1 2期目を目指す知事の思いと今後の府政運営について

2 令和4年度当初予算案及び令和3年度2月補正予算案に盛り込まれた府政の諸課題とその対応について
(1)新型コロナウイルス感染症対策について
(2)子育て環境日本一について
(3)全ての子どもたちが安心して学べる教育環境の実現について
(4)雇用につなげる教育・訓練と高度人材の育成事業について

3 困難な問題を抱える女性への支援と新たな法制度の整備について

4 第25回国際博物館会議(ICOM)京都大会を契機としたミュージアムの未来と支援について
(1)ミュージアムフォーラムについて
(2)「生きた植物の博物館」としての府立植物園について

5 府立高校における「総合的な探究の時間」の今後の取組について

6 その他

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◯議長(菅谷寛志君) 日程に入ります。日程第1、代表質問を行います。
 まず、北岡千はる議員に発言を許します。北岡千はる議員。
   〔北岡千はる君登壇〕(拍手)

◯北岡千はる君 府民クラブ京都府議会議員団の北岡千はるでございます。私は、会派を代表いたしまして、数点にわたり、知事並びに関係理事者に質問いたします。
 質問に入ります前に、猛威を振るい続ける新型コロナウイルス感染症、とりわけオミクロン株による急激な感染拡大にある状況下、無念にもお亡くなりになりました方々とその御家族の皆様に衷心よりお悔やみ申し上げますとともに、現在も入院加療及び宿泊施設や自宅にて療養中の皆様の一日も早い御回復をお祈り申し上げます。
 また、連日昼夜を分かたず、この瞬間も懸命の治療に従事していただいております医療現場の関係者の皆様と全てのエッセンシャルワーカーの皆様方に、そして様々な立場で感染拡大防止の取組に多大な御努力を賜っております府民の皆様方に心より感謝を申し上げます。
 併せて、年末年始等、大雪による被害を受けられました地域の皆様にもお見舞い申し上げます。そして、各地域からの西脇知事への雪害に対する各種要望につきましては、補正予算を組み、迅速に御対応くださいましたことに感謝申し上げますとともに、議決後の速やかな予算執行に努めていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、質問に入ります。
 本年は、京都府のリーダー・知事を選ぶ大事な節目の年であります。私ども府民クラブ京都府議会議員団は、2018年の知事選挙において西脇知事誕生の一翼を担うとともに、この間、府政推進の両輪として議員団一丸となって邁進してまいりました。
 今般、1期目の出馬に際して発表された69項目から成る施策集「にしわき隆俊ビジョン」及び2019年策定の「京都府総合計画(京都夢実現プラン)」に記載されたおおむね4年間で取り組む施策、即時の対策が求められた新型コロナウイルス感染症対策、そして我が会派が要望してまいりました事業等について検証させていただきました。
 後ほど主たる施策について言及いたしますが、新型コロナウイルス感染症対策については、死者数データ等から、おおむね良好と評価しつつ、いまだ対策は継続中でございます。これまでの事業効果をさらに高めるため、早期に事業検証を行うこと、そしてまたPOSTコロナを見据えた事業の計画と積極的展開を望むものであります。
 併せて、各地域振興計画については、コロナ禍の影響により一部の停滞が見られますので、計画の見直しや優先順位を見極めた取組を求めておきます。
 そして、コロナ禍で社会の価値観が激変している状況や事業成果には中長期を要する事業もございますが、西脇府政が前例にとらわれず、かつ府民協働で取組を進めておられる状況、そして今後の施策への期待を込めて、西脇府政の1期4年間を高く評価いたします。
 西脇知事におかれましては、私どもの提言も踏まえていただき、共通認識の下で、最重要課題である新型コロナウイルス感染症対策への迅速な取組の強化、併せて中長期的な観点も視野に入れた夢・希望あふれる未来の京都づくり、そして共生社会の実現に向け、引き続き京都府民にとって身近で頼りがいのあるリーダーとして尽力賜りますことを心より願うところでございます。
 そこで、知事にお伺いいたします。
 4月の知事選挙に向けて、府内の多くの各種団体から2期目の出馬要請を受けられ、西脇知事御自身、1月8日の記者会見において再選を目指して出馬する旨を表明されました。
 思い返しますと、知事は、令和元年の秋に京都府総合計画を策定し、初めてのフルの当初予算をと、そういうときに令和2年の1月30日に新型コロナウイルスの感染者が初めて京都でも確認され、本日まで新型コロナウイルス感染症との闘いが続いております。
 知事は、出馬表明の際、「最前線で新型コロナウイルス感染症対策を指揮した現職の知事としてこれまでの経験を生かすことが使命だ」と力強く述べられましたが、2期目を目指す決意を固められた今、知事御自身は、1期4年の府政のかじ取りを振り返り、いまだコロナ禍の影響が甚大な状況下、次の4年のかじ取りをどのようにしていこうとお考えなのか、知事の府政運営方針について、府民の皆様への力強いメッセージを込めてお聞かせください。
 まずはここまでお願いいたします。

◯議長(菅谷寛志君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 北岡議員の御質問にお答えいたします。
 北岡議員におかれましては、ただいまは会派を代表されまして私の1期4年間の府政運営に対して高い評価をいただき、厚く御礼申し上げます。
 平成30年4月に、「安心」「いきいき」「京都力」の3つのテーマを掲げ、知事に就任いたしましたが、就任1年目における度重なる自然災害や今も続く新型コロナウイルスへの対応など、府政運営については難しいかじ取りの連続であったという率直な思いでございます。
 そうした中でも、知事就任後に策定した京都府総合計画の進捗状況につきましては、各分野の有識者から成る評価の場において、「コロナ禍の影響はあるものの、全体としてしっかりと取り組まれている」旨の総括をいただくなど、議員の皆様をはじめ、多くの方々の御理解と御協力をいただきながら、この4年間で府政を着実に前へと進めることができたのではないかと考えております。
 しかしながら、コロナ禍が長期化する中で、観光をはじめとする産業や文化、さらには府民の日常生活や働き方、子育て、教育、地域社会に至るまで、社会経済活動のあらゆる分野に幅広い影響が生じております。こうしたコロナ禍における社会経済の変化や、本格化する人口減少、少子高齢化社会への対応など、多くの課題を乗り越え、新しい京都づくりに向けてさらに力強く歩みを進めていくことが今こそ求められているのではないかと考えております。
 次の4年間のかじ取りについてでございますが、私は「あたたかい京都づくり」に向けて次の3つの柱で府政運営を進めていく必要があるのではないかと考えております。
 1つ目の柱は「安心」でございます。何よりも、新型コロナウイルス感染症をはじめ、自然災害など、あらゆるリスクから府民の命と健康をしっかりと守り抜き、府民に安心を実感していただける京都づくりを進めていく必要があると考えております。
 次に、2つ目の柱は「温もり」でございます。コロナ禍において、子育て世代の孤立化や非正規雇用労働者など、社会的に弱い立場の方々へのしわ寄せなどが生じております。こうした状況も踏まえ、子どもや子育て世代を社会全体で温かく見守り支えるなど、府民の暮らしをしっかりと温め、府民の誰もが温もりを感じられる共生の京都づくりを進めていく必要があると考えております。
 最後に、3つ目の柱は「ゆめ実現」でございます。これからの4年間は、文化庁の京都移転や新名神高速道路の全線開通、そして大阪・関西万博の開催など、これまでの京都の未来を見据えた取組が大きな実を結ぶときとなります。こうした効果をしっかりと生かして、温かさの源泉となる、魅力あふれる活力に満ちた産業づくり・地域づくりなどを進め、府民の皆様一人一人の夢が実現できる京都づくりを進めていく必要があると考えております。

◯議長(菅谷寛志君) 北岡千はる議員。
   〔北岡千はる君登壇〕

◯北岡千はる君 御答弁賜りまして、ありがとうございました。
 自然災害が続く、そしてその後、今もですけれども、新型コロナウイルス感染症の拡大ということで本当に難しいかじ取りを今なおされているとは思いますけれども、次に向けてということで「あたたかい京都づくり」「あたたかい」という言葉に大変共鳴しております。いろんな困難の中、やはり基本は人の心に寄り添うということだと思いますし、今の知事の御答弁を拝聴し、ますます次の2期目も力強く京都府のかじ取り、リーダーとして御尽力いただくということを大いに御期待申し上げたいというふうに存じます。よろしくお願い申し上げます。
 次に、今定例会に提出されております、14か月予算として編成されました令和4年度当初予算案と令和3年度2月補正予算案に盛り込まれた府政の諸課題とその対応について質問いたします。
 まず、今回の予算案について申し上げます。
 今回の予算案は、知事選挙を控え、骨格予算案として編成されましたが、医療体制の確保など、コロナ対策に万全を期すとともに、コロナ禍で様々な課題を抱える女性支援や離職者支援、子どもの貧困対策など、立場の弱い方々への支援や、コロナ禍で経営状況が悪化している中小企業の事業継続支援などにもしっかりと配慮された予算案となっております。また、今回の予算案の中には新規・拡充施策も含まれており、知事がこれまでから大切にしてこられた「誰もがいきいきと暮らし、幸せを実感できる共生社会」の実現に向け、歩みを止めることなく実行していくという強い決意が感じられる内容となっております。
 例えば、女性支援として、京都ウィメンズベースを京都テルサに移転させ、女性活躍拠点を集約し、複合的な要因の相談にもワンストップで対応できるよう、相談窓口を一元化するとともに、潜在化するヤングケアラー対策として新たに総合対策センターを創設し、社会的課題として認知度向上や支援体制の強化を図るなど、このコロナ禍において特に厳しい状況に置かれた方々に配慮する内容となっております。
 加えて、府民の安心・安全を確保するための危機管理センターの整備や、治水対策をはじめとする防災インフラ整備の推進、府内農林水産物のさらなる販売力の強化、さらには今年度設置した京都府気候変動適応センターの取組をはじめとする環境施策の推進や、文化庁移転を見据えた京都文化・芸術の発信強化など、実に様々な分野にわたり、私どもが都度求めてまいりました施策も盛り込まれた14か月予算となっておりますことに、会派を代表して、その内容を高く評価するものでございます。
 それでは、具体的な府政課題と関連事業についてお伺いをいたします。
 まず、新型コロナウイルス感染症対策についてであります。
 第5波では病床使用率が最大で82.7%にまで達しましたが、入院医療コントロールセンターの機能によって早期に患者を医療機関につなげたことで、京都府は人口10万人当たりの累積死亡者数を大阪府の3分の1、兵庫県の2分の1以下に、そして感染者の致死率を低く抑えられたことは高く評価いたします。
 また、妊産婦ケアにつきましては、陽性の妊婦さんが分娩できる専用の医療体制を構築した上で、PCR検査を公費負担とし、コロナ受入病床以外にも周産期専用の病床を確保するとともに、全国初である産婦人科医による訪問診療や救急車内での対面診療が実施されたことは京都発のコロナ禍における子育て環境日本一に向けた特徴的な事業であります。
 そして、事業者の第三者認証制度につきましては、1万件を超える認証がなされており、そのニーズは高いと評価いたしますが、一方で、認証された後も引き続き感染防止対策に取り組んでいただくことが重要であるとも考えます。
 その他、京都の修学旅行支援等、京都の特性に応じた事業も展開されてきています。
 そこで、これまでの新型コロナウイルス感染症対策事業についてどのように検証し、より府民の安心・安全に向けた取組の改善を実施されてきたのか、お聞かせください。
 併せて、京都府でもまん延防止等重点措置が発令され、これは昨日の数字ですが、一日で過去最多の2,996人の感染者数を記録し、病床使用率の増加傾向が続くなど、爆発的な感染拡大の状況にあるオミクロン株の特性を踏まえ、1月19日に我が会派から緊急要望いたしました内容どおり、新たな対策を講じることも急務と考えますが、特に次の2点についてお聞かせください。
 1点目です。世界保健機構(WHO)は、1月12日、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」について記者会見したテドロス・アダノム事務局長は、「従来型のデルタ株よりも重症度は低いが、特にワクチンの未接種者にとっては危険なウイルスであることに変わりはない」と指摘しています。全国の状況から、このオミクロン株の感染拡大により、医療、介護、教育、治安等、社会生活への影響が懸念される中、社会生活の維持も見据え、ワクチン接種を効果的に進めていく必要があります。
 こうした中、国は前倒し接種の方針を示し、府内市町村の多くが準備を急ぎ3回目接種を開始しているところです。これまでの1・2回接種ではワクチンの円滑な供給が大きな課題になっておりましたが、3回目接種においても1・2回目接種で多くの国民が接種したファイザー社のワクチンの供給割合が少なくなることから、1・2回目と異なるワクチンを接種する交互接種を前提とした接種体制を構築する必要があります。一方で、モデルナ社のワクチンの副反応や交互接種を敬遠する方がファイザー社のワクチンを選ぶために、モデルナ社のワクチン接種会場の予約枠が埋まらないといった報道も見られます。
 そこで、お伺いします。
 3回目接種を進めるためには、交互接種や副反応への不安払拭、並びに3回目接種の重要性について、まずは国がしっかりと国民に向けて丁寧に説明をすることが不可欠ではありますが、こうした課題に対して京都府としてどのように取り組むのか、知事の御所見をお聞かせください。
 なお、ワクチン接種を希望しない、また身体的理由等で接種ができない方々が社会的不利益を被ることのないよう、必要な広報の手だてはお願いしておきます。
 2点目として、オミクロン株の爆発的な感染拡大に伴い、宿泊療養施設や自宅で療養される方が急増しており、宿泊療養者、自宅療養者の病態が悪化した場合でも必要な治療・投薬を受けられる体制を構築し、その内容を具体的に発信することは府民の安心のために大変重要であると考えます。
 そこで、宿泊・自宅療養者への医療提供や市町村と連携した支援に関する京都府の取組についてお示しください。
 以上、2点についての京都府の対応についてお尋ねいたします。
 また、コロナに関連して1点要望させていただきます。
 オミクロン株の急拡大による第6波では、若い世代、とりわけ児童生徒や未就学児などの子どもたちにも感染が広がっており、これまでにない規模で学校や保育所などの休校・休園が広がっており、保育所が再開してもすぐにまた休園となってしまい、何とかならないものかと切実なお声も聞いております。子どもが感染して看病に当たらなければならなくなったり、通園している保育所の休園により家で世話をしなければならなくなったり、家族に濃厚接触者が出た場合等、子育て世帯では育児、仕事、教育等に大きな影響が出ております。とりわけ独り親や非正規雇用の御家庭は、感染や自宅待機が必要となった場合に働くことができず、生活の困窮度合いが一気に高まってしまいます。
 国は、仕事を休まざるを得ない保護者に賃金全額支給の有給休暇を取得させた企業に対し、一日当たり1万5,000円を上限に支給する小学校休業等対応助成金制度を設けており、京都府もホームページなどで積極的に広報していただいておりますが、事業所の理解が得られず、申請できないケースもあると聞き及んでおります。国のしっかりとしたフォローが必須ではありますが、京都府におかれましても、コロナ禍でより厳しい状況にある独り親家庭をはじめ、子育て家庭に対し、この制度の活用の促進や、ほかの様々な支援がスムーズかつスピーディーに届くよう、あらゆる機会を捉えてお取り組みいただき、さらに子どもへの影響が最小限となりますよう、先手の必要な手だてを講じていただくことを要望いたしまして、次の質問に移ります。
 2点目は、子育て、教育、雇用をはじめとした「人づくり」について質問いたします
 知事は、御就任以来、子育てについては一丁目一番地の取組として「子育て環境日本一」を掲げ、「子どもが社会の宝として、地域の中であたたかく見守られ、健やかに育ち、子どもの生き活きとした姿と明るい声が響きわたる社会の実現」を目指し、4つの重点戦略、すなわち1)子育てにやさしい風土に包まれた京都府社会の実現、2)子育てしやすい安心・安全な街づくりの実現、3)若者が安心して結婚・妊娠・出産・子育てできる雇用環境の創出、4)地域の絆・地域の子育て力の再構築に基づき、各種の事業が展開されております。
 この間、新型コロナウイルス感染症は社会的に弱い立場の方々に深刻な影響を与え、また妊娠届出数は減少し、独り親家庭や子育て家庭にも大変な負荷がかかっている状況が続いておりますが、子育て環境日本一の実現に向けた歩みを止めることなく、着実な施策の取組を進めていただくことを切に願うものでございます。
 そこで、お聞きいたします。
 コロナ禍において各事業の実施を見送らざるを得ない状況にありましたが、子育て環境日本一関連事業のこれまでの取組と課題を踏まえ、令和4年度当初予算「子育て環境日本一推進戦略事業費」についてどのように展開されるのか。併せて、事業成果を見える化していくことが必要と考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 なお、今議会に提案されております「京都府子どもを虐待から守る条例案」について要望いたします。
 児童虐待が後を絶たない状況下、必要な条例であり、行政、府民、関係機関が連携し、虐待防止に向け、実効性のある取組が推進されますよう、切に願うものであります。フランスでは、児童虐待措置の各分野のタイトルには「目を開いて、話しかけて」「話を聞いて、行動して」というような子どもの立場からの呼びかけが採用されています。こうした例なども参考にし、子どもから大人まで府民の誰もが分かりやすい条例の解説などの作成を御検討いただけるよう、よろしくお願いいたします。
 続いて、全ての子どもに等しく教育の機会をつくり、安心して学べる教育環境の実現について質問いたします。
 文部科学省の中央審議会が「国家百年の計である教育の在り方は、国民一人一人の生き方や幸せに直結するとともに、国や社会の基礎を作る大変重要な問題」と示しておりますように、誰もが学びたいときに安心して学べる機会を保障していくことが国づくりにもつながると考えます。
 しかしながら、総務省の資料によりますと、1990年度国家予算(当初・一般会計予算)と2021年度の歳出を比較すると、全体が40兆円強増えているのにもかかわらず、国家の公的教育費に当たる文教・科学技術は3,000億円しか増えていない状況にあり、平成の30年間は国家としての投資的経費、特に教育・研究開発費にお金を回せず、他国との競争力に後れを取っていったと考えます。
 併せて、我が国は、バブル崩壊以降、名目賃金がほとんど伸びず、実質賃金はむしろ4%下がっている状況にあり、子育て家庭における教育費の負担が増え、家計を圧迫し、いわゆる教育の格差が生まれる原因ともなり、少子化対策に影響を及ぼすとも考えられます。さらに、日本ではGDPの5割から6割は消費ですので、賃金が上がらなければ経済の成長にも大きく影響いたします。
 現在、コロナ禍にあって、まずは教育現場においても感染拡大の防止策を講じることを最優先すべきときではありますが、「教育は国家百年の大計」の理念を具現化し、「誰もが学びたいときに安心して学べる教育環境」の実現に向け、教育・研究費予算を大幅に増やしていくことが重要だと考えます。
 そこで、知事にお伺いをいたします。
 令和4年度当初予算「子育て環境日本一推進戦略事業費」のうち、子育て環境日本一の実現に向けて欠かせない柱でございます「教育環境日本一」のため、非常時においても学びを止めない体制を整備する事業が提案されておりますが、少子化対策における教育の重要性についてのお考えをお聞かせください。
 併せて、先ほど申し述べました教育の重要性に鑑み、教育・研究費の大幅な国家予算を増やすよう、国に対して強く申入れいただきたいと願うものでありますが、いかがでしょうか。御所見をお伺いいたします。
 続きまして、雇用につなげる教育・訓練と高度人材の育成について質問いたします。
 まず、京都未来塾についてお伺いいたします。
 この事業は、コロナ禍で大きな影響を受け、解雇や雇い止め、内定取消しや延期などになった方々を対象に、訓練実施企業と雇用契約をして給与を得ながら即戦力コースやキャリアアップコースなどの自分の希望に合った就業コースを選択し、実習後に企業とマッチングをして正規雇用につなげるというものであり、大変時宜にかなった事業であると考えます。
 コロナ禍において緊急的に実施された本事業を含め、京都府では従来から、各産業における研究開発人材等の育成と、新卒者から管理職、経営者までのシームレスな研修をオール京都体制で実施するとともに、中小企業、大学と連携して高度人材を育成することを目的に「高度人材育成プログラム」を策定し推進しておられますが、これらの人材育成の成果や今後の取組についてお示しください。
 また、京都府では、人生100年時代を見据え、誰もが生涯学び、働き続けることのできる社会の実現に向けて、昨年の8月「京都府生涯現役クリエイティブセンター」を開設し、スキルアップやスキルチェンジ、そして地域貢献などの各種のニーズに対応した幅広いリカレント研修プログラムを用意するほか、キャリア相談や情報収集・発信も随時行うとされました。
 昨年10月から開始された研修プログラムは、1つとして、デジタルトランスフォーメーション等、産業構造の変化に対応した柔軟な人材育成のための在籍企業でスキルアップを目指すコース。2つとして、問題解決型学習(PBL)を導入した企業の課題解決や中小企業の後継者育成、またセカンドキャリアとして起業について学び、在籍企業を離れて新しい環境へ移動することを目指す2つのコース。3つとして、企業に軸を置きながら福祉・災害等に貢献する人材育成や広く農業従事を志向する人材育成、並びに福祉・介護サービス事業や地域活動を支える人材育成のための、地域貢献やこれまでのキャリアとは違う分野を目指す3つのコースの研修を計画・実施してこられています。コロナ禍で計画どおりには運ばなかった研修もあろうかとは思いますが、京都府と経営者団体及び労働者団体の連携の下、在職者の皆様に広くリカレント教育の機会等を提供する事業として期待を寄せるものであります。
 そこで、京都府生涯現役クリエイティブセンターの成果と次年度に向けた事業計画についてお聞かせください。
 ここまでお願いいたします。

◯議長(菅谷寛志君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) ただいまは会派を代表されまして今回の予算案に対しましても高い評価をいただき、重ねて厚く御礼を申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症対策事業の検証と改善についてでございます。
 感染症対策は自然災害とは対応が全く異なる危機管理であり、早急な対処が必要なものはちゅうちょなく実施し、感染状況の変化等を踏まえ、改善が必要と判断したものは時期を逃さず改善することを基本的な考え方として対応を図ってきたところでございます。
 議員御紹介の事業のうち、入院医療コントロールセンターを例に挙げますと、保健所の負担軽減と圏域を越えた効率的な調整を図るため、全国に先駆けて設置したものであり、患者情報と病床情報を一元管理することにより、迅速かつ適切な医療の提供や効率的な病床運営を図る上で大変有効なものとなっております。センター運用後、感染者数の拡大を受け、業務を分担するなどの体制の強化が必要と考え、入院調整を専門に行う入院調整班、宿泊療養施設への移動手段の手配などを行う施設療養班など、4班での体制を構築するとともに、感染急拡大時には急遽DMAT(ディーマット)資格を有する医師等を追加で確保するなどの改善を図ってきたところでございます。
 また、入院先が見つかりにくい事例が出てきたことから、入院調整に時間を要する場合に一時的に患者を受け入れる入院待機ステーションを設置し、医療提供体制の逼迫に備えるため、運用開始の約2週間後からは臨時の医療施設として運用してまいりました。また、患者の重症化を抑制する中和抗体薬が国において承認されたことを受け、直ちに入院待機ステーションでも投与が行えるよう、取り組んだところでございます。
 今後とも、その時々の状況に応じて必要な対応や見直しをちゅうちょなく講じることで府民の命と健康を守り抜き、安心・安全な京都づくりに向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、ワクチンの3回目接種についてでございます。
 1回目、2回目のワクチン接種で得られた効果は、時間の経過に伴い、徐々に低下すると言われており、3回目接種を受けることにより改めて発症予防効果や重症化予防効果が高まるとともに、オミクロン株にも一定の効果が認められていると報告されております。
 感染が急拡大する中、3回目のワクチン接種を速やかに進めるに当たっては、モデルナ社ワクチンの副反応や交互接種に対して不安を感じている府民もおられることから、議員御指摘のように、希望者がファイザー社ワクチンに偏ることによる接種の遅れが懸念されるところであります。一方で、国の審議会においては、1回目・2回目接種でファイザー社ワクチンを接種した方について3回目にファイザー社またはモデルナ社のワクチンを接種したいずれの場合においても、効果、副反応ともに大差はないことが報告されております。
 このため、国に対し、これらの国民の不安を解消するよう、丁寧な広報を求めるとともに、京都府といたしましても、ホームページや府民だよりをはじめ、テレビCMや新聞・雑誌広告など、あらゆる広報媒体を通じて有効性や安全性についての丁寧な広報に努めております。
 また、京都府接種会場におきましては、2回目接種から6か月を経過された、接種券をお持ちの方全員を、年齢を問わず、申込み可能とすることで早期の接種を進めてまいりたいと考えております。
 次に、宿泊療養者、自宅療養者への医療提供と、市町村と連携した支援についてでございます。
 今回の感染者急増に伴い、宿泊療養施設や自宅で療養いただく方が増加している中、これらの方に必要な医療を提供し、安心して療養いただける環境を整えることは大変重要であると考えております。
 そのため、宿泊療養施設におきましては、看護師が毎日健康観察を実施するほか、夜間常駐医師や看護師長の配置などにより療養者の病状を的確に把握し、病状悪化時には酸素・薬剤の投与や入院医療コントロールセンターを通じた入院調整を行うなど、必要な医療につなげるための体制強化を図ってまいりました。
 また、自宅療養につきましても、これまでからパルスオキシメーターや支援物資の送付、陽性者外来の設置、電話診療の実施などを通じて療養環境の充実を図ってまいりました。第6波におきましては、府内全域で訪問診療の実施体制や、経口治療薬が院外処方により薬局から自宅に配送される体制を整えるなど、支援体制をさらに強化しているところでございます。
 これらの医療・療養体制はホームページを通じて広く府民の皆様に発信しているほか、新型コロナ医療相談センターにおいても、宿泊療養、自宅療養に関する府民の皆様からの問合せに丁寧に対応しております。
 また、市町村との連携につきましては、複数の市町村に健康観察等の保健所業務を支援いただいているほか、自宅療養者への生活支援物資の配達等が速やかに行われるよう、これまでに21市町村と個人情報の取扱いに関する覚書を交わすなど、連携強化を図ってきたところでございます。
 引き続き、市町村とも十分に連携を図りながら安心して療養できる環境整備を進めますとともに、府民の安心につながる適切な情報発信に努めてまいりたいと考えております。
 次に、子育て環境日本一についてでございます。
 京都府政の最重要課題である「子育て環境日本一」の実現に向けては、これまで私自身をトップとする子育て環境日本一推進本部の下、子育てにやさしい風土づくり、子育てしやすいまちづくり、安心して子育てできる職場づくりなどに全庁挙げて取り組んでいるところでございます。
 議員御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症は、例えば「子育て環境日本一サミット」の延期など、関連事業の実施にも影響を及ぼしており、また、コロナ禍の長期化に伴い、子育て世帯の孤立化が進むなど、子育てをめぐる環境は厳しさを増しているところでございます。このため、骨格的予算として編成する令和4年度当初予算案においても、子どもや子育て世代を社会全体で守り支えていくことの重要性を強く意識し、関連事業を盛り込んだところでございます。具体的には、「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」のさらなる推進による子育てにあたたかい環境づくり、子どもの居場所や子ども・親子の交流の場づくりなど子育てにやさしいまちづくりの京都府全域への展開、時間帯年休制度の導入など子育てをしながら働きやすい職場の拡大など、これまでの取組をさらに進化させ、取り組んでいく考えでございます。
 また、子育て環境日本一の実現には、府民の皆様にその重要性を御理解いただき、御協力をお願いしていく必要がございます。このため、関連事業の実績や数値目標の達成状況などについて府民の皆様に丁寧に発信していくとともに、これまでから府民だよりや広報番組等を通じて行っているPRにつきましても、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 今後とも、子育て環境日本一の京都の実現を目指し、企業、団体、地域の皆様と連携を深め、オール京都で府全域へと取組の輪を広げ、温もりのある京都づくりを進めてまいりたいと考えております。
 次に、少子化対策における教育の重要性についてでございます。
 子育て環境日本一を実現する上で教育環境の充実は不可欠であり、今なお続く新型コロナウイルス感染症の拡大という厳しい状況においても子どもの学びを止めることがないよう、教育を保障していくことが重要であると考えております。このため、骨格的予算となる令和4年度当初予算案においても、切れ目なく教育を保障できるよう、教育環境日本一を目指し、私立高校あんしん修学支援事業等の拡充、多子世帯の2歳児を対象とした未入園児保育支援事業の拡充などの教育費負担の軽減を図りますとともに、ICTを活用した学習を保障するためのスマートスクール推進事業費など、必要な事業を計上しているところでございます。
 教育は人づくりであり、新型コロナウイルスのような課題を解決し、未来を切り開き、地域社会をつくり上げていくためには不可欠なものでございます。今後、少子化により学校が小規模化するなど、子どもたちがこれまでとは異なる環境に置かれることが懸念されますが、どんな環境であっても誰もが安心して学ぶことができるよう、これまで続けてきた京都式少人数教育だけではなく、さらなる教育の保障・充実について引き続き検討を続けてまいりたいと考えております。
 また、教育は未来への投資であり、教育費の確保は国や社会の発展に不可欠でございます。少子化や格差といった国家的課題を解決するとともに、国際競争力を高めていくためには何よりも教育費の拡充が重要であり、引き続き、全国知事会など、様々な機会を通じて、幼児期から高等教育に至る国の予算措置の充実を強く要望してまいりたいと考えております。
 次に、雇用に向けた教育・訓練と高度人材の育成についてでございます。
 京都産業は、伝統産業からものづくり産業、コンテンツ、観光関連産業など多彩で、人材育成も多様性が求められております。
 京都経済センターが創設され、入居する経済団体が連携して経営トップから初任者までの分野別体系的な研修を実施することにより、受講者の多様なニーズに応えられているものと考えております。また、事業継承で特に重要な若手経営者の教育内容を高めるため、中小企業大学校関西校と連携し、リーダーシップの発揮方法や実践的マーケティングなどの研修を実施し、好評を得ているところでございます。また、コロナ禍を経て産業構造が大きく変化する中で、国の資金を活用し、デジタルトランスフォーメーションやAI、IoT等を活用できる高度人材の育成を進め、約1,900人が中小企業の現場でマーケット開拓や技術開発等で活躍されておられます。
 今後とも、御評価いただいた京都未来塾事業のノウハウを活用し、女性や非正規雇用の方々などへの雇用のセーフティーネット対策に取り組みつつ、経営革新に取り組む企業のリーダーとなるような高度人材の育成に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、京都府生涯現役クリエイティブセンターについてでございます。
 人生100年時代を見据え、セカンドステージを迎えられる中高年の方々が、中小企業や農業、NPOなど、様々な分野で生涯にわたって活躍し続けることができるよう、スキルアップを図っていただくことを目的として昨年8月に同センターを開設いたしました。6か月間で2,200人を超える方が研修等に参加され、自らのライフデザイン構築に取り組んでいただき、再就職につながるなど、着実に成果が出ております。一方、産業界からは、デジタルトランスフォーメーションなど時代の変化に対応できる研修内容としてほしい、若手社員や子育て中の女性にも学べる機会を提供してほしいなど、多くの意見が寄せられているところでございます。こうした御意見を踏まえ、幅広い年齢層の方々を対象に、ライフステージに合わせたスキルアップができる全世代型のセンターへと発展させていきたいと考えております。
 事業の具体化に当たりましては、人づくりは息の長い取組であるため、長期的な視点を持ちながら着実に実績を積み重ねる必要があると考え、産業界、労働者団体、大学の代表者から成る経営戦略会議を設置し、検討を始めたところでございます。来年度は、会議で検討された基本戦略に基づき、若い方や女性のキャリア形成支援も含め、産業界や大学等と共同した実践的なプログラム開発、子育て中の方でも受講できるオンライン研修などにも取り組んでまいりたいと考えております。

◯議長(菅谷寛志君) 北岡千はる議員。
   〔北岡千はる君登壇〕

◯北岡千はる君 御答弁ありがとうございました。詳細にお答えいただきまして感謝申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症対策につきましてもるる御答弁をいただきましたが、先ほど知事から、府民の命を守っていくという確固たる信念で必要な手だてについてはちゅうちょなく講じていくという力強いお言葉をいただきました。本当にオミクロン株が収束していくことを願うばかりですが、昨日も大変多くの感染者数が上がっているわけでございまして、状況をしっかり見極めていただいて、国との連携も必要でございます。ただ、京都の状況ならではしておかなくてはならないということも、先ほどのお話どおり、迅速に手だてを打っていただきたいと思いますし、御答弁にもありました市町村との連携、何度もお答えいただきましたが、本当にそこは特に大切だと思います。情報の共有もしかりでございますので、より一層市町村の連携を深めていただくことを重ねてお願い申し上げたいと思います。
 それと、この感染症対策ですが、先ほどワクチンのお話もさせていただきましたが、先般、オミクロン株の生存期間に関する研究を京都府立医科大学の廣瀬助教授のチームが公表されております。プラスチックでは約8日間、皮膚表面では21時間付着し続けるということで、ウイルスが手に付着した場合は、その対策としては、従来どおりの消毒薬で15秒間しっかり手指をこすり合わせて消毒すれば効果的との旨も発表されておりますので、いま一度基本的な感染予防対策の徹底について、今もいろんな形で広報していただいておりますが、府民の皆様方に繰り返しお願いをしていくことも重要ではないかと思います。
 また、コロナ対策については国から急な要請が続く状況でありますし、京都府ではその対応に大変苦慮されていると存じます。ただ、いつ誰が感染してもおかしくない状況では何よりも確かな情報を、先ほどもいろんな媒体を使って広報しているというお話がありましたが、府民の皆様に迅速かつ分かりやすく伝達していただかなければなりません。
 昨日発表されました新たな取組、その情報として、「京都府新型コロナウイルス感染症陽性者登録センター」が本日10日から開設されているということでございます。これまでの流れとは異なって、自ら医療用抗原検査キットで感染の有無を調べて、陽性であった場合に、医療機関や保健所を経由せず、府の医師による確定診断及び陽性者登録を行い、健康管理や希望者に生活支援物資の配送をする旨とされております。対面ではなく、電話やオンライン対応のみで、そしてまた京都市内在住者を除くということであります。対象者の条件、ほか申請や利用の流れについて府民の皆さんに混乱を来さないようにお知らせいただきますように、お願いを申し上げます。
 京都府では先ほど来申し上げましたコロナ関連情報について工夫して発信していただいておりますが、情報の受け手側に立った平易な分かりやすい文言、そしてまた「自分が今どういう状況にあって、ここからはどうしていけばいいか」というフロー図、図を見れば一目瞭然というような形を示していただくこともお願いしたいと思います。また、高齢者や一人暮らしの方、さらにネット環境が整っていない方々にも配慮した情報伝達方法によって不安の払拭に努めていただいて、とりわけワクチン接種につきましてはリスクコミュニケーションの強化にも努めてくださいますよう、切にお願い申し上げます。
 安心して学べる教育環境の実現につきましては、心強い御答弁もいただきました。学びたい人が学びたいときにかかる費用の心配なく学べる環境をつくり上げていくべく、私どももしっかりと国に対して教育予算の大幅な拡充を求めてまいりたいと思いますし、教育と密接に関係する子育てにつきましては、御答弁ありましたように、知事の一丁目一番地である子育て環境日本一重点戦略の推進に向け、「子育てするなら京都府で」と評価を受けられるよう、具体的な施策と成果の見える化も含め、様々に私たちも努力、御提案をしてまいりたいと存じます。
 雇用につなげる各取組につきましては、各関係機関と連携いただき、引き続き御尽力いただきますとともに、コロナ禍によって影響を受けておられる労働者の立場に立った対策と、より一層の相談体制の拡充も図られますように、お願いいたします。
 それでは、次に移ります。
 次に、困難な問題を抱える女性への支援と新たな法制度の整備について質問いたします。
 コロナ禍で表面化した女性の生きづらさとその支援につきましては、我が会派として必要な手だてについて提言させていただいてまいりました。とりわけ令和2年の11月定例会におきましては、小原舞議員と田中美貴子議員が、雇用、妊娠届出の減少や産前産後の鬱、そしてDVなど、コロナ禍で顕在化した具体的諸問題を提起するとともに、私からはその根幹となる「KYOのあけぼのプラン」について言及し、現下の状況を鑑みた施策が今定例会の予算案にも反映されておりますことを高く評価いたします。
 一方で、困難な問題を抱える女性の支援問題については、従来より婦人保護事業として扱われ、昭和31年に制定された売春防止法を法的根拠として、性交または環境に照らして売春を行うおそれのある女子(要保護女子)の保護更生を図る事業として始まり、法律の制定以来、一度も抜本的な見直しがされておりません。しかし、女性を取り巻く課題は、平成13年にDV防止法、平成25年にストーカー規制法、その他、性暴力・性犯罪被害や人身取引被害、家庭関係破綻や生活困窮などの問題を抱えている女性たちについても婦人保護事業の対象として運用されてきましたが、コロナ禍をはじめ、経済、社会の変化によって困難な問題を抱える女性の増大と、問題が多岐化、複雑化する中で、公的な支援措置についても売春防止法に基づく婦人保護事業では限界が生じている現状にあります。
 国においては、このような現状を鑑み、2018年から厚生労働省の子ども家庭局家庭福祉課において「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」での議論を経て、2019年に報告書を作成し、1)困難な問題を抱える女性を支援する制度の必要性、2)新たな枠組みの必要性、3)新たな制度の下で提供される支援のあり方、4)国及び地方公共体の役割の考え方、5)民間団体との連携・協働のあり方、6)教育啓発、調査研究、人材育成等、7)関連する他制度との連携等についてまとめられました。国会におきましても困難な問題を抱える女性への支援の新たな法制度についてようやく検討が始まり、心から期待をするものであります。
 そこでお尋ねいたします。
 京都府では、売春防止法第34条に基づき設置されている婦人相談所としての京都府家庭支援総合センターにおいて、児童虐待、DV、非行、ひきこもり及び知的・身体障害等、家庭を取り巻く複雑・多様化する様々な問題に対応するワンストップ相談の総合機関として、各関係機関との連携の下、日々御尽力をいただいておりますが、この間の問題の多様化、複雑化が著しい状況下において困難な問題を抱える女性の必要な支援の在り方についての課題を教えてください。
 併せて、児童福祉法により18歳までは法的に守られておりますが、その先の支援は薄く、困難を抱える若年女性が福祉の制度からこぼれ落ちることによる課題も踏まえ、新たな法制度の整備に向けての御所見をお伺いいたします。
 また、様々なNPOや関係団体が、貧困、虐待、ネグレクト、DV、性的搾取、育児ノイローゼ等々、生きづらさを抱える少女や若い女性たちの居場所づくりや寄り添い支援、支援者のためのマニュアルづくり等に日々御尽力をいただいております。
 私は、先日、それらの献身的な活動をされております団体の一つで、メディアでも度々取り上げられました一般社団法人「京都わかくさねっと」が2020年から新たな取組として運営されている「わかくさカフェ」を訪問いたしました。そこでは、カフェ併設の宿泊施設と連携し、温かい雰囲気の中で食事の提供や専門家による相談会、またお昼寝部屋の貸出しや手作り講座の開催の実施などを通して、貧困や家族間トラブル、犯罪などの困難な状況で生きづらさを抱える少女たちに向き合い、寄り添い、共に歩む活動を展開されており、気楽に立ち寄り、地域で安心して居心地よく過ごせる居場所の提供と支援の必要性を広く理解してもらえることを目指しておられます。
 そこでお聞きします。
 困難な問題を抱える女性、とりわけ少女や若い世代の女性に対しての支援活動について、京都わかくさねっとをはじめとする諸団体の取組を京都府としてどのように連携し、支援をされているのか、お伺いいたします。
 次に、第25回国際博物館会議(ICOM(アイコム))京都大会を契機としたミュージアムの未来と支援について質問いたします。
 世界の博物館や美術館の専門家が集う国際博物館会議(ICOM)が、2019年9月1日から7日まで、国立国際会館をメイン会場として開催され、120の国と地域から大会史上最多の4,590人の参加がありました。大会期間中は、活発な議論の展開に加え、ちりめん街道や大原の里山など、府内各地でのエクスカーションと言われるツアーはほぼ満席で行われ、またソーシャルイベントとして二条城の夜間特別公開、府立植物園のナイトツアー、能や狂言の公演にも多くの参加者が京都ならではの多彩な文化に触れていただく好機となりました。
 同時に、ICOM開催を契機に、これまでからありました京都市内博物館施設連絡協議会に加え、京都市域以外の博物館、美術館等も相互に連携して、各館の有する課題の解決を図り、地域の活性化等に向けた取組を推進するため、現在67館で構成される「京都府ミュージアムフォーラム」を結成し、様々な事業を計画・実施されてこられました。
 この間、コロナ禍の影響により多くの事業について実施を見送らざるを得ない状況にありましたが、感染防止対策を徹底し、京都学・歴彩館では、宮内庁所蔵の「主基(すき)地方風俗歌屏風」の特別展示と各ミュージアムの所蔵品を集めた初めてのミュージアムフォーラム合同展覧会「京都まるごとヒストリー」が開催され、様々な館の資料を見ることができたことから、大変好評でありました。また、丹後郷土資料館では、京都国立博物館所蔵の国宝雪舟筆「天橋立図」の特別展示、京都学・歴彩館と舞鶴引揚記念館との共催により次世代へ世界記憶遺産を語り継ぐ連続講座が開催され、講座の中では、京都市と舞鶴市をオンラインで結び、高校生が発表するという新たな取組も行われ、フォーラムの結成によるミュージアム間連携の効果が現れつつあるとお聞きしております。
 そこでまずお聞きします。
 各ミュージアムが連携し、魅力向上を図っていくためには、各施設で日々御尽力されています学芸員など関係者の皆様、とりわけ小規模なミュージアムも参加しやすい交流や研修の機会づくりと支援が必要と考えますが、ミュージアムの支援として本府がこれまで実施してきた事業と成果並びに今後の取組についてお聞かせください。
 また、私は、数回にわたり本会議質問等において、ミュージアムは貴重な資料等の収集・保管・研究・解説・展示のみならず、子どもたちの学びの場や府民の皆様にとって身近で様々な文化に触れる機会を創出し、加えて、地域の文化・観光の拠点となり、地域の活性化等に向けた取組などの推進につながる施設であるとの視点から質疑し、積極的な本府の取組を図ってきていただいているところです。
 そこで、ICOM京都大会にも大きく寄与されました「生きた植物の博物館」の理念の下、2024年には開園100周年の節目を迎える府立植物園について数点お伺いいたします。
 府立植物園は、1924年1月に大典記念京都植物園として開園され、この間、1946年から12年間に及ぶ連合軍の接収、台風による甚大な被害、最近では台風21号により約300本もの倒木被害を受けるなどの困難を乗り越え、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前には、京都府内外の多くの方々に愛される、年間約90万人が来園される府民の貴重な財産として多大な役割を果たし続けています。
 府立植物園の主な特徴としては、総面積24ヘクタール、そして保有数としては国内最高規模を誇る1万2,000種類もの植物が栽培・展示されて、国内初導入や、栽培困難種の植物の育成及び絶滅危惧種などの希少植物の保全にも取り組まれているとともに、平成27年には京都において地球の生命と自然に触れることのできる自然科学系の博物館として、「生きた自然の教科書」とも言える4つの園と館で包括連携協定を締結して、かけがえのない京都の自然環境を保全・継承、体験・啓発するための取組を展開されております。そして、より多くの皆様に御覧いただき、植物園の魅力を享受してもらうべく、様々な展覧会、年間50回、また年間80回に及ぶ各種展示会等、そしてまた職員の皆様方に御案内いただく「土曜ミニミニガイド」等々、園長さん、副園長さんも頑張っていただいております。季節に合わせて開園時間の延長、早朝開園や夜間ライトアップ等の実施等、年間を通じて四季折々の活動を展開されております。
 さらに、府立植物園が先人より引き継いだ優れた栽培技術の顕著な例として、昨年7月16日には、30年近く栽培に取り組んだ成果が実を結び、世界で最も背が高く、最も臭い花で知られるショクダイオオコンニャクの開花に成功されました。2日ほどでしおれてしまうため短い期間でありましたが、約1万4,000人もの方々が温室にて観覧されたところでございます。また、絶滅危惧植物保全温室ではアマミアセビを保護し、園内にて観覧できるように育成されております。
 これらの取組にはバックヤードでの試行錯誤による長年の研究が実ったものであり、「日本一おもしろい、心やすらぐ植物園」を目指す府立植物園としては、バックヤードの重要性が再確認された具体例であります。
 そこで、確認の意味も含め、お聞きします。
 私は、従前より、植物園の心臓部とも言えるバックヤードの果たす役割や重要性を鑑み、本会議質問等で取り上げ、2019年2月定例会では、当時の知事答弁におきまして「植物園のバックヤードについては植栽・展示や希少植物の育成のためには大変重要と認識している」と言及されました。
 植物園の整備に当たっては、府民目線でさらなる魅力創出に向け、ハード・ソフト両面を見据えた京都府立植物園100周年未来構想が2019年2月に策定された後、2020年には北山エリア整備基本計画が定められ、具体的検討が進められておりますが、2ヘクタールを有するバックヤードは今後も確保されるとともに、必要な改修や作業がしやすいように高機能化が図られるとの方針について、いま一度、変更はないのか、御答弁ください。
 また、今後も有識者による懇話会にて整備計画が議論されると存じますが、既に公表されております北山エリア整備のイメージ図は、バックヤードをはじめ、誤解を生む絵図となっていると思いますので、しっかりと精査し、改めて府民の皆様に示していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
 府立植物園の学術研究機能の向上についてもお聞きします。
 大典記念京都植物園の設立趣旨及び目的には「普通教育を基本とし、大自然に接して英気を養い、園内遊覧のうちに草木の名称、用途、食用植物、熱帯植物、有毒植物、特用植物、薬用植物及び園芸植物等の知識と天然の摂理一般を普及させ、加えて我が国植物学会各分野の学術研究に資することを目的とする」とあります。先ほど述べましたバックヤードに加え、老朽化が著しい観覧温室の建て替え、そして貴重な植物等の標本整理展示やシンポジウムの開催も可能な博物館機能を有する設備等、府民の皆様が享受でき得る学術研究機能の向上について基本的なお考えをお示しください。
 私ごとで恐縮ですが、植物園には、60年余り、春夏秋冬、そのすばらしさに触れる機会を多く持ってまいりました。貴重な植物の栽培や展示をはじめ、園内の清掃等、隅々まで汗を流す職員の方々の姿を拝見してまいりましたが、時代の変遷や様々なニーズへの対応、そして技術の継承等を鑑みますと、その労力に比べて職員数並びに研修の機会確保について検証する必要があると考えます。府立植物園が心の安らぎと植物研究の両輪で「生きた植物の博物館」としてより一層府民に寄与することができますよう、人材の確保・充実・育成について支援いただきますよう要望いたします。
 次に、府立高等学校の「総合的な探究の時間」における今後の取組について教育長に質問いたします。
 文部科学省は、学習指導要領の「総合的な学習の時間」を「総合的な探究の時間」に改定し、平成31年度から各高校において先行実施されています。
 この総合的な学習(探究)の時間は、「変化の激しい社会に対応して、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成する」ことを目指し、1)探究の過程において、課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究の意義や価値を理解するようにする、2)実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする、3)探究に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度を養う、との3点を目標とし、これからの時代においてますます重要な役割を果たすものとしています。つまりは、旧総合的な学習の時間と比較して、文部科学省が求める「資質・能力の3つの柱」にある知識や技能だけにとどまらず、見えづらい学力である思考力、判断力、表現力や、見えない学力である学びに向かう力、人間力といった力を網羅的に育成する授業としての位置づけと理解し、予測不能な時代に必要な新科目であると大いに期待するところであります。
 そこで教育長にお聞きします。
 文部科学省は、平成30年に告示されました新学習指導要領について、創意工夫を生かした特色ある教育課程を編成し、実施するよう、各学校へ通知されております。その中でも特に「総合的な探究の時間」について、先行実施から3年目となる現在の府内の各高等学校の取組状況について教えてください。
 次に、京都府立北陵高等学校の主な教育実践例を御紹介し、総合的な探究の時間における地域との連携についてお聞きします。
 まず、北陵高校の授業での取組として、「鞍馬寺の風倒木に新しい命を吹き込む」をテーマとして、風倒木を利用し、製作した木製ブロックを使った児童生徒の空間認識向上のための教育ツールの開発と展開が実施されました。この取組は、2018年9月4日の台風21号により京都市左京区鞍馬地域に甚大な倒木被害が発生し、山腹の崩落による地域の鉄軌道が運休する等の被害が発生し、その後、2020年の春に、同校の天文地学部が鞍馬寺風倒木被害の調査を行う縁から、原則門外不出の実生の木である境内の倒木を教育に利用する許可を得て始まりました。
 なお、被害の復旧工事は、西脇知事の英断により早期に実施されて、鉄軌道も2021年9月18日に全線運転が再開されておりますことを申し添えておきます。
 このプロジェクトに関わった生徒さんは、風倒木を教育のために活用する「何か」を創造し、鞍馬寺を中心とした地域の課題解決と元気を取り戻す起爆剤にしたいという願いをもって研究、試行錯誤の上、既製品にはない教育ツールとしての木製のブロック、積み木の開発へとつなげていきました。様々に積み上げることでできる空間を「ひみつ基地」として展示、さらには様々なワークショップ等を実施し、新型コロナウイルス感染症の収束後には、検証を重ね、この木製ブロックの生産・販売・流通システムをつくり、鞍馬寺と周辺に元気をもたらしたいとのことであります。
 この活動は、SDGsの目標のナンバー11「住み続けられるまちづくり」の実現のための「京都府地域活性化プロジェクト2020」の一つのプロジェクトチームであり、岩倉特有の食文化を発信する「食のツーリズムチーム」、ゼロエミッションを目指した持続化園芸等の「スクールガーデンチーム」、岩倉のすてきな場所を地域ツーリズムとして推進する「岩倉遺産チーム」、近隣の無人駅の集客アップを目指したプロモーションをする「叡電木野駅聖地化プロジェクトチーム」と、ステークホルダーで実践を進めております。ほかにも、近隣公園の防災機能評価フィールドワークに取り組み、これらの実践は教育活動や研究の成果を地域に還元することを目指し、生徒自らの活動を大学や地域の協力や支援によって学ぶ意欲と自信を引き出すことを期待して推進されております。
 そこでお聞きいたします。
 府立高等学校における総合的な探究の時間と地域の連携、及びコミュニティ・スクールとして地域に根差した教育活動の意義について教育長の御所見をお願いいたします。

◯議長(菅谷寛志君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 困難な問題を抱える女性への支援と新たな法制度の整備についてでございます。
 婦人保護事業は、売春防止法に基づき、保護が必要な女性の相談や更生のための指導を目的として開始されたものですが、平成14年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」、いわゆるDV法が施行され、その被害者への支援が婦人保護事業の対象に追加されました。これを受け、DVを受けた女性や子どもを適切な支援につなぐため、婦人相談所や児童相談所などの機能をまとめた家庭支援総合センターを設置し、対応してまいりました。
 困難な問題を抱える女性に対する支援の在り方についての課題といたしましては、これまで婦人保護事業の対象として想定されなかったJKビジネスやAV出演強要などの被害に遭った女性への支援・ニーズへ十分に対応できていないこと、ストーカーや性被害、家族関係の破綻など複雑・多様化する問題にも対応できる、相談から保護、自立支援までを専門的、包括的に提供する仕組みがないこと、さらに家庭等に居場所のない若年女性たちの問題に対応できていないことなど、現場からの声が全国で上がっているところでございます。このため、議員御紹介のとおり、国において検討会が設置され、「婦人保護事業を売春防止法から切り離し、包括的に支援する新たな制度が必要」との提言が行われたところでございます。
 京都府といたしましても、困難な問題を抱える女性が増加する中、18歳を超えても自立に至るまで包括的に切れ目のない支援を受けられる新たな枠組みが必要な状況にあることから、法制化を含め、国に速やかな対応を求めていきたいと考えております。
 次に、NPO等の取組に対する支援策についてでございます。
 京都府においては、子育てや児童虐待、DV被害者の支援に取り組む女性団体やNPO団体などに対して、平成27年度から女性活躍応援補助事業により支援をしております。
 こうした中、国の検討会においても、「行政による支援に加え、NPO等による特色ある支援も含めて、互いに強みを生かし、連携・協働しながら推進するよう」提言されたところでございます。加えて、コロナ禍において女性からの相談が多様化、複雑化しているため、今年度から、民間団体と連携することにより、より多くの方々が身近なところで相談できるよう、電話やオンラインでの相談など、窓口機能の強化を図ったところでございます。
 今後とも、女性団体やNPO団体などへの支援と連携に努めることにより、DV被害者や独り親家庭など、困難を抱える女性の問題を解決してまいりたいと考えております。
 次に、ICOM京都大会を契機としたミュージアムの未来と支援についてでございます。
 京都府内の博物館、美術館等で構成する交流ネットワーク「京都府ミュージアムフォーラム」には現在67館が参画しており、多くのミュージアムは「所蔵品が限られており、展示内容が固定的で変化がない」「ミュージアムの魅力向上や学芸員等の資質向上のための研修等が十分でない」などの課題を抱えております。このため、ミュージアムフォーラムでは、参画館相互が連携することによって、こうした課題の解決を図りながら、より魅力あるミュージアムとして多くの皆様に御利用いただけるよう、取組を進めているところでございます。
 例えば、これまでに参画館に共通するテーマによる合同展覧会の開催、各参画館の魅力を伝えるミュージアムフォーラムサイトやテレビ番組の作成、ミュージアムを活用した教育普及のためのミュージアム・エデュケーション研修の開催などを行ってまいりました。また、参画館同士による定期的な意見交換会において各館の日頃の悩みなどを共有し、解決に結びつけたり、展覧会のアイデアを出し合ったりするなどの相互交流を図ることなどにより、各館のレベルアップや魅力向上につなげているところでございます。
 本年度は、宮津、亀岡の両地域の参画館の学芸員が、教育委員会や学校と連携し、高校生らが地域の文化資源を自ら体験して学ぶ「街歩きツアー」を実施してまいりました。学んだことを互いに発表し、学芸員を交えた交流を行うことで地域文化への理解や地域への愛着・誇りを深めてもらうなど、ミュージアム連携の効果も出始めているところでございます。
 今後とも、府民の皆様が日頃から身近に文化に触れ、ミュージアムに親しむことができるよう、参画館相互や国立博物館の所蔵品等の貸与や展示、次世代のための地域文化の探訪や歴史講座、学校・地域との交流や対話型鑑賞、IT活用などに関する学芸員の資質向上に向けた研修など、各館の魅力向上を図るとともに、地域の活性化にもつながる取組を充実強化してまいりたいと考えております。
 次に、植物園の整備についてでございます。
 北山エリアは、植物園、京都学・歴彩館、府立大学、京都コンサートホールなどが立地し、自然、文化・芸術、学術・教育に幅広い世代の方が触れられる、すばらしいエリアでございます。その中でも、植物園はエリアの総面積の3分の2を占めるエリアの中核施設であり、その整備は非常に重要であることから、国内外の植物園に精通した専門家の方々をはじめとした有識者による懇話会を設置し、「100周年未来構想」の具現化など、これからの植物園に求められる整備内容を検討することといたしました。
 植物園は、これまで継承してきた優れた育成栽培技術を土台として広く府民に憩いの場を提供しており、その基盤となるバックヤードにつきましては、私はこれまでから植栽展示や希少植物の育成のために大変重要な施設であると申し上げているところでございます。植物園の整備により、バックヤードの拡充・高度化、栽培技術の向上と技術継承、希少植物の保全・強化などの機能向上を目指しますとともに、自然豊かな府民の憩いの場としての魅力向上が図られるよう、検討を進めてまいりたいと考えております。
 なお、北山エリア整備基本計画は、エリア全体の将来像や整備の方向性を定めたものでございますので、今後は個々の施設の整備内容についての検討を進め、その検討結果との整合を図りながら内容を更新し、府民の皆様にお示ししていきたいと考えております。
 また、植物園は、訪れた人たちが植物に触れ合うことで、楽しみながら植物や自然について学ぶことができる「生きた植物の博物館」でございます。このような植物園の魅力をさらに高めるためには研究・教育機能の強化が不可欠であり、大学や研究機関と連携した研究体制を構築し、研究成果に裏打ちされた、多様な世代が楽しめる魅力的な教育プログラムを来園者に提供することが重要であると考えております。
 そのために、まずは、昨年4月に生物多様性の解明や生態系の保全に寄与することを目的に府立大学に設置されました「新自然史科学創生センター」を核として、研究分野における府立大学との連携を強化してまいりたいと考えております。また、府立大学に加え、京都大学総合地球環境学研究所など、生物多様性や環境問題など関連する分野の大学研究機関との連携について議論を深め、植物園を植物に関する学際的な研究拠点として機能強化してまいりたいと考えております。
 さらに、大学等との研究成果を踏まえた教育プログラムを提供する仕組みの構築や、観覧温室、標本庫、常設の展示室をはじめとする施設の整備など、ハード・ソフト両面での取組について有識者の専門的な視点から検討を進め、将来の京都を担う子どもたちをはじめ、幅広い世代が植物に触れながら自然環境や植物と人との関わりを学べる場として、また府民の憩いの場としての植物園の魅力を一層高めてまいりたいと考えております。
 こうして北山エリアが、各施設の役割・機能を高めながら相互に連携して、京都が世界に誇る文化と憩いに包まれながら、人生を豊かにする、魅力あふれる交流エリアとなることを目指してまいりたいと考えております。

◯議長(菅谷寛志君) 橋本教育長。
   〔教育長橋本幸三君登壇〕

◯教育長(橋本幸三君) 北岡議員の御質問にお答えいたします。
 府立高校における「総合的な探究の時間」の取組状況についてでございますが、議員御紹介の北陵高校をはじめ、SDGsの目標も踏まえた課題を設定するなど、各校で様々な取組が進められております。
 例えば福知山高校では、「みらい学」として探究に必要なスキルや問題へのアプローチの仕方を学び、福知山の洪水被害を軽減する方策など、生徒が様々なテーマを設定し、主体的な探究活動を行っております。また、亀岡高校では、「探究クリエーション」として探究手法の基礎である「文献調査」「フィールドワーク」「データサイエンス」「表現」の4つの分野を学んだ後、各自が興味・関心のある分野を選び、亀岡市が取り組む「プラごみゼロアクション」など、具体的なテーマを設定して学びを深めております。
 このように、新学習指導要領の先行実施の3年間で、総合的な探究の時間の目標である「自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力の育成」に向け、実社会と自己との関わりから問いを見いだし、主体的、協働的に取り組み、その成果をまとめ、表現する教育活動が各校で進められているところでございます。
 府教育委員会におきましても、全校を「サイエンス」「グローバル」「スペシャリスト」「フロンティア」の4つのネットワークに分け、それぞれ、年に1回から2回、総合的な探究の時間の成果を発表・交流する場を設けております。生徒たちは質疑応答を通じて得たヒントやアイデアなどを自身のその後の探究活動に生かしており、どのネットワークにおいても発表内容の質が年々向上しているところでございます。
 また、職業学科では、これまでから、専門的な知識を生かし、地域の課題解決を目指した教育活動を実施してまいりましたが、総合的な探究の時間の導入により、普通科も含め、府立高校全体で地域課題をテーマに取り上げることが増えてまいりました。こうした取組は地域に根差した府立高校のよさを生かしたものであり、よりよい地域社会の実現や、地域ならではの新しい価値を創造する人材、地域を支えるリーダーの育成につながるものと考えております。
 加えて、本年度からほとんどの府立高校がコミュニティ・スクールとなりましたが、コミュニティ・スクールは学校と地域の双方向での連携を基本の考え方に据えており、学校の教育目標を共有し、地域にある人材資源を活用した協働活動の実現を目指すものであります。今後は、コミュニティ・スクールの仕組みも活用しながら、地域にその成果を提言していくことなど、より実践的な取組に発展させてまいりたいと考えております。
 府教育委員会といたしましては、よりよい社会を実現しようとする態度を育むとともに、地域を担う人材を育成する「地域とともにある学校づくり」の推進に努めてまいります。

◯議長(菅谷寛志君) 北岡千はる議員。
   〔北岡千はる君登壇〕

◯北岡千はる君 御答弁ありがとうございました。
 まず、困難な問題を抱える女性の支援につきましては新たな法制度の整備を期待するものでございますが、京都府のこれまでの様々なお取組、そして関係機関、支援団体の実情に即したものとなりますよう、必要な申入れは国に対して行っていただきたいなというふうに考えております。様々な御尽力に感謝するところでございます。
 ミュージアムにつきましては、文化庁の京都移転を契機として、より一層の連携が図られることを期待申し上げます。
 また、「生きた植物の博物館」としての府立植物園。先ほども申し上げましたが、安らぎと研究機能を擁するということでございますので、府民の貴重な財産として、より一層の整備、よりよい整備が図られますことを御期待申し上げますし、どうぞ誤解を生まない状況の説明をぜひ絵図も含めてお願いをしておきたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
 それから、ICOM京都大会にも大きく寄与されました府立丹後資料館の早期リニューアルについては、さきの11月府議会にて地元の府会議員さんからも言及がございましたとおり、多くのポテンシャルを有し、また地域の皆様が日頃から足を運んでいらっしゃり、各イベントにも大変協力されております。身近で、地域の方々をはじめ、多くの方々に大変愛されるミュージアムの一つでもございます。また、屋上からの眺めもこの館ならではの魅力ということもお聞きしておりますので、この館が持つポテンシャルが最大限に生かされるリニューアルとなりますよう、早期の着工と併せて要望しておきます。
 府立高校における総合的な探究の時間につきましては、各校にて様々な教育実践を展開され、よく分かりました。高く評価いたしますとともに、先生方の導きによるところも大変大きいと存じます。より一層の指導者の育成、そして研究の機会を確保賜りますようにお願い申し上げたいと存じます。
 なお、府立高校の施設のことなんですけれども、昨日もほかの議員から言及がございましたが、老朽化に伴う施設改修工事を順次実施していただいていると思うんですが、とりわけトイレの改修です。北陵高校もそうなんですが、保護者からも多くの要望がずっと上がっております。次年度予算案にも計上されておりますが、老朽化度合いによる改修計画もしっかり立てて促進いただきますよう、財政当局にも要望しておきたいと思います。
 質問は以上でございますが、結びに、私ども府民クラブ京都府議会議員団は、これからも西脇知事とともに、蔓延する新型コロナウイルス感染症による困難を乗り越え、未来に希望の持てる安心の京都府づくり、共生社会の実現に向け、先憂後楽の精神をもって誠心誠意尽力してまいりますことをお誓いし、会派を代表しての質問を終わらせていただきます。
 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)