1.コロナ禍の避難所対策について
2.人権啓発としての「包括的性教育」について
3.学校現場での子どもたちの命を守る取組について
4.その他

質疑全文を表示

◯議長(菅谷寛志君) 次に、田中健志君に発言を許します。田中健志君。
   〔田中健志君登壇〕(拍手)

◯田中健志君 府民クラブ議員団の田中健志でございます。
 まず初めに、コロナ禍の避難所対策についてお伺いいたします。
 避難所の開設・運営は、基本的には市町村業務であると認識しておりますが、府民の安全確保の観点から、次の諸点について府内の取組状況や京都府の考え方を確認したいと存じます。
 まず、自宅療養者の一時避難についてです。
 本年8月の第5波のとき、新型コロナの感染急拡大に伴い自宅療養者も急増しました。京都府の自宅療養者は、8月26日に最多の4,495人となりました。その一方で、8月12日からの大雨により府内で住家46棟の建物被害等が発生し、約7万3,000世帯、15万人弱に避難指示が出されました。新聞報道によりますと、8月14日、京都市は土砂災害や浸水の危険性が高い地域にお住まいの自宅療養者に対し宿泊療養施設への避難を電話で呼びかけ、呼びかけに応じた方々は市が契約しているタクシーでホテルに避難されました。また、南丹市の自宅療養者の方も京都市内のホテルへ避難されたケースがあったと伺いました。このように自宅療養者の災害避難の基本的な対応としては、京都市内は京都市から、それ以外は広域振興局から自宅療養者に直接連絡しホテル等に避難していただくことにしており、また自力移動が困難な方は各保健所の搬送用の公用車かタクシーを活用すると伺っているところです。
 ただ、台風や大雨など、ある程度の予測の上、あらかじめ準備ができる自然災害ではなく、例えば大地震等、予測が難しい災害の場合、本府の基本的な対応方針では、そのような時間的余裕がなく、さらに災害の状況によっては、これらの手順を踏まずにすぐに避難する必要性が生じると私は考えます。その際、自宅療養者の方々も、近くの避難所へ一旦避難することも想定されるのではないでしょうか。
 例えば、東京都では都の避難所における「新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」を拝見しますと「避難者の受入れの基本的な考え方」の中で、「基本的には、新型コロナウイルス感染症の場合は、軽症者等であっても原則として一般の避難所に滞在することは適当ではありませんが、在宅避難ができないなど、一時的に一般の避難所で受け入れざるを得ない場合も考えられます」とした上で、自宅療養者については「避難所に『自宅療養者待機スペース』を設けここに待機の上、保健所に連絡しホテル等の宿泊療養施設への入所を調整する、ただし移動に危険が伴う場合や受入施設が確保できない場合はこの待機スペースで健康観察する」としています。
 そこでお伺いいたします。自然災害発生時において、新型コロナの自宅療養者の方々は、ホテル等の宿泊施設への入所や、場合によっては自宅近くの避難所への一時避難など、その時々の災害の状況に応じた臨機応変な対応が求められ、京都府として自宅療養者の方々に適切な避難行動を取っていただく必要があると考えますが、本府の御所見はいかがでしょうか。
 次に、避難所の感染対策、特に受付業務の混雑緩和についてお伺いします。
 昨年12月に改訂された京都市の「避難所運営マニュアル【別冊】新型コロナウイルス感染症対策編」によりますと、受付に「避難所運営スタッフ(区役所・支所職員、自主防災会スタッフ)等を配置し、受付の業務としては、名簿に必要事項を記載する。避難者のマスクの着用を確認し、つけ忘れの方には備蓄マスクを渡す。避難者に手指をアルコール消毒してもらう。『健康観察表』による健康調査。非接触型体温計による体温計測により体調不良者等を把握する」として、体調不良者は別部屋に案内するということになっています。
 一方で、本年5月に内閣府(防災担当)が発表した「避難所における新型コロナウイルス感染症対策等の取組事例集」を拝見しますと、愛知県が避難所の開設・運営に当たる県内市町村職員等に感染防止対策の手順を理解するための感染防止対策研修を実施した結果、「本研修の演習の中で、避難所の受付の際、避難者の検温や健康チェック等に時間がかかり、受付付近が密になる状況があった。発災時は受付を行う人員が足りなくなることも想定されることから、密を避けつつ、スムーズに受付を行うことが必要」と課題を挙げています。
 このように感染拡大期には、自然災害発生時に受付に避難者が殺到したり長蛇の列ができることも想定されます。したがって、受付業務の混雑緩和を含めた避難所での感染拡大防止対策が重要であると考えますが、府内市町村の取組状況をどのように把握されているのでしょうか。また、本府としても避難所における感染拡大防止を図るため、適切に市町村を支援すべきと考えますが、この点どのようにお考えでしょうか。
 次に、備蓄品の手配についてです。
 さきに紹介した内閣府(防災担当)の「避難所における新型コロナウイルス感染症対策等の取組事例集」によりますと、備蓄品について北海道はマスク50万枚、アルコール消毒液2,000本、非接触型体温計1,800本、ダンボールベッド2,000台、ダンボールパーティション2,000セットを、宮城県では、マスク6万枚、アルコール消毒液1,500リットル、非接触型体温計500個の備蓄を新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用して進めたとしています。
 長期化するコロナ禍に対応するため、災害備蓄品についても新型コロナの感染拡大を防止するため資機材整備等、前例にとらわれない臨機応変な対応が必要であると考えますが、本府ではどのように対応されているのでしょうか。また、避難所の現場を担う府内市町村の備蓄等対応状況をどのように把握されているのか、お伺いいたします。
 次に、2つ目の質問項目として、人権啓発としての「包括的性教育」についてお伺いします。
 包括的性教育とは、性に関する知識やスキルだけではなく、人権やジェンダー観、多様性、幸福を学ぶための重要な概念で、「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」には、国際的に目指すべき性教育のスタンダードとして紹介されています。
 このガイダンスは、ユネスコが中心になり、ユニセフなど幾つかの国連機関や性教育分野の専門家の協力を得て、2009年に初版が発行され、日本語訳としては2017年に出版されました。ユネスコのニュースリリースによりますと、「すべての国の教育政策担当者を対象にして、5歳から18歳以上までの子どもや若者にとって、正確でそれぞれの年齢に適したカリキュラムを提供できるようにまとめられている」として、包括的性教育の重要性を強調し、各国に様々な形で影響を与えてきました。
 また、改訂版については、ユネスコが「最新の科学的エビデンスに基づき、国際セクシュアリティ教育ガイダンスは、性教育を人権とジェンダーの平等という枠組みの中に位置づけることを再確認しました」とコメントしています。
 具体的に見ていきますと、8つのキーコンセプトがあり、それらは、1)人間関係、2)価値観、人権、文化、セクシュアリティ、3)ジェンダーの理解、4)暴力と安全確保、5)健康と幸福のためのスキル、6)人間の身体と発達、7)セクシャリティと性的な行動、8)性と生殖に関する健康であり、これらについて5歳から学び始め、繰り返し学び、そして年齢ごとにその学びを深めていくというものです。
 また、この包括的性教育は、「子どもたちや若者に個々が尊重された社会的、性的な関係を育てていくこと」や「子どもたち自身のいろいろな選択が自分や他者の幸福や喜びにどう影響するのかを考えること」「子どもたちが生まれてから死ぬまでの生涯を通じて自分たちの権利を守るということを理解し励ますこと」といった知識やスキル、価値観等を身につけさせることを目的にしています。
 このように包括的性教育は、端的に申し上げると人権とジェンダーの平等を最も大切にしながら、どうしたら自分も相手も尊重される対等な人間関係を築けるのかという教育だと私は理解しています。また、日本では性教育というと、体のことや妊娠・出産、性感染症予防といったことがまず思い浮かびますが、包括的性教育は人間の性をもっと広く捉えています。
 足元の実態として、2020年我が国の出生数は統計史上最も少ない84万人強、その一方で2020年の人工妊娠中絶は14万5,000件強、さらにはコロナ禍における予期しない妊娠の増加が指摘されています。
 本府が目指す子育て環境日本一は、子どもが社会の宝として地域の中で温かく見守られ、健やかに育ち、子どもの生き生きとした姿と明るい声が響き渡る社会の実現であり、そのために出会い・結婚から妊娠・出産、子育て、保育・教育、就労に至るまでの総合的な子育て支援を行う体制の構築に向けて取組を進めているものと理解しています。
 そういった社会を目指すのであれば、一連の取組の一環としても、より人権意識を持った包括的性教育の普及や活用に他府県に先駆けて努めるべきと考えますが、御所見をお聞かせください。
 まずは、ここまでの御答弁をお願いいたします。

◯議長(菅谷寛志君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 田中健志議員の御質問にお答えいたします。
 災害時の新型コロナウイルス感染症自宅療養者の避難についてでございます。
 自宅療養者につきましては、他の避難者への感染拡大の防止と適切な健康観察のため、原則として宿泊療養施設や医療施設に避難していただくことが適当と考えております。このため、全ての自宅療養者について、あらかじめお住まいの家屋の状況や洪水浸水想定等を確認の上、被災の可能性がある方については、台風接近時など災害が予測される場合に宿泊療養施設などに事前に避難していただくこととし、搬送受入れのための体制を構築しているところでございます。
 一方、予測が困難な大地震などの災害時には、多くの方が直ちに避難を必要とすることから、市町村と連携し、近隣の避難所に一般の避難者とは別のスペースを確保して一時的に避難していただきますとともに、宿泊療養施設などが確保でき次第、そちらへ避難していただくこととしております。
 今後とも、災害の状況に応じて、自宅療養者が適切な避難先に避難していただけるよう努めてまいりたいと考えております。
 また、避難所の感染対策についてでございますが、コロナ禍における避難所運営においては、これまでの運営に加えましてソーシャルディスタンスを確保することや、体調不良者を分離するレイアウトにすることなど、十分な配慮が必要となります。京都府では、市町村が避難所を運営する際の参考としていただくため、昨年5月に「避難所運営における新型コロナウイルス感染症への対応マニュアル作成指針」を策定し、市町村による避難所の着実な感染防止対策を支援してまいりました。この指針を受け、現在ほぼ全ての市町村で避難所運営マニュアルを作成済み、あるいは策定中であり、マニュアルに基づく避難所運営訓練を通して感染対策の課題や実効性を確認していただいているところでございます。
 市町村からは、受付に避難者が滞留する可能性があることや、体調不良者の動線や空間を分離するためのスペースのある避難所が不足していることなどの課題をお聞きしております。京都府といたしましても、受付の手順やレイアウトなどを工夫されております他府県の取組事例を市町村に紹介いたしますとともに、避難所数を確保するため旅館、ホテル、関係団体との協力協定の締結や、車中避難場所の確保対策、広域避難体制の検討などに取り組んでいるところでございます。
 今後とも、避難所における感染防止対策に万全を期すため、市町村の状況を十分にお聞きしながら支援に努めてまいりたいと考えております。
 その他の御質問につきましては、関係理事者から答弁させていただきます。

◯議長(菅谷寛志君) 壺内危機管理部長。
   〔危機管理部長壺内賢一君登壇〕

◯危機管理部長(壺内賢一君) 備蓄等の対応状況についてでございます。
 京都府では公的備蓄の基本方針を定め、府内最大の被災が予想される花折断層帯地震を想定し、食料品や毛布、簡易トイレなどの重点備蓄品28万人分を市町村と分担して備蓄しております。
 コロナ対策のために、新たに避難所で必要となりましたパーティション等の資機材につきましては、昨年度と今年度で国の新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金を活用し、市町村に購入費補助を行い、23の市町村に活用いただきました。また、多くの事業者等から避難所のコロナ対策用に寄附をいただきましたマスク1万4,000枚、体調不良者対応のための防護服1,600着などの消耗品につきましても、各市町村に分配させていただいたところでございます。
 この結果、現在市町村からは、避難所におけるコロナ対策資機材はおおむね充足している状況というふうにお聞きしておりますが、コロナ禍のさらなる長期化や想定以上の災害にも備えておく必要があります。
 京都府では、流通事業者や小売事業者と災害協定を結び、マスクや消毒液等、必要な物資を調達・搬送する仕組みを整備しているほか、市町村間あるいは都道府県間で物資を融通し合えるよう調整を行うなど、被災の状況に応じた適時・的確な対応により市町村を支援してまいりたいと考えております。

◯議長(菅谷寛志君) 益田府民環境部長。
   〔府民環境部長益田結花君登壇〕

◯府民環境部長(益田結花君) 人権啓発としての包括的性教育についてでございます。
 包括的性教育につきましては、妊娠・出産といった体の仕組みについての知識を得ることのみならず、命と健康の大切さや、ジェンダーの理解、他者への思いやりなど、幅広く包含しているものと承知をしており、このことは誰もが生き生きと暮らし、幸せを実感できる「人とコミュニティー切にする共生の京都府」づくりに重要な視点と認識しております。
 近年、子どもたち自身の身体的・生理的発達の早まりや、社会の国際化や情報化などにより、性に対する意識、価値観の多様化、様々な情報の入手のしやすさなど、子どもたちを取り巻く社会環境や生活環境は大きく変化しております。こうした変化も踏まえ、議員御紹介のガイダンスが対象とする年齢層の多くが通う学校教育の現場においても、体の仕組みなど狭義の性教育に加え、生命尊重や望ましい人間関係、他者への思いやりを含めて学ぶ「性に関する教育」として、発達段階に応じた教育が進められているところでございます。
 また、関係団体などの協力も得て、妊娠・出産に関する助産師等の出前講座やドメスティックバイオレンスに関する講座の開催等を通じ、児童生徒のほか、広く府民に対して家族の大切さや、男女が互いの尊厳を重んじる自立した関係づくりなどについて幅広く学び、考える機会を設けているところでございます。
 子育て世代をはじめ、全ての人にとって暮らしやすい社会を目指す子育て環境日本一の実現に向けては、社会全体で子どもや子育て世代を温かく見守り支え合う、子育てに優しい風土づくりが必要であり、それを根底で支える人権意識の向上が不可欠であると考えております。
 このため、引き続き、人権の視点から生命や健康、人間関係の大切さやジェンダーの平等など、性に関する多面的な意義について関係機関などとも連携し、積極的な啓発等を進めてまいりたいと考えております。

◯議長(菅谷寛志君) 田中健志君。
   〔田中健志君登壇〕

◯田中健志君 もう26年も前になりますけれども、阪神・淡路大震災のときに、私はボランティアで大阪から自転車で神戸の小学校の避難所におにぎりや水を持って行った経験があります。当時1月で寒かったのもありますけれども、避難所のあの狭い教室に避難者の方々がひしめき合って過ごしておられた強い印象を持っておりまして、本年8月の第5波のときに、自宅療養者が3,000人、4,000人のときに、もし仮に今大地震が起こったらどうなるんだろうと思って冷や冷やしておりました。
 それぞれ適切な御答弁であると思います。自宅療養者のこともそうですし、また受付も滞留することが十分に想定されると思います。今、コロナが収まっていて、今後どうなるかまだ分からない面もありますけれども、今のうちにしっかりと御答弁の内容を府内の全ての市町村に行き渡らせていっていただきたいと思いますし、私の地元地域もそうなんですが、なかなか防災訓練が例年のようにできていないと。やっぱり、どうしても感染防止対策ということで、これまで学区の全ての住民の方を対象にしていた防災訓練が、町内で代表者1人とか、そんなふうになってしまっていますので、なかなかそうした取組についても全域には浸透していないという可能性もあるかと思います。御答弁のような内容について、府内全域でのしっかりとした準備、チェックを改めてお願いしておきたいと思います。
 また、包括的性教育についてでありますが、子育て環境の充実に関する特別委員会の参考人として助産師の谷口貴子さんがお見えになり、谷口さんからこの包括的性教育についてお伺いいたしました。谷口さんの御指摘の中で、実は日本は性教育後進国なんだという御指摘がありまして、少なからぬショックを受けました。
 それで、この包括的性教育についての調査を進めるきっかけになったんですけれども、御答弁の中にありましたとおり様々な関係機関との連携で、例えば出前授業ということで先日私も朱雀高校のデートDVの授業を拝見させていただきました。高校生の皆さんに対して対等な関係をつくると、自分も相手も大切にするということをしっかりとお伝えされていたという様子を拝見し、高校生の皆さんもしっかりと聞いておられたと思います。そうした取組も含めて、繰り返しになりますけれども、本府が子育て環境日本一を目指すということは、包括的性教育も含めた、そうした取組も日本一を目指していくということで、他府県に先駆けた先進的な具体的な取組を改めてお願いしておきたいと思います。
 それでは、3点目の質問項目としまして、学校現場での子どもたちの命を守る取組についてお伺いいたします。
 京都市立養徳小学校で、2012年に当時1年生の児童がプールで溺れて死亡した事故を受けて京都市教育委員会は「安全教育と事故対応の指針」を作成し、その児童の名前にちなんだ「HANAモデル」として、教育現場で広く共有する取組を進めています。
 事故は、2012年7月に低学年を対象にした夏休みのプール学習中に発生しました。事故後に第三者委員会がまとめた報告書によりますと、現場にいた教員の対応について「明確に役割分担し、監視を徹底していれば事故の回避は十分可能だった」と指摘しています。
 養徳小学校では、事故後、安全教育と事故対応の指針を「養徳スタンダード」として策定し、地震などの自然災害や不審者対応などを含め、年間10回ほどの訓練を毎年行い、適宜マニュアルを改訂し、2016年には学校安全の認証であるセーフティプロモーションスクールの認証を受けました。
 これは日本セーフティプロモーションスクール協議会により、「包括的かつ協働的な学校安全を推進する取組を展開・実践する体制が整備された学校」と認証された学校で、大阪教育大学附属池田小学校など全国で25校が認証されているものです。
 京都市教育委員会では、事故から9年がたった今年度、二度とこのような痛ましい事故を繰り返さないように、そして全ての学校で危機管理を徹底するために、この指針を「HANAモデル」として積極的に発信することを決めました。
 そこで、そのモデルを活用した公開実地訓練が先日、私の地元、京都市立朱雀第六小学校で実施されましたので拝見してまいりました。訓練は2年生の児童が放課後に総合遊具から落下し、頭を強く打って意識不明の状態であるという想定で、現場でどのように行動すればよいのかを考え、適切に対応するため同校の教職員がロールプレイを活用して実施されたものです。
 本訓練の事故対応マニュアルを拝見しますと、「本部」「連絡・記録」「現場対応」「現場対応補助」「児童対応」「救急車対応」「保護者対応」といった担当が明確に分けられており、事故現場では心肺蘇生、救急車要請、保護者対応などの動きについて、教育委員会の担当指導主事から、例えば「その子どもの意識がなくても聞こえているから児童の名前を呼びかけてください」「胸骨圧迫はそれぐらいのペースで」とか、「救急車が入ってくるときには教室のカーテンを閉めておくほうがいい」といった具体的な指示がなされ、一つ一つの動きを検証されていました。また、現場と職員室をリモートでつないで、本部となる職員室でも現場の様子が分かるような工夫がなされていました。さらには、他校の校長や担当教員も参加され、訓練の様子をメモや写真を撮りながら真剣に御覧になっている様子も印象的でした。
 また、ほかの取組も紹介いたしますと、11月5日は世界津波の日ということもあり、丹後でマグニチュード7クラスの地震が発生し津波が起きたとの想定で、宮津市立栗田中学校、栗田小学校、栗田幼稚園が合同で避難訓練を行いました。宮津市のプレスリリースによりますと、栗田中学校52名、栗田小学校73名、栗田幼稚園19名、合計144名の子どもたちに危機対応能力(自ら判断し、自ら行動する力)を身につけさせ、自らの生命と安全を確保するための防災教育の一つとして実施。また、「自分の命は自分で守る」ことだけではなく、上級生が下級生を思いやり「周りの命も大切にできること」を意識して、学年が一番大きい中学生が幼稚園の子どもたちの手を取り、学院の子どもたち全員が協力し、安全に避難する訓練としています。
 新聞報道によりますと、「同校の周辺にはすぐ前に海があり、約140人の児童生徒らは運動場に出た後、1.4キロの坂道を歩き、高台にある市民球場前を目指した。園児はリレーのバトンをつかみ、中学生に引いてもらった」とのことでした。また、訓練に参加された中学生のコメントとして「訓練を教訓にして、地震が起きれば自分だけではなく、小さい子を抱えてでも守ってあげたい」というものがありました。私はこの記事を拝見して、東日本大震災での岩手県釜石市での、いわゆる「釜石の奇跡」を思い出しました。これは津波で壊滅状態となった地区の小学校と中学校が大震災前から合同訓練を実施し、「中学生が小学生を先導する」「まずは高台に逃げる」との教えが徹底され、震災当日には中学生が小学生の手を引いて、また高齢者の方々に付き添って、あるいは近隣の保育園の園児を抱えて避難し、この地区の児童生徒が全員無事に避難することができたもので、御記憶の方も多いと思います。
 これらの取組は、いずれも学校現場での子どもたちの命を守るために必要不可欠な取組であり、府内全域の学校現場で広めていただきたいと考えますが、京都府教育委員会の御所見をお聞かせください。

◯議長(菅谷寛志君) 橋本教育長。
   〔教育長橋本幸三君登壇〕

◯教育長(橋本幸三君) 田中健志議員の御質問にお答えいたします。
 学校現場における子どもの命を守る取組についてでございますが、議員御指摘のとおり、学校現場においては、子どもたちが生き生きと活動し学ぶ場所として、日常的な事故や犯罪被害、交通事故や災害などの防止に努めるとともに、発生時には適切に対応することが重要です。
 そのため各学校におきましては、事故等が発生した場合の対応の手順や役割分担を具体的に示した危機管理マニュアルを作成し、教職員一人一人があらかじめ決められた役割分担に従って迅速に行動できるよう、その内容について校内研修等で共通理解を図っているところでございます。また、危機管理マニュアルにつきましては、状況に応じた行動ができるように図上訓練などを繰り返し実施し、より実効性のあるものとなるよう随時見直しが行われております。
 こうした学校の安全管理の取組とともに、各学校においては、子どもたちが自らの安全を確保するためにどう行動すべきかといった基礎的な能力を身につけられるよう、発達段階に応じて教科等、横断的に安全教育を行っているところです。
 議員御紹介の岩手県釜石市の事例を取り入れ、東日本大震災後に気象庁が作成した避難のポイント等をインタビューやアニメ、クイズ形式などで分かりやすく解説したDVD教材を府内全ての小学校に配布しており、安全教育の中で活用されるとともに、地域の実態に応じて、防災教育にも生かされております。
 また、府教育委員会におきましても、危機管理マニュアルの見直しのポイントや、府内各地域の安全教育の事例、危機対応のチェックリストなどをまとめた安全教育の手引「いのちを守る『知恵』をはぐくむために」を作成し各校に配布するとともに、教職員研修会等で啓発と活用を図っております。
 さらに、発達障害など配慮を要する児童生徒が増加してきていることを踏まえ、平成30年度からは自然災害発生時に、こうした児童生徒への対応をより実効性のあるものにするため、特別支援学校の教職員を対象に、障害特性に応じて配慮すべきことや、効果的な安全教育の方法等についての防災教育研修会を実施してきております。
 今後は、この研修会の内容を特別支援学校以外の教職員が参加する研修会においても周知するとともに、毎年実施しております学校安全教室指導者講習会などにおきまして、議員御紹介の「HANAモデル」や宮津市での校種間連携の取組も含め、全国の好事例を紹介することにより、安全教育と安全管理の両面から子どもの命を守る取組が一層充実するよう進めてまいります。

◯議長(菅谷寛志君) 田中健志君。
   〔田中健志君登壇〕

◯田中健志君 養徳小学校でプール事故のあった2012年というのは、本府にとって亀岡市での集団登校の列に車が突っ込んだ本当に悲しい痛ましい事故のあった年でございました。それ以来、私も大変ショックを受けて、子どもの登校ボランティアなどを続けさせていただいております。教育長御答弁のとおり、府内各地で取組を進めていただいているわけですが、それだけに本府の中では安全教育を怠ってはいけないと思います。しつこいようですけれども、子育て環境日本一を目指す本府にとっては、まさにかけがえのない子どもたちの命をしっかりと守っていくということも当然この中に含まれているわけであります。学校現場の全ての教職員の皆さん誰もが、子どもたち一人一人の命を守るノウハウを身につける取組の強化をお願いして、私の質問といたします。
 ありがとうございました。(拍手)