1 今後の半導体・コンテンツ産業の振興と海外戦略に
  ついて
2 海外探Q留学制度の充実について
3 その他

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◯議長(石田宗久君) 休憩前に引き続き会議を行います。
 次に、岡本和徳議員に発言を許可します。岡本和徳議員。
   〔岡本和徳君登壇〕(拍手)

◯岡本和徳君 府民クラブ京都府議会議員団の岡本和徳でございます。会派を代表して質問をさせていただきますので、積極的な御答弁をよろしくお願いいたします。
 初めに、今定例会に提案されております補正予算案については、京都アリーナ(仮称)の整備などに関する債務負担行為のみとなっておりますが、いずれも来年度以降の事業実施に向けて着実に準備を進めるものであり、会派を代表して高く評価いたします。
 また、使用料・手数料の改定についても、受益者負担の適正化の観点から見直しを行うものであり、府民生活への配慮にも考慮されたものとして評価するものであります。
 それでは、質問に入ります。
 本年新たに京都市長に就任された松井市長と西脇知事との間で「府市トップミーティング」が開催されているとお伺いしております。このトップミーティングは、既に3回開催をされているとのことです。
 1回目のミーティングでは、観光、文化、産業、教育をテーマにフリートークを実施され、教育関連での新たな府市共同事業として、高校と大学の連携やSTEAM教育、起業などの視点を入れたワークショップなど、府立高校と市立高校で行うジョイント事業「京の高校生探究パートナーシップ」を導入することなどが話し合われ、第2回目のミーティングでは、半導体の素材研究から半導体デザイン、生産、そしてEVやロボットへの実装まで一貫して取り組んでいく大きな構想を府市で連携して推進することのほか、エンジニアなど、グローバルでクリエーティブな人材を京都に呼び込むための環境整備を府市で検討することなどが話し合われました。第3回目のミーティングでは、第1回目、第2回目における合意事項に関する取組の発表として、(仮称)京都半導体バレー構想の骨格案が示されました。また、府立高校と市立高校の連携として、12月21日開催予定の京都探究エキスポの内容が紹介され、来年度以降も京都探究エキスポを継続実施するとともに、高校生の学びのさらなる充実を図るため、学校も参画し、連携の在り方を議論・検討する協議会を設置するとともに、高校生の学びをサポートできるよう、教育委員会や学校だけではなく、市役所、府庁の関係部局との連携を進めることなどが話し合われたほか、映画、コンテンツ産業などに関するフリートークが実施され、府市が実施するメディア関連イベントを一体的に開催し、共同でのプロモーションなどを実施することなどが合意されたとお伺いしております。
 また、このお二人のトップミーティングについては、府民の方からも今後の進展、連携を楽しみにしているという声をお伺いしております。
 このトップミーティングから、半導体産業、コンテンツ産業の振興や教育分野における連携も強化をしていきたいというような思いがよく伝わってまいります。
 「府市トップミーティング」で示された(仮称)京都半導体バレー構想はこれから内容が充実をされていくものだと思いますが、構想ができるまでにもしばらく時間がかかるものだと思っております。しかしながら、その間にもできること、進めていくべきことはあるのではないかと考えております。
 半導体の研究開発には実用化までに長い年月と大きな投資が必要ですので、時間をかける必要があるとしても、来年度にも実施できることがあるのではないかと思っております。例えば、京都全域に展開するための各地域への情報発信や、企業、大学をも巻き込んだ取組とするためのチームづくりなどは必要なのではないでしょうか。また、多くの投資を必要としますので、国内、そして海外からも投資しやすい環境の整備、半導体スタートアップにも投資をしやすい仕組みづくりなどが必要ではないかと考えます。
 この(仮称)京都半導体バレー構想の骨格案を見てみますと、「京都には、半導体の素材研究を担う大学や研究機関に加え、半導体のデザイン、設計、生産、商品開発や実装を担う世界的な企業や中小企業等、多様な産業が既に立地しているが、ディープテック系のスタートアップ企業をはじめとする更に多様な産業が群生する半導体エコシステムを構築し、シリコンバレーのように、国内外から京都を舞台に飛躍したい企業・人材が集まるエリアとして成長することを目指す」と記載されています。
 この未来像の最後にあるように、企業や人材を京都に集めるための取組として、多くの方々に関わってもらうために、こうした夢を実現させるためにも、いち早く行動に移すことが重要だと考えます。世界から差をつけられないように早急に行動に移していただきたく思っておりますが、知事はどのようにお考えか、知事の所見をお聞かせください。来年度はどのような取組を進めていこうと検討されているのか、お答えください。
 次に、トップミーティングの話題にも出てきましたコンテンツ産業に関連して、太秦メディアパーク構想と海外展開についてお伺いいたします。
 第3回のトップミーティングでは、フリートークの中でコンテンツ産業についても話し合われ、府市が実施するメディア関連イベントを一体的に開催し、共同でのプロモーション等を実施することが合意されたとお伺いしております。
 京都府の取組として1つ挙げることができるのは太秦メディアパーク構想です。
 太秦メディアパーク構想は、映画の撮影所がある太秦においてコンテンツ企業、DX企業などが集積することで、教育、ものづくり、医療、観光などとの異分野の融合により新産業を創出するオープンイノベーション拠点であり、情報関連産業により特化した都市型のリサーチパークを目指すと位置づけられています。国内外で評価の高い映画・ゲーム・アニメ関連企業が集積する京都において、専門分野を超えた人材育成、ワークショップ、インディーゲームの国際展示会である「BitSummit(ビットサミット)」の開催など、映画、ゲーム、アニメなどの各領域を掛け合わせるクロスメディア産業の振興を推進していただいております。
 こうしたクロスメディア産業と教育、医療、観光など様々な分野との連携を進めるため、メタバースやWeb3.0、NFTといった新しい技術の活用が必要とされています。また、「太秦 NINJA PITCH(ピッチ)」の開催により起業家とのマッチングが進み、本年の「太秦 NINJA PITCH」では、ハリウッドをもしのぐと言われるアメリカ南部の映画の都・ジョージア州から上院議員、下院議員や映画プロデューサーなどが「太秦 NINJA PITCH」に視察に訪れ、京都でのアメリカ映画の撮影や京都との合作、スタジオ建設、税制特区の設置などについて意見が出されておりました。また、西脇知事と松井市長の両名を訪問されたことから海外からの注目も高まり、「太秦 NINJA PITCH」のみならず、太秦メディアパークへの関心も高まっていると感じております。
 また、人口減少時代に突入し、海外からのインバウンド需要が高まる現代において、かつて京セラがまずは米国市場を開拓してから日本に凱旋したように、中小企業やスタートアップ企業にとって海外市場の開拓が大変重要な状況となってきました。
 京都府も5年前に世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点都市の認定を受け、IVSの開催を通じて海外投資家を呼び込んだり、ドバイで、京都府が主催をして、初の日本・京都展を開催したりと、積極的にスタートアップ企業や中小企業の海外展開の後押しを始めてくださっていることを評価させていただきます。
 特に京都府が主催したドバイの展示会では、出展した企業約95社のうち、およそ70社が京都の企業で、京都関連のスタートアップ企業が、約300億円の資金調達を含む、総額2,600億円の資本業務提携のためのMOUを締結されたという極めて大きな成果が出ているとお伺いしております。ほかにも、アフリカの大きな市場との取引が始まったなど、初回から大変大きな成果が上がっているとお聞きしております。また、ドバイの展示会を通して隣のアブダビとのつながりができ、先月、鈴木副知事がアブダビに出向いて様々に調査をされてきたとお伺いしておりますので、今後の取組を楽しみにしております。
 ここまでを踏まえてお伺いいたします。
 現在、京都府のイベントとしては「太秦 NINJA PITCH」、「BitSummit」などがあり、京都市においては京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)などがありますが、こうしたイベントを府市連携して開催することなどが考えられるのかと思いますが、この分野における府市の連携について今後どのように進めるのか、知事のお考えをお聞かせください。
 また、東映の中期ビジョンに基づく映画村のリニューアル計画により、人的投資や映像制作設備への投資の拡大など、再開発の具体的な取組も始まっていることから、太秦メディアパーク構想の今後の展開に期待するところでございますので、今後京都府として太秦メディアパーク構想をどのように進めていくおつもりなのか、知事のお考えをお聞かせください。
 さらには、海外からの関心の高まりを受けて、京都府とジョージア州などの海外との連携についてはどのように進めていくことができるのか、お考えをお聞かせください。
 また、京都、大阪、兵庫と連携をしてシリコンバレーのようなスタートアップ・エコシステムを構築するために、国から選定されたスタートアップ・エコシステム拠点都市については選定から5年が経過してまいりました。当初、スタートアップ設立数、大学発の企業設立数、スタートアップビザの認定件数、ユニコーンの輩出数を目標として設定されておりますが、5年経過した今、その成果についてはどのように分析をされているのか、お聞かせください。さらには、今後に向けてはどのように取り組んでいくのか、お考えをお聞かせください。
 ここまでよろしくお願いします。

◯議長(石田宗久君) 西脇知事。
   〔知事西脇隆俊君登壇〕

◯知事(西脇隆俊君) 岡本議員の御質問にお答えいたします。
 岡本議員におかれましては、ただいまは会派を代表されまして今回の補正予算案に対しまして高い評価をいただき、厚く御礼を申し上げます。
 半導体産業の振興についてでございます。
 半導体は、産業インフラから身近な電化製品まで幅広く使われており、我々の日常生活に不可欠であると同時に、法に指定された特定重要物資であることからも、半導体産業の振興は我が国を挙げて取り組むべき課題だと認識しております。
 半導体産業は裾野が広く、京都にも半導体製造装置のトップシェア企業や世界最先端の素材研究を行っている大学が多数存在するなど、半導体産業を振興する土台がございます。
 これまで「府市トップミーティング」におきまして京都市長と議論を重ねてきており、11月には(仮称)京都半導体バレー構想の骨格案を発表いたしました。本構想では、京都市から関西文化学術研究都市までを含む広いエリアにおいて、半導体の素材研究から半導体デザイン、生産、実装まで一貫した半導体エコシステムを実現することを目指しております。本構想の発表後、直ちに地元金融機関が本構想に参画する企業を投資対象とするファンドの創設を発表するなど、経済界においても呼応する動きが出てきているところでございます。
 本構想を実現するためには、府市と、構想の骨格の取りまとめに協力をいただいた一般社団法人京都産業都市創成研究所が中心となり、企業や大学、市町村、金融機関などの幅広い方々によるオール京都の推進体制が必要であり、現在、構築に向けて調整を進めているところでございます。
 この推進体制の下で、3つの重点分野であります「パワー半導体」「光半導体」「AI半導体」における研究から実装までのエコシステムをどう構築していくのか、世界的に激しい競争が行われている半導体産業において研究開発や投資動向の情報等をどう把握するのか、不足している高度人材について京都の大学と連携してどのように確保・育成していくのかなどについて議論をしてまいりたいと考えております。
 今後、本構想で掲げました未来像の早期実現に向け、京都の産学公の力を結集して取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、コンテンツ分野の府市連携についてでございます。
 京都は、映画やゲーム、漫画といった日本を代表するコンテンツの発信地であり、太秦の映画撮影所、京都国際マンガミュージアム、映像・芸術系の大学などが集積しております。
 こうした京都が持つポテンシャルと魅力を国内外に発信するため、平成21年から、府市のほか、大学、映画撮影所、クリエーターなど、多様な主体の参画の下、「KYOTO(キョウト) CMEX(シーメックス)」を開催してまいりました。今や、「KYOTO CMEX」のイベントの中でも「BitSummit」と京都国際マンガ・アニメフェア、いわゆる「京まふ」は特に人気のあるイベントとなっており、期間中、国内外から多くの業界関係者やファンが京都に集まってこられます。
 「BitSummit」は、京都にゲームクリエーターの集積を図るため、平成25年、約200名の独立系クリエーター同士がアイデアを披露し、交流する場としてスタートいたしました。その後、ゲーム関係雑誌に取り上げられるなど、徐々に注目を集め、今では3万人以上が来場する国内最大級のインディーズゲームの祭典へと成長し、大手メーカーとクリエーターとのマッチングの場となっております。
 また、「京まふ」は、京都にさらなるアニメ・漫画ファンの呼び込みを図るため、東京の大手出版社等と連携して平成24年から開催しているものであり、全国から出版社やテレビ局、映像メーカーなどが出展する西日本最大級の漫画・アニメイベントとして3万人以上が来場し、最新作の発表やファンとの交流の場となっております。
 最近では、ゲームの3DCG技術がアニメ制作に使われるなど、異なる分野の融合が進む中、「BitSummit」、「京まふ」においてもクリエーター同士の交流が課題となっておりました。このため、本年11月の「府市トップミーティング」におきまして、メディア関連イベントを一体的に開催し、共同でプロモーションなどを実施することについて京都市長と合意をいたしました。
 「KYOTO CMEX」で展開するイベントの連携を図り、人材の育成や新たな産業創出につなげるため、まずはこの2つのイベントの連携・強化に取り組みたいと考えております。例えば、映画・映像のスタートアップと投資家とのマッチングを図るために実施しております「太秦 NINJA PITCH」の予選会を「BitSummit」と「京まふ」で実施することでそれぞれの分野のクリエーターやスタートアップの交流・協業を促進いたしますとともに、大手企業や投資家とのマッチングを図ってまいりたいと考えております。
 今後、府、市、「BitSummit」、「京まふ」、「太秦 NINJA PITCH」の関係者が一堂に会し、具体化に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、太秦メディアパーク構想についてでございます。
 京都府では、太秦メディアパークを産業創造リーディングゾーンに位置づけ、クロスメディアと先端テクノロジーの融合を通じまして新産業を創出するオープンイノベーションを進めております。これまで、臓器模型を再現した医学教育用VRアプリの開発や、観光地の混雑緩和のため、NFTファストパスの実証など、42件の共創プロジェクトを組成してまいりました。また、オープンイノベーションをさらに促進するため、「太秦 NINJA PITCH」を開催してスタートアップを発掘し、共創プロジェクトへの参画を促しております。
 こうしたスタートアップや共創プロジェクトの受皿としてインキュベーション施設などの拠点整備を進めることとし、現在、国の補助事業の採択を受けて進めておられます東映の再開発計画とも連携して、クロスメディア産業の集積を図ってまいりたいと考えております。
 また、海外との連携についてでございますが、議員御指摘のジョージア州からの訪問は、映画制作の歴史に加えまして、世界で活躍する人材を輩出する、優れた映像制作拠点である太秦に魅力を感じて来日されたものでございます。
 このほかにも、欧州で毎年開催されている動画配信コンテンツの国際的な見本市との連携の動きも出てきており、国際共同制作などの連携を目指して、海外と太秦の映画・映像関係者の意見交換を進めてまいりたいと考えております。
 今後とも、世界から多様な分野の企業やクリエーターが集う新産業創出拠点の形成を目指してまいりたいと考えております。
 次に、スタートアップ・エコシステム拠点都市選定後の成果についてでございます。
 京都府では、国内外から人材や企業が集い、世界に伍するスタートアップ企業が次々と輩出されるエコシステムの形成に取り組んでおります。
 令和2年の拠点都市選定後、オール京都で、外国人起業家向けワンストップ相談窓口の開設、900件以上の起業支援プログラムの実施、220件以上の投資機関とのネットワークの構築など、起業家や支援者の集積を進めてまいりました。その結果、令和6年10月時点で、スタートアップビザ認定数は29件、スタートアップ設立数は225社、うち大学発は97社、ユニコーンも1社輩出と、目標に掲げた4つのKPIは全て達成をいたしました。
 拠点都市選定の直後は、経験豊富な起業家からノウハウを学ぶ場が不足していたことから、首都圏の先輩起業家とのオンライン交流会を実施いたしました。
 次に、ユニコーンの創出に向けまして海外展開を目指す数社への集中的な伴走支援を開始いたしましたところ、大型資金調達の機会が少ないことが課題だと分かり、国内外の投資家が集まる大型国際カンファレンス「IVS」を開催しております。このIVSの開催が契機となり、京都のスタートアップに関心を持った首都圏の投資機関が京都に支援拠点を開設されました。
 このように、課題への対応を積み重ね、成長ステージに応じた支援体制を構築したことが目標達成につながったと考えております。
 現在、魅力ある企業の集積が次なる人や資金を呼び込む好循環を生み始めておりますが、今後、京都が世界的なスタートアップ拠点に発展するためには、この好循環を海外に拡大していくことが重要だと考えております。そのため、来年3月にはアメリカで開催されます世界的展示会「サウス・バイ・サウスウエスト」において京都の企業が魅力を発信・交流できる場を設けることとしております。
 引き続き、資金、人材、オフィスの供給をはじめとするスタートアップ・エコシステム拠点都市の機能強化と国内外への情報発信強化を進め、起業家、投資家の集積を促進してまいりたいと考えております。

◯議長(石田宗久君) 岡本和徳議員。
   〔岡本和徳君登壇〕

◯岡本和徳君 御答弁、どうもありがとうございました。
 まず海外ですけれども、ジョージア州の方々は京都と連携をしたいということを非常に望んでおられました。京都とつながる方法を考えて、2年半ほど時間をかけて京都でどういう取組があるのかを調べてきて、どういう人材が何をやっているのかを調べてきて、ようやく太秦とつながることができて、これから積極的に──先ほども申しましたけれども、映画の合作であるとかスタジオの建設なども検討していきたいというお話もありましたので、これは関係部局でしっかりと、具体化できるのかどうか、そういう話を進めていただければというふうに思っております。
 スタートアップ・エコシステムの拠点都市も、KPIを全部達成しているということで、これは高く評価させていただきたいと思います。とりわけユニコーンを1社つくるというのは、当時は、5年ぐらい前は狙ってできるものではないと思っておりました。本当に1社誕生させたということは非常に大きな成果だというふうに思いますので、これは高く評価させていただきたいと思います。
 IVSのお話もありましたけれども、5年ほど前はIVSが京都で開催をされていることも京都の方々も御存じなく、そういう中で、IVSの主役というか、主軸になって取り組んでいただいていることを本当にうれしく思います。今後は海外からの投資であるとか海外への進出とか、若い起業家の方々もさらに強く目指していくと思いますので、伴走支援というのもありましたけれども、今後も積極的に進めていただきますようにお願いをしたいと思います。
 では、次の質問に移らせていただきます。
 次に、教育関連の質問をさせていただきます。
 教育関連に関しましても「府市トップミーティング」において話し合われ、府市共同して、高大連携、STEAM教育、起業などの視点を入れたワークショップなど、府立高校と市立高校で行うジョイント事業を導入することが話し合われたことから、京都探究エキスポの開催が予定をされています。トップミーティングの成果を即座に実施に移していただいていることを評価させていただきます。
 まず、探究とは、これまでの方程式や記憶だけに頼る授業、問題を解くのではなく、何が正解かを説明することができない「答えのない問い」に対して、自分で考えて、最適な手段や方法を見つけ出し、最適な答えを導き出すことだと捉えております。いわば、生徒が持っている知識と経験と感性などから答えを見つけるための方法を考え、その方法を自分の力で実行し、自らの力で答えを導き出すというような作業となってまいります。
 一方、授業においては、記憶や方程式に頼り、数字や記録を追いかけることなどが主な内容になると、生徒たちは「つまらない」という感覚を大きく持つようになってきており、学校が面白くないと感じる原因にもなってしまいます。こうした中、探究やSTEAM教育などが注目されるようになり、自分で考え、答えを導き出し、好奇心をくすぐり、学習が楽しくなるような取組、授業の実施が望まれております。
 留学制度も、これまでは英語のできる優秀な生徒が、さらに語学力を高めるために欧米の学校に語学力向上を目指すために留学をするというのが一般的でしたが、今年度、教育委員会により新たに制度化されました「海外探Q留学」は、高校生たちの好奇心を最大限にくすぐり、最大限に頭を使い、最大限の行動力を必要とする取組であると認識しており、その成果と今後の取組を非常に楽しみにしております。
 そこでお伺いいたします。
 今年度初めて実施をされた「海外探Q留学」について、どのような生徒がどの国で何をし、何を感じてきたのか。また、出発前と帰国後の成長ぶりや変化についてお聞かせいただき、実施後に見えてきた課題や今後の方向性をお聞かせください。
 京都府教育委員会の留学制度の取組を通して日本で最も多くの生徒を海外に送り出していると認識しており、留学制度の先進的自治体であると考えております。こうした中、探Q留学の実施に踏み込んでいただくことは高く評価をさせていただきます。
 この探Q留学の生徒への補助は30万円、家庭の所得によっては最大60万円となるとお伺いしております。しかしながら、この探Q留学の制度を利用して海外に行く生徒たちは、アフリカや南米、太平洋の島々に行く生徒がいると聞いております。そうなりますと、留学の費用はこの枠の中では収まりませんし、従来の留学制度よりも費用がかかるのかもしれません。財政的に厳しい京都府の状況ではありますが、将来への投資、「子育て環境日本一」の一環として、この探Q留学の制度の拡充を求めるものであります。
 明治維新により、天皇陛下をはじめ御皇族が東京にお住まいになられるようになったことにより、京都の人口の3分の1が流出をしましたが、将来の京都の在り方を憂いた当時の町衆は、「まちづくりは人づくりから」という思いの下に、明治5年の学制発布に先立つ明治2年、子どもの有無にかかわらず、かまどの数に応じて資金を出し合い、日本初の地域制の小学校、いわゆる番組小学校を64校開校しました。
 このように、いわば寄附によって人づくりを進める、学校の仕組みを整えるという取組をした経験が京都にはあります。京都府教育委員会の所管する学校においては、魅力ある学校づくりに向けた整備に併せ、探Q留学のように新たな制度も進めていく必要があります。
 教育委員会では、これまで、ふるさと納税などを活用し、寄附が集まってきているとお伺いしておりますが、これまでの取組と成果をお聞かせください。
 また、寄附したい側からすると、教育においても、特定の分野に寄附をしたい、例えば探Q留学制度で留学する生徒に寄附をしたいというふうに寄附先を限定して寄附をしたいという方もおられるという声を聞いておりますので、そうした声に応える仕組みが必要と考えますが、どのようにお考えか、お聞かせください。
 探究学習や探Q留学、STEAM教育が実施されるようになってまいりますと、子どもたちのニーズに応えるためには、これまでの学校や教員が教えていた範囲を大きく超える知識や経験が必要となってまいります。例えば、フランスにおける絵画技術の探求、ケニアにおける医療環境の探求、フィンランドにおける福祉制度の探求、シリコンバレーにおける起業方法の探求などといったことが考えられますが、こうしたニーズに対して学校、教師がどのように対応するかという教える側の能力と経験、実力も問われるようになってまいりました。
 当然ながら、教員の能力が子どもたちの成長に大きく影響することは御承知のとおりです。子どもたちの探究心に応えるためにも教員自身の探究心を磨き、経験を身につける必要があると考えますので、教員が今まで経験したことのないような、経験値を上げるような、そして探究心の向上を図ることを目的とした教員の海外留学制度を新設していただくことを要望いたします。
 次に、「学びのWEBラボ」についてお伺いいたします。
 京都府は南北に長く、北部などでは生徒数の減少で、学校の再編のほか、クラブ活動が思うように進めることができないというようなことが起こっております。また、先進的な学びを進めようにも、探究学習を進めようにも、同じことに興味を持っている生徒が近くにいないことなどから、探求することが難しい環境にいる生徒も多くいます。また、生徒が多くいる京都市内の学校においても自分の興味について深く探求させてくれる先生や友人がいないということもあります。
 現代では、インターネットをはじめとするIT技術などが普及し、現地に集まらなくてもパソコンの画面上に集まって交流することが一般化されています。また、ネット上から自分の興味がある動画を探し出し、そこから学びを深める生徒たちも多くいると理解しております。確かに、パソコン上で見つけることができる興味深い探求授業の動画などは、学びを深めることはできるかもしれませんが、一方的に伝わるものも多く、録画された動画、画面の向こうの人物に質問をしたり、直接指導を受けることができるコンテンツは少ない状況です。
 また、先ほども申し上げましたが、授業においては、記憶や方程式に頼り、数字や記録を追いかけることが主な内容になると、「つまらない」という感覚を持つようになってしまい、学校が面白くないと感じる原因にもなってしまいます。好奇心をくすぐるような、楽しみながら学ぶような学習方法が求められており、ネットででも同じ分野に興味を持った生徒と集まり、共に学び合う機会の創出が望まれてまいりました。
 こうした中、京都府教育委員会におきましては、ネット上で異なる地域・学校の生徒がオンライン上で集まり、学び合うことのできる取組である「学びのWEBラボ」を創設していただいたとお伺いしております。この取組は、異なる学校の生徒が、自分たちの好奇心のある分野について教員や民間の講師がネット上で指導し、学び合うことのできる取組だとお伺いしております。
 そこでお伺いいたします。
 「学びのWEBラボ」は始まったばかりではございますが、既に複数の領域ラボについて実施されているとお伺いしております。どのような取組を行っており、今後はラボの数を増やしていくのか、どのようなラボをつくっていく必要があるのかなど、現在の取組と今後の取組に向けた教育長の所見をお聞かせください。
 最後に1つ要望させていただきます。
 先日、全国の出生数が70万人を下回りそうだという報道がなされました。恐らく京都府における出生数も1万5,000人を割り込んでくるのではないかと思いますが、京都府は「子育て環境日本一」を目指しております。今後、北桑田高校、農芸高校が京都府立大学の系属高校として位置づけられることは、若い人たちの可能性を広げるとともに、子育て環境整備の一つとして注目する取組の一つです。
 また、本日お話ししました探Q留学をはじめとする留学制度の充実のほか、学校のエアコンや老朽化した施設の整備などを行うとともに、探究学習や語学、ICTの活用など、これからの時代に必要とされる能力を身につけた教員の育成など、誰もが府立高校に憧れて「進学したい」と思ってもらえるような環境整備のための物的・人的資源の投資を強く行っていただけますように要望させていただきます。
 子どもたちの投資は、未来への投資です。次の世代の人たちの生活がよりよくなり、京都が未来にわたって発展できるようにするためにお願いをいたします。
 ここまでよろしくお願いします。

◯議長(石田宗久君) 前川教育長。
   〔教育長前川明範君登壇〕

◯教育長(前川明範君) 岡本議員の御質問にお答えいたします。
 「海外探Q留学」についてでございます。
 議員御紹介のとおり、「海外探Q留学」は自分で課題を見つけて挑戦するという夢や志を重視した留学支援制度で、異なる文化や多様な価値観に触れながら、探究活動に取り組む経験を通して新たな価値を創造する力を育むことを目的としております。
 今年度は20人の応募がございましたが、行き先は、アメリカ、ペルー、アフリカ、フィジーなど様々で、分野についても、教育、環境、スポーツ、芸術など多岐にわたっております。
 例えば教育の分野では、開発途上国の教育に関心を持っていた生徒がカンボジアの学校に行き、電気がなく、教科書が足りない中であっても笑顔で学んでいる子どもたちの姿に感動を覚え、教育環境の改善について真剣に考えるようになり、多くの人に現状を知ってもらおうとSNS等での発信を始めております。
 環境の分野では、野生動物の保護について探求するためにケニアに行った生徒が、保護区内であるにもかかわらず、狩猟や樹木の伐採が行われ、その理由が貧困であるという現実に直面する中で、将来は大学で多角的な角度から環境問題を学びたいという新たな目標を持つようになり、その実現に向けて勉学に励んでおります。
 また、スポーツの分野では、フェンシングでオリンピックを目指している生徒がアメリカで行われた国際合宿に参加して、世界のトップ選手と寝食を共にしながら練習に打ち込み、技術面の弱点を克服しようと試行錯誤する中で、その手がかりを得て、帰国後には国民スポーツ大会で優勝するというすばらしい成果を収めることができました。
 これら生徒の多くは言葉や文化の違いに不安を抱えての出発でしたが、自らの意思で決めた留学であったからこそ積極的に行動することができ、現地に行くことでしか得られない多くの気づきや学びがあったと考えております。帰国後は、幅広く深い学びの必要性を実感したことから、苦手分野にも積極的に取り組むようになったり、多様な考え方に触れた経験から、自身の生き方について思索を深めるなど、行動面でも精神面でも大きな成長が見られているところでございます。
 一方で、各学校からは、本制度に興味を持ったものの、応募にまでは至らなかった生徒が約100人いたと聞いております。「初めての取組で計画を立てる時間が足りなかった」という声や、「具体的な留学のイメージができず、不安のほうが大きかった」という声などがございました。そのため、今後は、募集説明会を早期に開催するとともに、今年度、本制度を活用して留学いたしました1期生が実体験に基づいて留学の意義や効果を語ったり、留学に関する悩みや不安に直接答えてもらう機会を設けることで少しでも安心して応募できるような工夫を進めてまいります。
 さらに、留学で得た学びの成果を継続して発信することで誰もが留学にチャレンジしやすい機運の醸成へとつなげ、世界に飛び出した生徒たちが新しい価値の創り手として未来を切り開いていけるよう、今後も生徒たちの挑戦を全力で後押ししてまいります。
 次に、ふるさと納税の活用についてでございます。
 府教育委員会では、府立学校の教育環境の充実や部活動の応援、学校の特色づくりなど、各学校の独自の取組を応援するための「府立学校特色化応援ファンディング事業」を実施しております。各学校の特色化の取組内容を具体的に明示するとともに、学校ごとの応援希望額や現在までの応援額、執行状況などについてホームページ上で見える化を図り、これまでに約2億2,000万円の御寄附を頂いているところでございます。
 地域の方々や卒業生など、母校を応援したいという思いに応える事業であり、これまで宮津天橋高校のヨット購入や、宇治支援学校における地域交流スペースの設置、綾部高校の吹奏楽器の購入など、学校のニーズに応じたきめ細かな教育環境の整備に活用させていただいております。
 一方で、議員御指摘の探Q留学への支援など、特定の分野にも寄附が可能であるものの、十分に周知できていなかったことから、今年度からホームページ上での表記を見直したところでございます。今後も、留学支援やICTを活用した主体的な学びへの支援など、生徒の学びを深めていく取組への支援に対しても応援いただけるよう発信してまいりたいと考えております。
 府教育委員会といたしましては、こうした取組を通じて、全ての子どもたちが経済的な理由に左右されず、夢や志を抱き、その実現に向かって挑戦できる環境づくりに全力で取り組んでまいります。
 次に、「学びのWEBラボ」についてでございます。
 全ての高校生にとって、多様な人と交流しながら新しい視点を獲得し深く学ぶことや、主体的に課題を見つけ解決に向けて協働的に取り組むことは、学び方や可能性を広げ、学び続ける力を育成するために必要であると考えております。また、府内のどの学校に通学していても興味・関心を持った分野に対して学べ、自らの長所を伸ばすことができる機会が必要でございます。
 そのため府教育委員会では、今年度から、府立高校のスケールメリットと整備されたICT環境を生かし、地域や学校を超えて生徒同士が放課後の課外活動の中で主体的・協働的に学び合う場の創設を目的とした「学びのWEBラボ」事業に取り組んでおります。
 このWEBラボとはオンライン上でつながる研究室のようなもので、企業、大学等からの専門的な指導・助言を得ることが可能となっており、今年度は、試行的ではございますが、科学部等がある北部2校、南部4校、合計6校の計25名の生徒が、「気象」「ロボット」「プログラミング」の3つのラボから選択し、日々活動しております。
 それぞれのラボでは、月1回程度、オンライン上で企業、大学等の講師と生徒間での交流会を実施しており、例えば気象ラボにおいては、生徒が予報した天気や地理的特徴について報告し、気象予報士資格を有する教員や京都地方気象台の方から指導・助言をいただいております。参加した生徒からは「他校の生徒との交流の中で、北部と南部で雪の形状・質の違いや雷の頻度に違いがあることが分かり、さらに専門的な講義を受けることによって、海流、季節風、地形等の複合的な影響により違いが生じていることが分かった」などという感想もあることから、交流による深い学びが進んでいることを実感しております。
 今後は、生徒が興味・関心を持ったテーマを自らで設定できるように研究分野を広げた上で、日常的に他校の生徒との交流や専門家との議論を通じてより深い学びにつなげるなど、生徒自身が主体的に取り組めるような学びの場の充実を図ってまいりたいと考えております。そのためにも様々な分野の企業、大学等と広く連携し、生徒のニーズとマッチングさせ、研究をサポートできるような仕組みづくりについても検討してまいりたいと考えております。
 府教育委員会といたしましては、様々な分野の企業、大学等が集積する京都の強みを生かし、これまでにないスケールの大きな学びの場の創出によって生徒がより深い学びを経験し、生涯にわたり学び続ける力を身につけることができるよう、一層の支援に努めてまいります。

◯議長(石田宗久君) 岡本和徳議員。
   〔岡本和徳君登壇〕

◯岡本和徳君 御答弁、どうもありがとうございます。
 探Q留学ですけれども、一部を御紹介していただきました。カンボジア、ケニア、アメリカにそれぞれ行ってきたという話もありますが、ほかにもペルーとかカナダ、フィリピンとか、非常に多くの国に行っていたというふうにお伺いしております。
 私も以前からこういう留学を実現していただきたいというふうにお話ししていましたが、多分、学校の先生たち、校長先生の皆さんも、子どもたちが本当にそんなことを思っていて、それが実行できるのかというふうに当初は思っておられたと思います。子どもたち自身も実はそこまでのことを考えていて、カンボジアの途上国の教育環境とかケニアの環境保護とか、こういうところまで子どもたちは興味があって──実際に行こうとしている子がいるのかどうか不安というのもあったと思いますが、実際にはいたということで、これを実施していただくことによって子どもたちの可能性が大きく広がったんじゃないかなというふうに思っております。
 一方で、先生たちにとりましては挑戦というふうになってくると思います。先生の海外留学というものも要望させていただきましたが、学校における先生の教える内容というのが、教科書だけではなくて、人生経験であるとか海外の出来事・現実であるとか世界の課題であるとか、こういうものについて子どもたちが興味を持って、自分が主体的になって調べて、体験をして身につけていくというようなことが望まれていますので、ぜひ教員の留学も実現をしていただきたいというふうに思います。初めは、例えば二、三人でも留学をしていただければ、10年後、15年後には各校に1人の先生がいるというような状況になりますので、中長期的に御検討いただいて、先生の能力アップというのも進めていただきたいというふうに思っております。
 今年は、この探Q留学の募集は時間がなくて、本来100人ぐらい応募したい子もいたけれども、なかなかそこまでいかなかったということでした。4月ぐらいに募集をしていただいたと思いますが、もう6月、7月ぐらいには決定をしていたと。7月、8月ぐらいに出発をしたということで非常にタイトな状況でしたので、ぜひ早めの説明会を実施していただきたいというふうに思っております。
 また、ふるさと納税の活用、ぜひこれも頑張っていただきたいというふうに思っております。財政的に厳しい状況ではありますけれども、子どもたちの教育というのは我々の未来にとっても非常に大切なものでありますので、ふるさと納税、寄附先の限定というか、寄附先を絞って納税できるような取組についても起業家さんにしっかりとアプローチをしていただいて進めていただけるようにお願いをしたいというふうに思います。
 「学びのWEBラボ」ですけれども、これも生徒が主体的になって自分たちが学びたいことを進めていけるように、自分たちで何のクラスをつくるのか、仕組みづくりをしていくのかということも主体的に考えていくということですので、非常に面白い取組ということで期待をさせていただきます。
 時間になりました。最後に、私たち府民クラブは、先人の思いを受け継ぎ、これから生まれてくる子どもたちのために、よりよい府民の生活環境を整備するために全力で取り組んでまいりますことをお誓い申し上げて、質問を終わらせていただきます。
 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)