1.地域創生と移住促進について

2.その他

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◯議長(菅谷寛志君) 次に、酒井常雄君に発言を許します。酒井常雄君。
   〔酒井常雄君登壇〕(拍手)

◯酒井常雄君 府民クラブ府議会議員団の酒井常雄です。通告しました項目について質問いたします。
 地域創生と移住促進について。
 2014年から着手された地方創生は、これまで若者の雇用、高齢者らの移住、観光振興を進めるため地方に交付金を配りました。さらに、省庁や企業本社機能の地方移転を促したり、東京23区の大学定員を抑制したりなどの政策を講じたものの効果は薄く、東京圏への転入超過は続きました。
 2017年には、人工知能を使った日本の未来の在り方に関するシミュレーションで、人口や地域の持続可能性の観点からは、都市集中型よりも地方分散型が望ましいとの結果であったことが公表されました。しかし、東京一極集中是正の効果が期待された省庁移転も、2022年度中に京都に移る予定の文化庁を除き大きな動きは見られません。最近でも、地方経済の弱体化や過疎化、少子高齢化が深刻化しており、地域を元気にする地域創生に向けた取組が一層注目されています。
 地域創生の目的は、「都市部との格差を是正すること」「地域経済の活性化」の2つです。
 地域の活性度合いを推しはかる目標として、交流人口や定住人口を増やす動きが取られました。ただ、これらの取組目標だけでは地域創生は難しいと考えられ、新たな概念として「関係人口」を用いて地域創生を達成しようと画策されました。関係人口は、その地域における人材の確保や育成と深くつながっており、関係人口を増やすことが将来的な地域の活性につながると捉えられています。
 関係人口とは、一時的ではなく継続的に地域や住民と関係を持っている人々のことを表します。関係人口という言葉のニュアンスから、少しでも地域と関係を持った人々だと考えられがちですが、関係人口はかなり強く地域と関わっている人々のことを指します。例えば、「祖父母の生まれ故郷で将来的に住みたいと考えている人」や「その地域のファンで何度も足を運んでいる人」「ビジネスなどの活動で地域の人々と協力して活動している人」などが当てはまります。
 京都府においては、都道府県唯一の移住促進関連条例の改正案が本年10月6日に議決され、移住促進特別区域の指定可能エリアを拡大。加えて、移住者のみならず地域活性化の役割を担う関係人口も新たな支援対象として位置づけ、来年4月1日に施行されます。
 これまでの移住促進は農山漁村を主なターゲットとし、促進特別区域への指定には人口が一定程度集積している地域が除かれていたのですが、改正後はターゲットを「様々なニーズに対応した移住」へと変更し、特別な対策を講じる必要がある地域においては、人口が一定程度集積している地域に対しても移住促進特別区域指定が可能となり、これまで移住促進に取り組んできていたが指定されなかった地域についても、地域特性に応じて移住の取組が可能となります。
 京都府の第2期地域創生戦略の基本目標3では、「移住・定住促進や関係人口の創出・拡大によるコミュニティの再構築」を掲げ、京都にゆかりや関心のある人々が地域との絆を築き、多様な形で継続的に関わりを深め、将来的な移住・定住につなげていくことにより持続可能な地域コミュニティの構築のために、「多様な主体や人材との協働によるネットワークの構築」「移住希望者に対する相談から定着までの総合的な支援」「農山漁村におけるコミュニティの構築」に取り組むこととされています。
 日本全体の人口減少と都心への人口集中が重なり、地域経済・社会の保持のためには、地方への移住促進の動きを活発化しなければなりません。今、コロナ禍で移住への関心が高まっています。新型コロナウイルスの蔓延によって3密が避けられない一極集中型社会の弱さが浮き彫りになりました。POSTコロナの時代は、テレワークの急速な普及も手伝って、Uターン・Iターンを含み、若い世代が地方への移住に注目しています。コロナ禍で外出自粛や在宅勤務を経験したことを機に、自身の生き方や働き方を改めて考えたという人も多いのではないでしょうか。実際に、「テレワークを利用すれば、大都市に住まなくても仕事ができる」「感染リスクの高い大都市に住みたくない」「広い家でストレスをためずに在宅ワークしたい」などの理由から地方に移住した人の例がマスコミやインターネットなどで紹介され、注目を集めました。
 このように、コロナ禍をきっかけに地方に移住したいと考えている人は、決して少なくありません。内閣府が、2020年6月に公表した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、「今回の感染症の影響下において、地方移住への関心に変化はありましたか」との問いに対し、「関心が高くなった」または「関心がやや高くなった」と回答した人の割合は全体の15%に上ることが分かりました。
 特に関心が高かったのは、東京23区に住む20歳代の若者で、全体の35.4%が「地方移住への関心が高くなった」または「やや高くなった」と回答しています。一般的に地方移住のメリットには、「住居費が安いため生活費を抑えやすい」「満員電車での通勤から解放される」「自然環境豊かな場所に住める」「新鮮な食材が比較的安価に手に入る」「子どもを伸び伸びとした環境で育てられる」「自治体の支援メニュー(移住者支援、子育て支援)が豊富」「近隣住民との交流を持ちやすい」などが挙げられ、逆に地方移住でのデメリットには、「交通機関が発達しておらず、自家用車がないと生活が不便」「就労先の選択肢が少ない」「子どもの学校の選択肢が少ない」「飲食店や商店が少ない」「娯楽施設が少ない」「医療機関が少ない」「地域社会が閉鎖的で、溶け込みづらいことがある」などが挙げられます。
 ここで地方移住のデメリットに挙げられている「子どもの学校の選択肢が少ない」を解消する取組である教育移住について尋ねます。
 京都府の第2期地域創生戦略の基本目標1では「夢を実現する教育の推進」を掲げ、次代の京都を支える高い志とグローバルな視野を持った人材の育成に向けて、情報活用能力を基盤として新たな価値を創造する能力と、豊かな感性を育む教育環境を整備するために、「新しい学びの創造と京都ならではの教育、魅力ある学校づくり」「安心・安全で充実した教育環境の整備」に取り組むこととされています。
 この目標を教育移住と、どうリンクさせるのか。教育移住とは、国内外を問わず子どものためによりよい教育環境を求めて移住することを指す言葉です。いつ誕生した言葉か、誰がつくった言葉かは分かっていませんが、昨今メディアなどでも見る機会は増えています。
 地方移住に際して、子どもを持つ親にとって不安なのが進学先の選択肢の少なさ、不便さです。NPO法人ふるさと回帰支援センターが発表した2020年の移住相談の傾向並びに移住希望地域ランキングによると、20歳から30歳代の地方移住に関する相談が全体の5割を超えているそうです。
 地方移住というと、リタイアを考えているシニア層が老後の静かな生活を求めてするものというイメージが強いかもしれません。働き盛りで子育て真っ最中の20歳から30歳代の人たちが今なぜ地方移住を考えるのか。ここで、逆に都市部で生活をする20歳から30歳代の若い世代は、どのような理由で都会での子育てを行っているのかを考えてみます。
 日本政府が2018年にまとめた東京都在住者の今後の暮らしに関する意向調査では、東京都での暮らしやすさとして、「交通の便が良い点」82.8%、「買い物などの日常生活が便利な点」71.5%などが高いポイントとなった一方、「街路樹や公園の整備が行き届いている点」15.4%、「教育環境が良い点」12.6%、「子育てがしやすい環境である点」9.0%などは、あまり高いポイントにはなっていませんでした。この結果から、20歳から30歳代の若い世代は、通勤や生活の利便性に魅力を感じて都会で生活しているものの、子育てや教育の環境については都市部に大きな利点を感じていないように見えます。
 では、東京都で9.0%にとどまった「子育てがしやすい環境」とはどのような環境か。一般的に子育てや教育によい条件とは、「地域の安全性」「教育・医療施設の充実」「近隣のコミュニティ」「自治体などの子育てサポート」などが高い水準で満たされていること。加えて、親にとっても住みやすい環境であることだと言われています。
 一般社団法人移住・交流促進機構が2018年にまとめた若者の移住調査の中で、「あなたが仮に移住先で子育てをするとして、移住先の子育て環境について重視する条件を教えてください」との質問に対し、「治安がよいなどの安全関連」「自然とのふれあい」「地域のコミュニティー」「学力・知力の向上ができる教育環境」「子どもが楽しめる施設・公園」の回答が多く、この結果から地方への移住を考えている20歳から30歳代の若い世代は、現在の都市部での生活を主に「安全性や自然とのふれあい、コミュニティー」などの観点で、子育てや教育にとってよい環境ではないと考えている人が多いとも言えそうです。
 国内教育移住が広まっている背景には、現状の教育環境への疑問などがあることが予測されますが、それは勉強だけではなく、子どもにとって伸び伸び学ぶことができる環境を与えたいとの目的もあるようです。国内教育移住のメリットは、何といっても子どもの得意なことを最適な環境で伸ばすことができるという点です。国内でもユニークな教育方針の教育現場は多くあり、それらの学校は「自然」「国際」「伝統」「ICT教育」などに力を入れています。様々な分野から子ども自身が自然と興味を持ち、自由に選ぶことができるような選択肢が広がっています。
 一方、国内教育移住のデメリットは、親が転職を検討する必要が出てくるということが挙げられます。移住先にもよりますが、地方に移住するとなると転職も選択肢に入ります。リモートワークを導入している職場であれば転職の必要はありませんが、いずれにしても移住先と仕事との兼ね合いを考える必要が出てきます。
 また、デメリットには、入学先によっては費用がかかるという点もあります。ユニークな教育方針の教育現場は私立であることが多く、それなりに費用がかかるということにも抵抗感があるようです。
 そんな中で、主に国内移住先を選ぶ際にチェックされる項目には、「教育の特色や方針」「子どもにとって安心・安全な環境」「医療環境」「交通の利便性や自然災害に関する環境」、この4つが挙げられています。
 さて、お尋ねします。教育移住の促進には、市町村との協議、事業支援などが求められます。冒頭に申し上げた地域創生の観点から、市町村とともに教育移住を促進していくために京都府が取り組んでいること、そして教育移住に関する方針について、知事の御所見及びチェック項目を踏まえた関係部局の取組状況をお答えください。
 教育移住には、子育て環境が重要な柱になると考えます。全国的には「JAXAによる宇宙教育」や「漁業体験」「恐竜の化石発掘」「海外都市との教育交流」「ごく小規模校の特性を生かした個性重視の教育」など、それぞれ特色ある取組が見られます。
 そこで提案いたします。11月3日、きょうと子育て環境日本一サミットが開催され、「京都で学び、京都で働き、京都で子どもを育てる。府民一人ひとりが子どもを社会の宝としてあたたかく見守り、子育てをみんなで支え合う風土を築くとともに、京都が若者を惹きつける魅力ある地として成長していくため、私たちは自ら行動し、京都全体で取り組むことを宣言します」と共同声明が披露されました。
 この行動を地域創生、移住促進とリンクさせたい。地域創生戦略の教育移住への取組とともに、子育て環境日本一を目指す本府では、「子育て移住」の促進を京都府の特色政策として取り組んではいかがでしょうか。「WEラブ赤ちゃん」プロジェクトの京都版ものその一つになると思います。
 京都府の子育て環境日本一への取組は、当初、どうなれば日本一なのかとの指標が明確に示せておりませんでした。子育て移住のデータは、子育て環境日本一への指標の一つになるかと考えます。お考えをお示しください。
 最後に、移住促進に関する課題の解消への要望です。
 2020年の京都府への転入者は5万6,653人です。この数字はコロナ禍での転入者でありますが、コロナ禍での移住促進に関する課題の一つに、前住所地と転入先のワクチン接種履歴の情報連携が円滑に行われていないことが挙げられます。ワクチン接種をしたのかしていないのか、何回接種したのか、いつ接種したのかについて、転入先の市町村では分からない、情報が共有されていない。そのため、今後予定される3回目接種の案内や接種券などが届かないおそれがあります。これでは接種を希望される方が安心して移住することもできません。個人情報に関する不具合であるとのことですが、全国で対応すべき課題であり、早期に対応すべき課題です。
 デジタル庁は、11月26日、転入者の新型コロナウイルスワクチンの接種歴について、各市町村が12月中旬から転出元自治体に情報照会できるようにするとの方針を発表しました。今後、システムを改修し、市町村がVRSにアクセスし、マイナンバーを手がかりに転入者の接種歴を探し出すことを可能にする予定だとのことです。このシステム改修が円滑に行われ、効果を発揮し、移住促進の壁の解消につながるよう取り組んでいただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

◯議長(菅谷寛志君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 酒井議員の御質問にお答えいたします。
 教育移住についてでございます。
 京都府では、「人々を惹きつけ、京都への新しい人の流れをつくる」を基本目標に掲げ、京都府地域創生戦略の下、市町村をはじめとする多様な主体と連携し、移住の促進に取り組んでいるところでございます。
 移住先に京都を選んでもらうには、移住者の多様なニーズに応えますとともに、関連する施策と効果的に連携していくことが重要と考えており、さきの定例会で御議決いただいた「京都府移住の促進及び移住者等の活躍の推進に関する条例」におきましても、その旨を基本理念に掲げているところでございます。
 議員御指摘のように、子どもの個性に合った特色ある教育が受けられるなど、充実した教育環境を求めて移住する、いわゆる教育移住へのニーズが高まりつつあると言われております。教育におきましては、子どもたちが学校だけでなく、地域で多様な人と触れ合い、豊かな自然や文化などを体験しながら成長していくことが必要だと考えており、移住を促進していく観点からも、地域の特性を踏まえた教育環境の充実を図り、地域の魅力を高めていくことは大変重要だと考えております。
 このため、京都府教育委員会が「教育環境日本一」を目指して行う取組や、私立学校が建学の精神に基づき行う個性豊かな教育を目指して行う取組とも連携し、子育て世代の京都への移住の促進や定着を図ってまいりたいと考えております。
 また、議員御紹介の「教育移住」を検討する際のチェック項目にもありますように、多様な移住ニーズに応えるには、教育だけではなく、子どもの安心・安全や交通の利便性、自然災害への備えなどへの対応も重要になってまいりますが、京都府ではこれまでから地域創生の観点から、市町村とも連携して総合的に各分野の施策を推進しているところでございます。
 具体的には、教育の方針や特色につきましては、京都の歴史と伝統の力を生かした「京都ならではの教育」を進めるという方針の下、きめ細やかな指導を行い、学力向上を図るための小・中学校における京都式少人数教育を実施しているところでございます。
 子どもの安心・安全につきましては、共働き家庭等の小学生に安心・安全な居場所を提供するための放課後児童クラブの運営を支援いたしますとともに、子育て世帯の経済的負担を軽減し、子どもの健康増進を図っていくための子育て支援医療事業などに取り組んでいるところでございます。また、地域の生活交通バスの維持による交通の利便性の確保に取り組むとともに、家庭や学校、地域等における防災対策を進めるなど、災害に強い地域づくりにも取り組んでいるところでございます。
 今後とも、教育環境の充実を図るとともに、市町村とも連携して地域の特性を生かした多様な教育移住のニーズにも応え、京都が魅力ある移住先となるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 その他の御質問につきましては、関係理事者から答弁させていただきます。

◯議長(菅谷寛志君) 平井政策企画部長。
   〔政策企画部長平井公彦君登壇〕

◯政策企画部長(平井公彦君) 子育て移住についてでございます。
 京都府では、令和元年9月に策定いたしました「京都府子育て環境日本一推進戦略」に基づきまして、「風土づくり」「まちづくり」「職場づくり」の3つの観点から従来の子育て支援策や少子化対策にとどまらない総合的な施策の展開を図ってまいりました。
 まず、風土づくりでは、先月開催いたしました子育て環境日本一サミットでの「WEラブ赤ちゃん」プロジェクトへの賛同宣言、鉄道駅や商店街等におけるベビーケアルームの設置など、企業・団体等の皆さんとともにオール京都で子育てに優しい風土づくりに取り組んでいるところでございます。
 まちづくりでは、昨年度スタートいたしました「子育てにやさしいまちづくりモデル事業」が既に12の市町で活用されておりまして、新しい住宅地に転入されてくる子育て世帯が孤立感や疎外感を持つことなく地域になじんでいただけるような子育て交流施設の整備などの取組が広がってきているところでございます。
 また、職場づくりでは、「子育て環境日本一に向けた職場づくり行動宣言」を行いました企業数が1,400を超えておりまして、特に時間単位の年休制度を導入する府内企業が着実に増加しつつある状況にございます。
 オール京都で進めておりますこうした施策は、必ずしも移住の促進を主な目的としているものではございませんが、子育て環境日本一の京都づくりを目指すことは、子育て世代の京都への定着だけではなく、府外の子育て世代が居住地を検討する際の好材料になるとも考えているところでございます。特に、京都府では20代から30代の世代の府内への転入者数が転出者数を大きく下回る状況にございまして、こうした転出超過は府内の出生数が減少を続けます背景の一つになっているとも言われておりますことから、議員御指摘の「子育て移住」という視点は、地域創生を実現していく観点からも重要だと考えております。
 今後、子育て環境のさらなる充実に向けまして、例えば若者が結婚や子育てに夢や希望を持てる環境づくりでありますとか、多彩な大学の集積を生かしました子育てに優しいまちづくりなどについて検討を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 また、子育て環境日本一を目指して取り組む関連施策につきまして、移住相談窓口などで積極的に発信を行うなど、子育て環境の充実と移住の促進をリンクさせる取組につきましても検討してまいりたいというふうに考えております。
 子育て環境日本一の達成度をはかるための指標の設定につきましては、例えば、より子育てしやすい環境を求めて移住された方の増加数を指標として設けることなどが考えられるところでございますけども、子育て世代の転出・転入等に関しますさらなる実態の把握でありますとか、その要因分析を実施する中で検討していく必要があろうかというふうに考えているところでございます。
 引き続き、子育て環境日本一の京都の実現に向けまして着実に成果を上げ、京都で子育てをしたい、京都で子育てをしてよかったと思ってもらえるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。