と今後の少子化対策をお伺いします。
 さらに、AI婚活なども政府の補助金対象となっている中で、今後の婚活応援センターの活動方針・ビジョンについてもお示しください。
 国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」(2015年)では、子どもを希望数まで持たない理由を30歳から34歳の既婚女性に尋ねたところ、最も多かったのは「子育てや教育にお金がかかり過ぎるから」でした。また、未婚女性の結婚相手に求める条件のうち、年収については400万円が最多で、この年収に当てはまる未婚男性は25.1%程度だということです。未婚男性の平均年収は393万円で、条件と現実の数値には大きな差が見られます。もちろん奨学金の問題、実質賃金の問題の影響も大きいものと思われます。
 私も少子化対策として、結婚や子育ての経済的側面を重要視した政策が求められると考えます。経済が不安定な若者に対しての支援政策がもっと早くなされていれば、現在の状況は変わっていたのではないかと思いますが、「経済的問題を重視していなかった」「支援が遅れた」との指摘に対する知事の御所見と今後の方針をお伺いします。
 次は、子育て環境、「地域子育て環境見える化ツール」の活用についてです。
 昨年11月3日、京都府は新たな取組として、きょうと子育て環境日本一サミットを開催し、WEラブ赤ちゃんプロジェクトの賛同宣言を発信。その後も、地域別のサミット開催などに順次取組を拡大していますが、取組の目標に掲げてある「地域子育て環境の充実度の数値化指標を『地域子育て充実度見える化システム』として構築する」については、本年3月の時点で「地域子育て環境見える化ツール」を作成し、各地域で子育て環境の充実に向けた課題の把握、その解決に利用いただくよう市町村に説明に回っているとの状況でした。
 同ツールは、京都府内の市町村間で出生率に差があること、さらに出生率の近い地域が空間的に連続していることに着目し、地域特性と出生率の関係、結婚や子育てを取り巻く環境の広域的効果を見える化することなどを目的に作成されたものと理解しております。すなわち、全ての市町村が、市町村だからこそ取り組める少子化対策を見つける、確認するための仕組みと言えます。
 私は2020年2月の代表質問で、各市町村だからこそ取り組める少子化対策について、「従来の考え方の少子化対策、子育て支援策だけでは困難であるのは明らかである。やはり、既成概念にとらわれない考え方でブレークスルーを起こすことによる共生のまちづくりが必要だ」との観点から、以下の調査結果を報告しております。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年までに人口が60%近く減少するだろうとされた中、京都府下に合計特殊出生率・有配偶者率とも全国平均を上回る町があります。それが、人口2,000人弱の伊根町です。伊根町のここ10年間の平均出生数は11.1人です。そこで、会派で伊根町へ調査に伺いました。子育て支援策として、医療費無償化、教育費無償化、進学支援などに取り組んでおられるのですが、それだけでは説明がつきにくい。そこにあったのは、コミュニティーでした。伊根町で多くの赤ちゃんが生まれる背景には、昔ながらの漁業を中心とした地域コミュニティーが維持されていることによる安心・安全な子育て環境がありましたとの内容です。
 2015年から2018年の府内市町村の合計特殊出生率を見ると、京都府が1.28、全国が1.38であるのに対して伊根町は2.00です。最も低いのは笠置町で0.53です。
 そこでお尋ねします。
 出生率上昇を目的に、「ロジックとデータ」を中核とした実効性ある子育て環境の向上に取り組む京都府オリジナルの「地域子育て環境見える化ツール」の活用状況はいかがでしょうか、お答えください。
 さらに、同ツールの今後の活用と、少子化・人口減少への対策についてお尋ねします。
 以上、ここまでお願いいたします。

◯議長(菅谷寛志君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 酒井議員の御質問にお答えいたします。
 酒井議員におかれましては、ただいまは会派を代表されまして、私の当選に対しまして温かい祝意と励ましをいただき、また今回の補正予算案に対しましても評価をいただき、厚く御礼を申し上げます。
 独り親家庭のダブルケアについてでございます。
 昨年度、独り親家庭を対象に実施した実態調査において、回答者の約1割が育児と介護を同時に担っており、そのうち4人に1人は家族の手助けがなく、中には労働時間を減らしたり、離職する方もいるなど、厳しい状況が明らかになりました。
 京都府といたしましては、市町村や関係機関と連携し、ケアを担う方の身体的な負担を軽減するため、子どもの預かりや家事支援を行う支援員の派遣を行うとともに、精神的な不安を和らげるため相談窓口に心理専門員を配置しているところでございます。今後は、調査で明らかになった厳しい状況を踏まえ、コロナ禍で孤立を招かないよう取組をさらに強化してまいりたいと考えております。
 次に、ヤングケアラーへの支援についてでございます。
 ヤングケアラーを適切な支援につなげるため、専門のコーディネーターを配置した「京都府ヤングケアラー総合支援センター」を本年4月に立ち上げたところでございます。今後は、ヤングケアラーについての認知度向上を図るとともに、早期発見・早期支援につなげるため、来月から相談事例や相談先を記載したチラシや携帯型のカードを学校や関係機関で配布することとしております。
 さらに、市町村や学校、福祉施設などの関係機関との連携を強化するため、夏頃を目途に関係機関の役割等を整理した連携支援マニュアルを作成することとしております。
 併せて、地域単位でネットワーク会議を開催し、顔の見える関係づくりを進め、ヤングケアラーが学業や進学などを諦めることなく将来に希望を持って成長していけるよう、関係者が一丸となって、個々のケースに応じた支援を展開してまいりたいと考えております。
 次に、少子化対策と行政の役割についてでございます。
 私たちはこれまでに経験したことのない少子高齢化・人口減少社会を迎えており、地域社会を維持し、社会全体の活力を生み出す観点からも、少子化対策は真正面から取り組まなければならない喫緊の課題であると考えております。
 議員御指摘のとおり、若い世代の結婚をめぐる状況を見ると、男女ともに多くの人が、いずれ結婚することを希望されながら、適当な相手に巡り会えない、資金が足りないなど、様々な理由でその希望をかなえることができない状況にあります。こうした方々に対して、出会い、結婚から妊娠・出産、子育て、保育・教育、就労に至るまでの総合的な支援を行い、一人一人の夢や希望が実現できるよう環境整備を行うことが行政の役割だと考えております。
 次に、京都府の合計特殊出生率の現状の評価についてでございます。
 京都府における令和3年の合計特殊出生率は、前年の1.26から0.04ポイント低下し1.22となっており、依然として全国の水準1.30より低い状況にございます。経年で見ても、全国的な傾向と同様に平成27年以降は低下傾向となっており、まさに危機的な状況であると考えております。
 京都府では、結婚されている女性の出生率は全国平均並みであるものの、未婚率は全国に比べて高いという特徴があり、令和2年の国勢調査の最新の数値でもその傾向は変わっておりません。今後も同様の少子化傾向が続くと考えられることから、子育て環境日本一の実現に向け、結婚や出産の希望を持つ方の希望がかなえられるよう、より一層取組を推進していく必要があると考えております。
 次に、未婚化問題ときょうと婚活応援センターの取組効果、少子化対策としての効果についてでございます。
 平成26年度に実施した府民の意識調査では、20歳から44歳の未婚者の8割以上が結婚を望み、その前提条件として出会いの機会を求められていたことから、平成27年10月に京都府の婚活支援の拠点として、きょうと婚活応援センターを開設し、京都府として婚活支援事業に取り組んでまいりました。
 きょうと婚活応援センターでは、NPOや地域団体、結婚を希望する方にアドバイスなどを行う婚活マスターと連携し、婚活イベントなどを展開してきました。開設から約7年間で5,000組を超えるカップルが成立し、900組近くの方々が成婚されるなど、結婚の希望を持ちながら一歩踏み出せないでいる方々の結婚支援の取組として一定の効果を上げているところでございます。
 京都府の場合、未婚率は高いですが、結婚された女性が子どもを産む割合は7割以上と、全国平均とほとんど差がございません。そのため少子化対策としては、成婚される方の増加が非常に重要であり、結婚を希望する方々の婚活を支援するため、きょうと婚活応援センターが実施する婚活事業の充実も必要と考えているところでございます。
 次に、きょうと婚活応援センターの運営改善についてでございます。
 きょうと婚活応援センターでは、より多くの会員が活動に参加いただけるよう、昨年8月に月1回の日曜日の開所を始めましたところ、定員を大幅に上回る申込みが続いており、なかなか抽せんに当たらないとの声が上がるなど、日曜開所の拡大が課題となっておりました。そのため本年5月から毎週日曜日を開所したところ、会員の方からイベントに参加しやすくなったと好評をいただいたほか、コロナ禍の影響で減少傾向にあった会員登録数が、5月末時点の前月比で増加に転じたところでございます。
 さらに日曜開所に合わせ、今月の5日から新たに開始したセンタースタッフが主催する「きょう婚マッチ」イベントを一日に4回開催することにより、年間のイベント開催回数を倍増させてまいりたいと考えております。
 次に、きょうと婚活応援センター強化事業についてでございます。
 昨年11月に京都サンガの試合観戦と婚活を融合させたモデル事業を実施したところ、定員を上回る申込みがあり、参加者の約4割がカップルになるなど高い効果が確認できたことから、今年度から男女が自然に盛り上がることができるスポーツ観戦と婚活を組み合わせた「スポーツ婚」をセンター主催事業として実施したいと考えております。
 また、これまで会員同士のマッチングについては、経験豊富な婚活マスターが会員同士の相性を判断して引き合わせてまいりましたが、若者の価値観が多様化する中、これまで以上に出会う機会を増加させるため、会員の価値観や趣味・嗜好等のアンケート回答データを基にAIを用いて相性の良いお相手探しをサポートするシステムを導入することとし、スポーツ婚事業と併せて必要な予算を今定例会に提案しているところでございます。
 これらの取組の成果目標についてでございますが、京都府子ども・子育て応援プランで「きょうと婚活応援センター関連婚活事業によるカップル成立数を令和2年から6年の累計で5,000組を目指す」という目標を設定しているほか、現在進めております総合計画の改定作業の中で、新たな目標の設定を検討してまいりたいと考えております。
 次に、きょうと婚活応援センターの今後の活動方針とビジョンについてでございます。
 少子化が全国的に進行する中、その要因として未婚化の影響が大きいという京都府の特徴を踏まえ、きょうと婚活応援センターを中心に、結婚の希望をかなえるため、さらなる出会いの場の創出が必要と考えております。そこで、今年度は毎週日曜の開所や新たなきょう婚マッチイベントのほかに、今定例会に提案しておりますAIマッチングシステムやスポーツ婚など、男女の自然な出会いを提供するイベント型の婚活支援の強化に取り組んでまいりたいと考えております。
 さらに、京都への移住に関心を持つ独身者に、移住支援と京都府内の独身者との婚活を一体的に支援する「移住婚」プロジェクトの開始など、部局間連携により京都の持つ強みを婚活支援に生かす取組を強化してまいりたいと考えております。
 今後とも、結婚の希望を持つ独身者の希望がかなえられるよう、子育て環境日本一・京都に向け、これまでの取組にとどまらない総合的な婚活支援を進めてまいりたいと考えております。
 次に、経済的側面を重要視した少子化対策についてでございます。
 京都府では、若者が安心して結婚、妊娠・出産できるよう、経済的な基盤の安定に向け、京都ジョブパークにおける非正規雇用労働者の正規雇用化に向けたワンストップ支援や、企業と連携した奨学金返済支援などの取組を進めてきたところでございます。
 また、議員御指摘のとおり、理想の子ども数を持たない理由として、子育てや教育にお金がかかり過ぎるという経済的要因が影響していることから、子育て支援医療助成制度や私立高等学校あんしん修学支援事業等の全国トップクラスの支援により、子育てにかかる経済的な負担の軽減に努めているところでございます。
 今後とも、若者や子育て世代が結婚し、子どもを産み育てたいという希望を実現できるよう、経済面の不安・負担の軽減などの取組を進めてまいりたいと考えております。
 また、今後の少子化対策につきましては、結婚したい、子どもを持ちたいという方々の希望をかなえる婚活支援はもちろんとして、出会い、結婚から妊娠・出産、子育て、保育、教育、就労まで切れ目のない総合的な支援をさらに充実・強化するなど、子育て環境日本一・京都の実現を目指し、粘り強く取組を進めてまいりたいと考えております。
 次に、地域子育て環境見える化ツールについてでございます。
 子育て環境日本一の実現のためには、地域の皆様に自発的に課題解決に取り組んでいただくことが重要だと考えております。地域子育て環境見える化ツールは、地域の子育て環境と市町村の合計特殊出生率との関係に着目し、どのように子育て環境の向上に取り組めば出生率の上昇に効果があるのかをロジックとデータに基づきお示しし、施策形成に役立てるようにした京都府オリジナルのツールでございます。
 具体的には、出生率上昇との因果関係が認められる雇用の安定性、交通利便性、人々のつながりなど、20の評価分野の地域別データを可視化いたしますとともに、各分野がどのように出生率の上昇につながるかを図式化することで、市町村の政策担当者が地域の子育て環境の強みや課題を客観的に把握し、それに対応する効果的な施策を企画・実施しやすくするものでございます。
 令和3年度は見える化ツールをより使いやすいものにするため、全ての市町村と意見交換を行いますとともに、ツールの活用に関する研修会を実施したほか、宇治市と宮津市ではツールを活用した地域の子育て環境の強みや課題のモデル的な検証が行われたところでございます。
 今後は、今年3月に公表した見える化ツールを本格的に市町村の現場で活用いただけるよう、引き続き研修会を開催いたしますとともに、市町村の子育てにやさしいまちづくりモデル事業交付金の採択条件に本ツールの活用を組み込むほか、専門家の派遣によりまして魅力的な地域づくりに向けた本ツールの活用を支援してまいりたいと考えております。

◯議長(菅谷寛志君) 酒井常雄議員。
   〔酒井常雄君登壇〕

◯酒井常雄君 ありがとうございました。もちろん結婚・出産というのは、個人の選択の自由の範囲であるというのは、これは言うまでもないことなんですが、今、知事もおっしゃいましたように、データ、ロジックを踏まえて府民の皆さんにいかに納得していただける政策が提言できるか、もしくは実行できるか、ここにかかっているかと思います。
 そして、一つ、婚活婚についてお話をいただきましたが、それも工夫ですよね。今までなかったことですし、工夫なんですが、さらに次の質問では、婚活と移住に関してなんですが、移住については教育と移住政策、子育て環境日本一との融合についても御質問させていただきたいと思います。
 京都府は、都道府県レベルで唯一移住促進条例を制定し、新たな働き方や移住ニーズの多様化に対応しながら、府内への移住促進と地域活性化に取り組んでおり、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、密な都市生活を回避する新たな価値観が生まれ、テレワーク等の普及により国民の意識や行動が変容しており、地域での副業や二地域居住など、地域社会の担い手として活躍できる地域づくりを進め、コロナ禍で高まった地方への分散の機運を移住・定住につなげる施策を展開しています。
 「コロナ禍により地方への移住に関して関心が高まり、テレワークなど新しい働き方が認知されてきましたが、こうした変化を踏まえた移住ニーズの多様化に十分に対応できていない」「多様な目的を持って移住する者を受け入れ、移住者や関係人口が住民とともに自分の特性を生かせる環境を整備することが必要」「地域活性化を図るため移住促進条例を全面改正し、農村移住等にこだわらず、移住を特に促進する地域を市町村において指定する」ことなどが指摘され、現状は、「農村部を中心とした移住促進だけでなく都市部も対象に含む、多様化するニーズに対応した移住促進へと条例を本年4月に改正」「地域の担い手として『関係人口』の方々も活躍できる地域づくりを推進」しており、これら政策の効果として、京都府を対象にした移住相談件数が増加傾向にあり、総務省調査による移住相談窓口等において受け付けた相談件数も、2018年4,916件、全国24位であったものが、2020年7,262件、全国14位と増加している状況は、政策効果を示す良いニュースだと思います。
 今後は、移住と子育て環境日本一とのリンクが求められ、特に「教育移住」や「子育て移住」を府として定義し、具体的な事業の検討により移住政策と子育て政策を融合することを求めます。このような融合事業を進めることで、子育て世代の京都への定着だけでなく、府外の子育て世代が居住地を検討する際の好材料となります。
 そこでお尋ねします。
 子育て環境日本一を目指して取り組む関連施策について、移住相談窓口などで積極的に発信するなど、子育て環境の充実と移住の促進をリンクさせる取組についての検討を求めますが、知事のお考えをお示しください。
 次は、経済活動、京都府内の名目GDP指標についてです。
 京都府内総生産額の数値は、京都府政策企画部企画統計課のデータによると、2018年度における京都府の府内総生産額(名目GDPの府内分)は前年度比0.4%減の10兆6,655億円で、前年度より減少となったのは実に5年ぶりでした。これは、我が国の名目GDPの1.89%に相当し、京都府の全国での順位は、47都道府県の中で広島の2.07%に次いで第13番目となります。
 10年前の2008年度のシェアは1.88%でしたので、このシェアは0.01ポイントほど拡大しています。シェアの上昇は全国21番目です。要するに「規模に比べるとGDPは伸び悩んでいる」との評価になろうかと思います。また、2019年度における京都府の府内総生産額(名目GDPの府内分)は10兆7,661億円となっております。
 さらに、この6月8日に内閣府が発表した、本年1月から3月の実質GDP改定値は、前期比の年率換算で0.5%減となり、昨年7月から9月期以来、2四半期ぶりにマイナスとなっています。感染力の強いオミクロン株の新型コロナウイルスの拡大で、飲食店の営業などを制限するまん延防止等重点措置が適用され、個人消費が伸び悩んだことが要因として指摘されています。
 そこでお尋ねします。
 国の本年1-3月のGDPは2四半期ぶりにマイナスとなっていますが、現在の京都府の景況をどのように捉え、どのような対策が必要と考えておられるのかお示しください。
 次は、環境政策についてです。
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の3つの作業部会による第6次評価報告書が昨年8月から本年4月にかけて順次公表されました。地球温暖化防止に向け、温室効果ガスの排出量削減が「待ったなし」の状況だとして、このままでは気候変動の影響を軽減する「適応策」が限界を迎えると警告する報告書をまとめています。
 そんな中、ロシアのウクライナ侵攻の影響で一時的に「脱炭素」が後回しになる可能性が出てきていることが指摘され、気候変動対策の先行きは不透明感を増していますが、一刻の猶予もなく各国の結束した行動が求められています。
 昨年8月に公表された第1作業部会の報告書は、人類が排出する温室効果ガスが温暖化を引き起こしていることに「疑う余地がない」と断定し、産業革命前と比べた平均気温の上昇幅が、今後20年以内に1.5度に達する可能性を指摘しています。気温上昇は既に1.1度に達しており、昨年の気候変動枠組条約第26回締結国会議(COP26)では、パリ協定で努力目標とされた「1.5度以内」が世界全体で目指す共通の目標に格上げされました。
 気候変動が自然環境や人間社会に与える影響をまとめた第2作業部会の報告書は、本年2月末、8年ぶりに公表されました。その報告書は「一時的にでも1.5度を超えると、人間や自然のシステムが深刻なリスクに追加的に直面する」と指摘し、共通目標の重要性を強調しています。
 さらに、国連環境計画の報告書でも、「コロナ危機は世界の温室効果ガス排出量を短期的には減少させる機会を与えたが、各国が強力な脱炭素策を組み込んだ経済回復対策を実行しない限り、令和12年(2030年)までに排出量を大きく削減させることには寄与しないであろう」とまとめられており、コロナ禍の中、これまで進んでこなかったテレワークなどのデジタル化が急速に進むなど、社会の変化の兆しも見えていますが、令和32年(2050年)カーボンニュートラルの実現に向けては、これまで以上の積極的な対策の創造、産業や社会の変革などが喫緊の課題だと考えます。
 京都府においても、パリ協定が定める気温の上昇を1.5度に抑えるために、令和2年(2020年)に「令和32年(2050年)温室効果ガス排出量実質ゼロ」を目指すことを宣言(ゼロカーボン宣言)し、その実現に向けて、令和2年(2020年)12月に京都府地球温暖化対策条例などを改正、令和3年には京都府地球温暖化対策推進計画を改定しました。
 コロナ禍における社会構造の変化や行動変容なども踏まえつつ、府の率先垂範行動とともに、多様な主体と連携・協働しながらゼロカーボン社会の実現に向けて取り組むことが求められています。
 府内では、2022年5月31日時点で15市がゼロカーボン宣言を表明し、再生可能エネルギーの率先導入や利活用、事業者や住民への独自支援などに取り組んでおり、京都府においてもフロン排出抑制に関する独自制度、支援策など、脱炭素社会、地球温暖化防止に向けて積極的な取組を実践されています。
 しかし、本年1月、環境省が2030年までに家庭部門と業務その他部門の電力消費に伴うCO2排出実質ゼロを実現する「脱炭素先行地域」を募集し、4月26日には第1回先行地域26件が選定されましたが、京都府内の市町村は選定されていませんでした。
 令和3年6月に国・地方脱炭素実現会議で決定された「地域脱炭素ロードマップ」及び同10月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」では、少なくとも今後2025年までに約100件の地域を選定し、多様な地域における地域の魅力と質を向上させる地域創生に資する地域脱炭素の実現の姿を示し、取組モデルとして全国に伝播し、脱炭素ドミノを起こすことを目標に掲げており、この活動への京都府、市町村の積極的参加に期待しています。
 加えて、現状では京都府のゼロカーボン対策に手詰まり感が漂う中、目標に向けた取組の実効性検証はもちろん、さらに新しい施策として、カーボンプライシングによる自治体間取引制度を導入することで、ゼロカーボンと地域内格差是正の2つの効果を得るべく、府内自治体全体、府民全員での取組へと拡大し、浸透させることなど、創造と工夫が必要だと考えます。
 6月補正予算には、駐車場等の未利用地への太陽光発電設備等の導入支援事業などが提案されておりますが、「令和32年(2050年)温室効果ガス排出量実質ゼロ」の目標達成に向けた知事の御決意、御所見をお伺いします。
 本年5月11日、東京都の有識者検討会は、一戸建ての住宅を含む新築建物に太陽光発電のパネル設置を義務づけるよう提言しており、東京都はパブリックコメントなどを経て、関係条例の改正案をまとめ、本年度中の成立を目指すとしています。
 京都府の同種条例では、太陽光発電等の再エネ設備導入を延べ床面積300平米以上の建築物に義務づけていることから、一般的な一戸建て住宅はおおむね対象外となっており、国の建築物省エネ法改正案でも設置義務は見送っていました。
 東京都の判断は、ゼロカーボンへの手詰まり感の漂う中で、現状への危機感を示した判断だと考えますが、改めて京都府のお考えをお示しください。
 なお、一般的な一戸建て太陽光パネル設置費は、100万から120万円で、維持費として購入者には20年間で35万円ほどかかると見られ、建築主や住宅購入者をサポートする体制・措置が必要となります。
 さらに、日本における太陽光発電システムの導入状況を調査している(株)資源総合システムは、本年3月30日、太陽光発電システムの導入量の2020年までの実績値と2030年までの予測値についてのレポート「日本市場における2030年に向けた太陽光発電導入量予測」を発行し、その中で日本の電力需要について、東日本大震災後は、社会の省エネが進む一方で、経済成長の鈍化、そして経済構造の変革が進んだことなどで減少していることを指摘するとともに、「仮に、2030年の電力需要が現時点とほぼ同じだった場合、日中の晴天時は、日本全体の電力需要の約61%以上が太陽光発電で賄える計算となる」としていることから、蓄電システムの重要性が高まっていると考えます。
 そのほかにも、太陽光発電に関する課題として、1つ、太陽光発電量が増え過ぎての出力制御について。出力制御は電力の無駄になる上、発電業者にとっても収益の低下につながる。2つ目、太陽光パネルの設置を目的とした山林の開発について。山中で太陽光発電施設の建設工事を進める業者が伐採した大量の樹木を現場に放置し、雨による流出の危険が発生した事例があります。3つ目、太陽光パネルの廃棄量について。経産省が本年4月21日、使用済みの太陽光パネルの廃棄量が2035年から2037年にピークを迎え、産業廃棄物の最終処分量の1.7%から2.7%、約17万トンから28万トンになるとの見通しを明らかにしています。これらの課題が挙げられます。対策の事前検討を求めます。
 次に、京都府の漁業・水産業の現状と課題についてです。
 「海の京都」は、その呼称のとおり海の幸に恵まれた漁場として様々な海産物を提供してきました。その漁業をなりわいにしている方々の声を基に質問させていただきます。
 まず、京都の海や漁業について、その特徴を幾つか紹介します。「海流や日本海固有水の状況から魚介の種類が多い」「サワラの生産量が日本一になったことがある」「海が浅く、世界の中でも温暖化の影響が早く現れている」「トリガイが有名であるが、最近は中国のニーズによりアワビの単価も上昇している」「大型定置網の生産量が80%以上を占めるのは京都府だけである」「トリガイを安定的に出荷サイズまで育てる養殖業は京都府だけである」など、府内でもあまり知られていないと思われる特徴がありました。
 京都府の漁業生産額は長期的に減少しており、近年は40億円前後で推移しています。そんな中、2020年12月、漁業法が70年ぶりに改正され、新たな資源管理システムが構築されました。主な内容は、「適切な資源管理と水産業の成長産業化を両立させるため、科学的根拠に基づいた目標設定と資源の維持回復を行う」「農林水産大臣は資源管理の目標を定め、その目標の水準に資源を回復させるよう漁獲可能量(TAC)を決める」「農林水産大臣または都道府県知事は、漁獲実績等を勘案して船舶ごとに漁獲割当て(IQ)を設定する」などとなっています。
 現行の漁獲可能量(TAC)の対象魚種は、クロマグロ、ズワイガニ等8種類ですが、令和5年度までにブリ、サワラ、マダイなどの漁獲量の多い魚種が対象として追加されることとなっており、漁獲選択の困難な定置網漁業の漁獲量が7割から8割を占める京都府では、クロマグロに加えブリやサワラが資源管理の対象魚種となる予定です。
 漁業量に上限が設定されれば、経営に与える影響は甚大となることも懸念されます。また、小型クロマグロにおける府の漁獲可能量(TAC)配分は、平成22年から24年の府県別漁獲量割当てを基に行われており、近年の来遊パターンは変化してきていると言われ、漁獲可能量の配分見直しが必要であることなど、漁業法の改正に伴う課題が見られています。
 これら「海の京都」の課題に対して、京都府の早期対応が求められると考えますが、知事はいかがお考えでしょうか。お尋ねいたします。
 最後に、集中豪雨対策についてです。
 近年、線状降水帯による大雨によって毎年のように甚大な被害が起こっています。気象研究所は、集中豪雨の発生頻度が2020年までの45年間で、全国的には2.2倍、7月に限れば3.8倍に増加したとの分析結果を発表しました。地球温暖化などの影響で、線状降水帯が発生しやすくなったとしています。
 大河川での氾濫などが相次いだ令和2年7月豪雨では、活動が活発な梅雨前線の影響で、西日本から東日本の広範囲にわたり長期間の大雨となりました。特に、顕著な大雨となった7月3日から8日にかけては、線状降水帯が九州で多数発生し甚大な被害につながりました。
 本年5月24日発表の向こう3か月予報では、今月6月は九州から関東甲信では降水量が平年並みか多い予想で、特に九州から近畿を中心に湿った空気が流れ込みやすく、昨日発表されましたが、梅雨入り早々大雨となるおそれがあるとしています。
 また、過去に集中豪雨がなかった地域での発生リスクの高まりも指摘されています。6月1日から気象庁では頻発する線状降水帯による大雨災害の被害軽減のため線状降水帯予測を開始し、発達した積乱雲が帯状に連なって大雨をもたらす線状降水帯が発生するおそれがある場合には、半日から6時間前までに気象情報で発表するとしています。情報は全国11の予報区ごとに出され、地方気象情報や府県気象情報などに「線状降水帯が発生する可能性がある」という文言を盛り込んで警戒を呼びかけるそうです。
 ただ、過去の事例から見た予測の的中率は、全国で2回に1回程度、地方単位ではおよそ4回に1回程度にとどまり、情報が出ない中で線状降水帯が発生する、いわゆる見逃しはおよそ3回に2回程度としており、気象庁は「現在の技術では正確に予測することは難しく、呼びかけを行っても、線状降水帯が必ず発生するわけではないが、大雨になって状況が急激に悪化する可能性は高いと考えている。情報が出たら危機感を高めてもらい、ハザードマップや避難場所、避難経路を確認するなどして災害に備えてもらいたい」としています。大雨や洪水に関する警報、土砂災害警戒情報など大雨に関する情報に加え、線状降水帯予測が発表された場合は、避難情報を確認した上で早めの避難が鍵になるのではないかと考えます。
 そこでお尋ねします。
 昨年5月20日、改正災害対策基本法が施行され、災害の可能性が高い段階で、市町村が発令する避難情報に「勧告」と「指示」が混在し避難のタイミングが分かりにくいとの指摘を受け、「指示」に一本化されました。これにより避難指示が発令されると、全員が危険な場所から避難しなければならないのですが、実際には少人数避難に終わるケースが少なくないと聞きます。避難指示も線状降水帯情報も、危険度の大きさから空振りや見逃し覚悟の情報なのですが、全員に強く避難を促す避難指示についても、府民への浸透が不十分な中で的中率が地方ではおよそ4回に1回にとどまるとされる線状降水帯情報には、浸透への懸念に加え、情報の乱発状態、すなわち信用度低下につながることも否めず、新たな周知策、発信方法などの工夫が求められると考えます。
 早急な周知が求められる中で、市町村との協力体制を含めて、「危機感への正しいアプローチ(発生情報ではではなく可能性情報であること)」「危機感を識別した『キキクル』のチェックと伝達」「夜間、早朝など避難所開設のタイミングや手順、体制への支援」「災害弱者等への避難誘導、水防態勢の事前確認(半日前ぐらいから分かる可能性があるので、事前確認が必要かと思います。)」「感染症対策」、これらについて市町村への協力要請、支援を求めて府として検討している対策、対応についてお答えください。
 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

◯議長(菅谷寛志君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 子育て環境の充実と移住の促進をリンクさせる取組についてでございます。
 京都府では、子育て環境日本一の実現を目指し、出会い・結婚から妊娠・出産、子育て、保育、教育、就労に至るまで切れ目のない支援をオール京都で取り組んでいるところでございます。
 議員御指摘のように、子育てにやさしい風土づくり・まちづくり・職場づくりといった取組により子育て環境が充実することは、子育て世代の京都への定着だけでなく、移住を考える子育て世代を引きつける大きな魅力になると考えております。
 現在、子育てをみんなで支え合う風土づくりを進めるため、WEラブ赤ちゃんプロジェクトなどにオール京都で取り組みますとともに、全国トップクラスの子どもの医療費助成や、子どものための京都式少人数教育などの施策についても着実に進めているところでございます。
 また、今年度より開始した「移住するなら京都」推進事業の一環で、自然環境、医療、教育など、子育て世代が関心の深い地域情報の発信を強化するほか、今定例会には、移住促進のため子育て環境の充実等を図る市町村への支援を行うために必要な予算を提案しております。
 今後とも、府民、地域、団体、企業、行政など多様な主体と連携し、子育て環境日本一・京都の実現に向けて着実に取り組みますとともに、子育て環境の充実が移住促進につながるよう情報発信などに取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、京都経済の現状についてでございます。
 日銀京都支店の6月の経済概況によりますと、「基調としては緩やかに持ち直している」「感染症による下押し圧力が和らぐ下で個人消費は緩やかに持ち直している」とされております。
 また、京都府中小企業団体中央会の4月の報告では、「週末を中心に売上げが回復してきた」「着実に観光客が増えている」といった声がある一方で、「原材料の値上げの影響を受け利益幅が縮まっている」「サプライチェーンの混乱等で苦戦している」といった声も出ております。
 府内経済は、個人消費を中心に緩やかに持ち直しているものの、長引くコロナ禍に加え、国際情勢の混乱に伴うエネルギーや資材の調達コスト上昇もあり、引き続き予断を許さない状況であると考えております。
 こうした状況を踏まえ、資材等の安定供給や価格転嫁対策を国に求めますとともに、入手困難部材の代替部品の開発支援を進めておりますが、さらに対策を強化するため、府内企業の約86%を占める小規模企業等のコスト削減支援や伝統産業の販路開拓支援などに必要な予算案を今定例会に提案しているところでございます。
 今後とも、国の原油価格・物価高騰等総合緊急対策など、あらゆる施策を活用し中小企業の経営を守るため全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、令和32年(2050年)温室効果ガス排出量実質ゼロの目標達成についてでございます。
 京都府におきましては、2020年2月に宣言した「2050年温室効果ガス排出量実質ゼロ」という大きな目標の実現に向けまして、京都府地球温暖化対策推進計画に基づき、産業・業務・運輸・家庭の4つの部門別に温室効果ガスの削減目標や対策を定め、様々な施策を展開しております。
 産業・業務部門につきましては、大規模事業者に対する温室効果ガス排出削減対策の強化や、中小事業者に対する省エネ・再エネ設備の導入支援に努めているところでございます。また、運輸部門につきましては、温室効果ガスの排出が少ない次世代自動車の普及拡大、家庭部門につきましては、住宅への太陽光発電設備等の導入支援に努めるなど、各部門での取組を推進しているところでございます。
 さらに、2050年温室効果ガス排出量実質ゼロの実現には、いち早く取組を進めることが非常に重要であることから、2030年の温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減することを当面の目標に掲げ、その実現に向けて省エネの一層の推進と、再エネの積極的な導入を進めることとしております。
 このため、今年度から家庭向けの新しい取組として、太陽光発電設備等の購入希望者を募り、スケールメリットを生かした価格低減を図る共同購入制度を始めたほか、中小企業等に対し省エネ設備等の導入と省エネ診断士等の派遣が一体となった経営効率化支援に取り組むこととしております。
 また、今定例会に提案している予算案にも、地域共生型の再エネのさらなる導入促進や、建築物の省エネ化の推進などに必要な経費を計上しております。具体的には、市町村や地元の方々と連携した営農型太陽光発電等の導入、駐車場への太陽光発電設備の設置などの地域特性を生かした地産地消型の再エネの導入促進、物流拠点の高度化・効率化や、次世代エネルギーである水素の需要創出など、京都府の独自施策を強化して取り組んでまいりたいと考えております。
 これらの取組につきましては、府庁内の各部局や市町村、京都知恵産業創造の森との連携はもとより、府民や事業者、関係団体の皆様との連携・協働が不可欠であり、オール京都で脱炭素社会の実現に向けた取組を全力で進めてまいりたいと考えております。
 次に、建築物への再エネ導入についてでございます。
 住宅をはじめとする建築物への太陽光発電の導入は、一旦設置をいたしますと長年にわたって温室効果ガスの排出削減効果が得られることから、再エネ拡大の中心的な事業として位置づけております。そのため、京都府におきましては、全国に先駆け2012年度に床面積2,000平方メートル以上の新築建築物に対する再エネ導入義務制度を施行し、2022年度からは新たに床面積300平方メートル以上の新築建築物にまで対象を拡大したところでございます。
 議員御案内の東京都の事例につきましては、東京都では戸建て住宅などの小規模な新築建築物の半数程度を大手住宅事業者約50社が供給しているという地域事情を踏まえ、再エネ導入義務の対象を大手住宅事業者に限定する制度として検討されているものと承知をしております。
 他方、京都府では、大手住宅事業者以外にも地域の中小工務店による住宅供給が一定行われていることから、住宅への再エネ導入と省エネ化の推進には中小工務店の協力が不可欠であると考えており、中小工務店に対して再エネや省エネに関する知識の習得を支援しているところでございます。
 また、新築だけでなく、既設の住宅に対する再エネ導入の取組も重要であり、今年度から開始した太陽光発電設備の共同購入支援のほか、市町村と連携した家庭用太陽光発電と蓄電池の同時設置への支援や、初期費用が不要なゼロ円ソーラーに対する支援など、多様な導入支援策を府民の皆様に提供し、導入促進に取り組んでおります。
 今後とも、国における再エネ導入施策や他府県事例なども参考としながら、建築物への再エネ導入拡大に向けて、「京都府再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例」に定めた再エネ導入義務の着実な実施を図りますとともに、府民や中小事業者に向けたさらなる再エネ導入支援策等によりまして、脱炭素社会の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、漁業・水産業の現状と課題についてでございます。
 日本海に面した京都府北部地域では、水産業が地域の重要な産業であり、その持続的発展のためには適正に水産資源を管理し、将来にわたって利用できるようにすることが極めて重要でございます。
 国におきましては、8種類の魚種が数量管理の対象とされておりますが、京都府で数量管理に重点的に取り組む必要があるのはクロマグロとなっております。この管理を効率的に行うため、遠隔地で魚種判別ができるICTを活用した魚群探知機の導入支援や、クロマグロだけを網から逃し、他の魚種を捕獲する「のれん網」の開発を進めてきたところでございます。
 今回の改正漁業法では、対象魚種が約20種類まで順次拡大されますとともに、都道府県ごとの漁獲枠が設定されることとなります。この改正によりサワラ等が数量管理魚種となり、全国でも有数の漁獲量を誇る京都府への影響が予測されることから、研究機関や関係団体と連携して、魚種別の漁獲管理技術の開発や、高鮮度保持技術の導入による単価向上への支援など、漁業者の経営向上に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。
 他方で、安定した漁獲量を確保するためには、養殖業の振興も重要でございます。既に主力商品となっておりますトリガイにつきましては、需要に応じた生産量の確保と品質向上が課題となっております。そこで、トリガイの成長を促し稚貝から出荷に至るまでの生残率を高めるため、ICTを活用した自動監視装置の導入や高水温に強い貝の選抜を行いますとともに、実入り率等の品質向上のための新たな出荷基準を導入し、年間約30万個の生産により販売額2億円を目指してまいりたいと考えております。
 さらに、貝類に続く魅力ある養殖業として、脂の乗りがよく全体的に黄色がかった「金アジ」の養殖技術を確立し、ブランド化をしてまいりたいと考えております。
 今後とも、持続可能で活力ある水産業の振興に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、集中豪雨対策についてでございます。
 平成30年7月豪雨、令和2年7月豪雨など、近年、線状降水帯に起因した大規模な豪雨災害が各地で発生をしております。この線状降水帯は発生から短時間で非常に強い雨が同じ場所で降り続き、大きな被害につながることが多いため、早期の備えが必要となります。
 こうした状況を踏まえ、気象庁は線状降水帯発生前の段階から、災害への危機感を高めてもらうため、今月1日より「線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけ」を開始しました。線状降水帯情報は技術的に難しく、現時点では全国11の地方予報区単位という広い範囲での気象情報であり、いわゆる的中率も高くありませんが、この情報を府民の皆様や行政が正しく活用し、適切な避難準備や避難行動につなげていくことが重要だと考えております。
 まずは、この気象情報を正しく理解していただくため、今月6日に開催をいたしました京都府防災会議において、京都地方気象台から解説をいただき、防災、医療福祉など様々な災害対応関係者に周知をいたしました。また、広く府民の皆様に対しては、京都府のホームページにおきまして、線状降水帯情報が発表された場合には急激な気象変化や災害発生に注意するよう呼びかけを行っております。
 さらに、線状降水帯情報をうまく活用するためには、非常持ち出しバッグなどを日頃から備えておくとともに、情報が出された場合にはリアルタイムの防災・気象情報を確認し、正しい避難行動につなげていくことが必要でございます。このため、府民だより6月号では、河川浸水発生危険度を示す気象庁の「キキクル」や、プッシュ型で気象情報が届く「京都府防災・防犯情報メール」などの防災ツールを紹介いたしました。併せまして、平時からハザードマップを見ていただき、いつ、どこへ、どのように避難するか、事前に決めておく水害等避難行動タイムラインの作成について呼びかけを行ったところでございます。
 また、災害発生が予想される場合において、市町村では、あらかじめ避難所開設や水防活動などの可能性があることを想定し、気象情報や河川情報、土砂災害警戒情報などを確認しながら総合的な状況判断により避難情報を出す必要がございます。このため、本年4月と6月に開催をいたしました防災情報等共有会議におきまして、国、京都府、市町村の防災担当者が線状降水帯情報に関する情報共有と連携について確認をいたしますとともに、市町村に対して早めに避難誘導や水防態勢の準備をしていただくよう依頼したところでございます。
 さらに、線状降水帯情報が出た場合の災害時要配慮者やコロナ感染者などの避難につきまして的確に対応するため、引き続き防災部局と福祉部局との連携、市町村への支援体制の強化に取り組んでまいりたいと考えております。